nao_tsuchiya

脳と意識の関係性を研究しています。オーストラリア・Monash大学の教授をやっています…

nao_tsuchiya

脳と意識の関係性を研究しています。オーストラリア・Monash大学の教授をやっています。「クオリアはどこから来るのか」(岩波科学)。2023年4月から科研費 学術変革領域A クオリア構造学の領域代表をつとめます。

マガジン

  • 学際研究

    あとで読む記事をマガジンに保存しておくことができます。不要であれば、マガジンの削除も可能です。

  • 大学・研究など

  • 日記・雑記・思いつき

  • 圏論

  • Life hack 自己の成長

    Life hack 自己の成長 についての記録です。読者の方が再現しやすい形で、科学的な根拠を載せつつ書きたいと思っています。

最近の記事

  • 固定された記事

なぜオーストラリアの大学では、トップの学生だけが卒業論文を書くというシステムをとっているのか?

つい最近、日本の大学で教授をしている人との会話で、「人によっては、30人の学生の卒論を担当している人がいる」という話を聞いた。オーストラリアで研究室を主催しているわたしからすると衝撃の話だ! 単純に「そんなことしたら研究室が崩壊する!」というのが私の最初の印象。 過去に、私が知っている有能な研究者の人の中にも、大学で職をとった途端(助教・准教授も含め)突然パタッと英語で論文を出さなくなってしまう人が多くいた。海外で活躍していた優秀な研究者の中に、日本の大学に帰った途端に、世

    • 記号論・言語学と意識・クオリア研究の関係性について(諸事情により期間限定有料記事)

      (本文は3500字くらいです。参考文献が結構多いので。。。コメントあればよろしくお願いします。) ■意識研究の変遷 ー 意識研究の第一世代(科学的探求の開始)と第二世代(意識の神経相関NCCの探求) 私たちが主観的に経験する意識は、哲学においては、古くから思索の対象であった。そこでは、自分や他人の意識の本質や、その構造を考えるために「言葉」を道具として主に用いてきた。言語は思考の抽象度を高め、文明の発展に大きな貢献をしてきた。個人においても、意識経験や思考の内容は、言語の

      有料
      100
      • 客観的科学の側をどうレベルアップすると、主観が扱えるようになるのか?

        Moonshot 9 というプロジェクトは「こころゆたかな社会の実現」というのを目指している。で、私は山田真希子さんのプロジェクトの一員として、多少プロジェクトに関わっている。そこで運営しているSlackで出た話がちょっとおもしろい。 Moonshot9のタイトルとウェブサイトは以下の通り。Moonshot Goal9: Realization of a mentally healthy and dynamic society by increasing peace of

        有料
        100
        • 最新の脳科学と意識の理論から予測する、人工知能(AI)の意識の可能性について

          ちょっと事情があって以下の記事を有料で(おそらく期間限定)で公開します。フィードバック、コメントいただけると幸いです(5月1日までに。) 1.AIは意識を持つか?

          有料
          200
        • 固定された記事

        なぜオーストラリアの大学では、トップの学生だけが卒業論文を書くというシステムをとっているのか?

        マガジン

        • 学際研究
          12本
        • Life hack 自己の成長
          5本
        • 圏論
          8本
        • 日記・雑記・思いつき
          13本
        • 大学・研究など
          12本

        記事

          学術変革領域A クオリア構造学創成 2023年4月から5年間開始!

          学術変革変革領域A「クオリア構造学の創成」が採択されました! 詳細は追ってホームーページやNote, Twitter, YouTubeで報告します! 4月開始に間に合うのか? 応募領域の研究概要 主観意識と客観的な物質としての脳は、全く異なる世界に属すのだろうか? 意識の中身であるクオリアと脳はいかに関係しているのか? 意識と脳の問題は、科学的な興味に留まらず、現実社会における人の気持ちの理解の困難に伴う問題にも直接関わる。意識のクオリアは、客観的な言語で定義することすら

          学術変革領域A クオリア構造学創成 2023年4月から5年間開始!

          京大2023年前期入試で出た Consciousness, Qualia 関係の問題について思ったこと

          京大の月浦さんと森口さんから、今年の京大の前期試験で Consciousness, Qualia に関する英語の試験問題が出たとの情報! 読売のサイトから行くとまさに! http://yomiuri.co.jp/nyushi/sokuho/k_mondaitokaitou/kyoto/mondai/img/kyoto_zenki_eigo_mon.pdf 元ネタは、 Montero 著:Philosophy of Mind: A Very Short Introductio

          京大2023年前期入試で出た Consciousness, Qualia 関係の問題について思ったこと

          なんで私は 統合情報理論や、圏論や、量子認知に惹かれるものがあるのか? 

          我々は他人の行動の原因を、その人に特有のことだと決めつけがち。つまり、性格・能力・性質をもとに、人の行動を説明して、勝手に理解したつもりになってしまう。言い換えると、行動の文脈を無視しがち。これは、心理学で Correspondence biasと呼ばれる。 Correspondence bias は、進化の結果身についた我々の「クセ」だ。他人の行動の文脈を無視して、その行動その人に典型的なもの、と仮定する。そしてそれをもとに色々予想して行動する。こういうやり方が、生存に役

          なんで私は 統合情報理論や、圏論や、量子認知に惹かれるものがあるのか? 

