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誰かをうらやましいと思ったら心の引っ越しをすればいい

今年からvoicyを始めたことで、読者の方やリスナーさんから、今この瞬間、悩んでいることや迷っているにことついての声が、以前より多く届けられるようになりました。

それらのメッセージを読んでいると、季節の変わり目、とくに冬から春へと移り変わる時期というのは、新しい季節のはじまりとして希望やよろこびがあふれる一方で、なんとなく心がざわついたり、揺れてしまったりしがちなタイミングでもあるんだなということを感じ、そんなときに読んで少し気が楽になってもらえるものを、と思いながら書いたのが今回のエッセイです。

わたし自身、競争意識に心が乱されがちだった時期を経験し、そこから物理的にも精神的にも「引っ越した」ことで、今ではほとんどそうしたざわつきを手放すことができていて、自分にとって居心地のいい場所を見つけられました。そしてそれは、思ったよりもむずかしいことではなかったと感じています。

今年から始めた有料記事は、実際の経験を書くうえで他人の目を必要以上に気にすることなく自由に書くための「鍵かけ」の意味もあるのですが、今回も10年以上前の話とはいえ、関係者が読めばわかる話なので、有料記事としています(でも個人的な批判などはしていません)。

華やかな活動をしている(ように映る)周囲を見ながら焦ってしまう。
自分だけが動き出せていない気がして落ち込んでしまう。
そんなとき、このエッセイを読んで少し気持ちが軽くなったり、視界が開ける感覚を持ってもらえたら、うれしいです。

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そういえば、誰かをうらやましいと思う感情が、いつのまにか、自分のなかからほとんど消えている。

わたしより著作が多くて本が売れている人も、収入が多い人も、SNSのフォロワーが多い人も、ルックスがいい人も交友関係が広い人も、周りをよく見ればきっとそんな人だらけなのに、わたしは今、特定の誰かをうらやましいと思っていない。
悩みはそれなりにいろいろあるけれど、誰かをうらやまないことは、それだけでずいぶん、わたしの心身をラクにしている。

かつては、こんなに心が凪いではいなかった。
とくにフリーのライターとして雑誌で忙しく働いていた時期は、もっと気持ちがヒリヒリしていた気がする。

「しかるべき落選」を経験して

ふと思い出したのは、たとえば、こんなこと。
当時、憧れていた料理家の方と何度か単発でお仕事をした経緯から、御本人が、雑誌の連載ページのリニューアルを機に、わたしをライターにと担当編集者の方に推薦してくださった。

ところが、担当編集者の方は「小川さんはファッションの人で、料理ライターさんじゃないから適任じゃない」という理由で、別のライターさんに決めた、という一件。

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