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夏の風

田畑を耕し、草を刈っていると
地表で生きる虫たちがせかせかと
地中で生きる小さきものたちも急な光に
驚き慌ててでてくる。
気づかず鍬をふるってしまう、
そのものたちを圧倒的な力で傷つけてしまう。
鳥たちがどこからか寄ってくる。
そのものたちを生きる糧として食す。
一匹が飛び去る、また違うのがやってくる。
わたしたちには見えていないそのものたちを頬張り立ち去る。

傷つけてごめんね、って思いながらも
一匹一匹にかまってたら仕事はすすまない。

それでなくてももう命は長くなかたろうから、鳥たちに食べてもらえてよかった。

なんてちょっぴり安堵してみる。


風が吹いた。

圧倒的な新緑の緑がせまってくる風の分厚さを頰で感じる。

夏の気配を孕んだ生命の風。

気を抜いたら意識飛ばされそうな、
濃厚で艶かしくて、惑わされそうな。
濃い濃い緑の分厚い海に溺れかける。

ここ、里には命が溢れ出してる。

草花が、木々が、世界の色が芽吹きはじめのぽやぽやした若芽色から次第に新緑に色濃く濃くなっていく。

ここで起きる命の駆け引きは
なぜ争いではなく儚いばかりなんやろう。

一瞬、無限と思ってさえしまいそうな、さまざまな命の繰り返し。

ただ美しいだけでもなく、
ただそこにあるのは、なんでなんやろう。

目をつぶって、味わってたら、
どこまでも手放してしまいそうで。

この脈々と繰り返される巡りに飲み込まれて、
自分のちっぽけなこの人生の時間も、
この物質的な身体も大地にそのまま溶け出してしまいそうで。

ありがとうって、目を開いたら
真っ青な初夏のあお。

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