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(興味のある方へ)『その十字路~』作品について(北島)

来週24日(土)~25日(日)にリーディング公演という形でお届けする『その十字路の先を右に曲がった。』ですが、以前noteで詳しく報告したとおり、今年になって、この戯曲が第3回人間座「田畑実戯曲賞」をいただきました。(→ので、キャンセルになった公演の代わりにリーディングをすることになりました)

作品自体は2013年に書いて初演したものです。
今回、リーディング公演に向けて一部内容の書き換えや付け足しなどはしていますが、中身そのものは当時とほぼ変わりません

初演当時は「政治劇」と冠を付けて上演しました。
当時、どのようにこの作品づくり(というか執筆)に取り組んでいたのか、薄くなりつつある記憶を辿りつつ、セルフ解説をしてみます。
もしかしたら、観劇後にお読みいただいた方が良い内容かもしれませんが、そのあたりは自己判断でお願いします(内容やあらすじ等はチラシやHP等にも出ているので割愛します。)。

舞台設定について

舞台は農場で、農場に関わる者しか出ません
政治家の役などありませんし、誰も政治の話はしません。「政治的なサムシングによりこの農場が危機に~」とかいう類の話でもありません。
舞台となる農場にとっては、どこか遠いところで誰かがやってる政治なんかより、霜が降りて野菜がダメになる方がよっぽど重大な問題です。

では、なぜこの作品が政治劇(だった)のか。

先に元ネタをばらすと、この戯曲は「この国(もちろん日本)において憲法改正はなし得るのか?」という一つの簡単な命題を置き、そこから思考実験のように根拠薄弱な仮説を並べ立てるうちに、「そもそも憲法を改正する正当性など誰も保障しておらず、どこにも担保されていないのではないか(改正条項を規定している憲法自身を含めて)」というテキトーな仮説を深堀りしてみたいな、と思いました。いえ、具体的な改正手続が整っている/いないとかどうこう・・という法制執務的な話ではなく、漠然とした権力論、もしくは神学論争的な意味で。
(もちろん、これらは戯曲を書こうとする中で“ネタ”を探して色々考えている中での行為であり、私自身が憲法改正そのものについて特定の考えを持っている訳ではありません。ってゆーか、正直私の領分に入ってこない限りはどうでもいいです。)

つまり、農場は箱庭(みたいなもの)です。

何となくの思いつきを仮託する先として、外界と断絶はしていないものの、一定の独自の秩序がある社会として、丘から離れたところにポツンとある農場という設定を置きました。
ネタバレすぎになりますので割愛しますが、ここでは整然とした統治があるにもかかわらず、その秩序に必要な権原が決定的に欠けています。しかして秩序が保たれているというちょっと不思議な構造
ここで「宇宙の意思」とか「ガイア理論」とか持ち出したら立派なオカルト(←結構好き、スプリガン最高)なのですが、そうなると漫画やアニメにそもそも勝てないので、そういうことはしません。

つまり、農場という舞台は箱庭的なものです。

戯曲の中に結論なんかありません。

箱庭の設定からプロットを組み立てていったという運び、すなわち「思いつきの根源が政治的な話だったから「政治劇だ」とイキって書いてみたものの、別に作品としては政治なんかひとつも関係ない」作品です。
SPICEに掲載された記事にもあるとおり、戯曲が「原作とかけ離れてる」のと同様に、戯曲は「もともとのアイデアともかけ離れてる」形で出来上がりました。
→したがって、今回は別に「政治劇だ」とはそもそも言っていません。

繰り返しになりますが、楽しい演劇を作りたいなぁ、という目的から逆算で原作選びを含めてテキトーに色々考えているだけなので、別に箱庭の中で実験がしたい訳でもそもそもなく、作品の中には、最初に設定した命題に対する回答や、仮定に対する実証なんかありません。そういうことはもっと頭の良い人がやるべきです。

楽しい見方

「政治劇」云々はさておいて、『その十字路~』はいわゆる群像劇です。もちろん、メインとなる人物や端役となる人物はありますが、誰に寄り添った視点で物語を引き受けるかを何となく意識しながら見ていただくと楽しくなるような気がします。いえ、だいたいの群像劇(特に演劇での)と言うのはきっとそういうものでしょうが。

先に言い訳

前述のとおり、もともと演劇のための戯曲を「手に脚本を持ったリーディング公演」に使うことから、初演に比べて演劇的な意味では色々とスケールダウンをしている部分があります。(そもそも脚本に目を落としていることの他、日時の経過による衣装変更がないとか、小道具が見立てでやってるとか、暗転(真っ暗になること/劇場の醍醐味)ができないとか。)

という言い訳を前置かせていただきます。足りない分は、脳内で適宜補充しつつ、いざとなれば永運院の素敵な庭に思いを馳せて皆々様ご自身の努力で満足度アップにご協力をいただければ幸いです。

一方で、初演から7年の期間を経て、多少は経験を積んだという自負もあります。加齢による体力の減衰という動かしようのない事実はあえて無視して申し上げますと、初演のときより少しは大人になったナントカ世代をご覧いただけるのではないかと思います。(初演のときより平均年齢が上がっているので、その分大人になることは当たり前なのですが。)

では、どうぞお楽しみください。

30分以内という制約で書き始めたらもう30分経過しました。だいぶ書きなぐりの尻切れトンボですが、そもそも興味のある方向けの記事ですので、乱文ですがご容赦いただければと存じます。(北島)


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