          意識の授業についてのアンケートの結果 日本語と英語のツイートで。(For English version, see at the end of this essay)

          2022 Oct 7 に、北大CHAINの吉田さんと、大学生・大学院生向けに行っている意識の授業についてZoom/Youtube上で話しました。 そこで出てきたマーケティング的なアイデアで、実際、授業を受ける側の人がどんなトピックを求めているかについて、アンケートをYoutubeの視聴者に聞きました。サンプル数が少なかったので、先週一週間かけて、Twitter上で日本語・英語で同じ質問をしました。結果は以下の通り。 以下は、DeepLによる上の私のコメントの英訳です。ほぼ

          意識の授業についてのアンケートの結果 日本語と英語のツイートで。(For English version, see at the end of this essay)

          久々のNote! 今度心理学ワールド99号に載る予定の原稿。タイトル「意識・クオリアを科学するには?」

          ノートに書くの久しぶり! グラント書きに追われ(3月、5月、7月と、でかいのが続いている。。。)、なかなか時間が取れず。 表紙はサーターアンダギー。今日の昼から沖縄へ行きます!2年ぶりの日本一時帰国。2019年の11月に北海道(CHAIN opening)と奈良(Quantum Cognition)に行ったのが最後かな。 以下は、2022年10月発行予定の心理学ワールドの「こころの測り方」というコーナーに載せる予定の原稿です。 ・心理学ワールドについてと、 ・西田幾多郎

          久々のNote! 今度心理学ワールド99号に載る予定の原稿。タイトル「意識・クオリアを科学するには?」

          新しすぎるアイデアを発表するタイミングはいつが良いのか? その1(寸止め)

          Originals by Adam Grant は、色んな角度で研究に参考になることが書いてある。 今日、Part 4の「イノベーターかフォロワーか ー ビジネスの優位性」 のセクションで自分がとったノートを見直していて、色々思うことがあったのでまとめてみる。 自分自身がこれから応募する研究グラントについての考えをまとめるというのが第一義。これから研究のグラントをたくさん書こうと思っている若手の方に役にたつこともあるかもしれない。 ここで書くのは、いつ、アイデアを発表す

          新しすぎるアイデアを発表するタイミングはいつが良いのか? その1(寸止め)

          意識研究、量子論、仏教の接点が見えてきた。気がする(その3ーこの世界の根本は関係性)

          その2で私が書いたのは、 1)脳内のニューロン同士の相互関係という関係性、 2)我々の身体の外にある世界のモノ同士の関係性、 3)1)の関係性と2)の関係性をつなぐ関係性、 この3つは、世界の構成要素として根源的に違うのか、という疑問だ。 私は、この3つが根源的に違う、ということを指し示すような実験・観測事実は無いと思っている。それは、マッハが「感覚的要素一元論」を提唱した時以降も変わっていないのではないかと思う。 そして私のこの考え方は、Galen Strawsonが言

          意識研究、量子論、仏教の接点が見えてきた。気がする(その3ーこの世界の根本は関係性)

          意識研究、量子論、仏教の接点が見えてきた。気がする(その2ー実在)

          一番「世界は『関係』でできている」で私に納得が言ったのが、世界の根本をどんどんと突き詰めていくと何か「モノ」が出てくる、わけではないという話。 これはおそらく、普通の考えと異なるだろう。 大栗博司さんの「重力とは何か」にも次のように書いてある 「結論から申し上げましょう。それがクォークかどうかは別にして、この玉ねぎには必ず「芯」があります。… 「プランクの長さ」が、宇宙という玉ねぎの「芯」です。」 私もずっと、どんどん微小世界を見ていけば芯が「モノ」として見つからない

          意識研究、量子論、仏教の接点が見えてきた。気がする(その2ー実在)

          意識研究、量子論、仏教の接点が見えてきた。気がする(その1ー寸止め)

          意識研究をやっていると、その研究費獲得のために書く書類の中で、 「この研究は科学と宗教の対話に貢献する」 とかそういうことを書きたい時がある(ちゃんと覚えていないが書いたことも多分ある)。これまでははっきりと「どのように」貢献する、ということは書いていなかった。おそらく、審査員に突っ込まれたらはっきりと返す言葉をもたなかった。自分の中でその関係性は確実にあったが、それを言葉にできるほど、明確な形をもっていなかった。 だが、最近私たちが提案している「関係性」をもとに意識研

          意識研究、量子論、仏教の接点が見えてきた。気がする(その1ー寸止め)

          独立ラボを持った時、共同研究者との中型・大型グラントを提案したり、運営するときに、読んでおけばよかったなぁと思う、最近読んで超参考になった本たち。 ー その1

          最近色んな事情があって、以下の本を読んでいる。 オリジナルズ ビジョナリー・カンパニー2 良い戦略、悪い戦略 学習する組織 これらの冊を熟読していて、自分の身にしていたら、Monashで自分の独立ラボを運営しはじめた2012年以降の10年間、相当人生が変わっていただろうな、と思う。 とったノートの量は半端ないし、それぞれの本にはこういう要約サイトがあるので、ここでは、なぜ、私が自分の独立ラボ運営でこれらが役に立ってただろうと思うかを少し書いてみたい。 私は幸運にも201

          独立ラボを持った時、共同研究者との中型・大型グラントを提案したり、運営するときに、読んでおけばよかったなぁと思う、最近読んで超参考になった本たち。 ー その1

          読者や学生からのフィードバックとやる気

          先週(1月7日)に東大の國吉さんに頼まれて、「脳型情報処理機械論」という大学院生向けに出張講義を行った。学生の背景知識は心理学から工学まで超幅広とのことだったので、背景知識なしで理解できるような内容を話した。(意識研究のこれまで、最近我々が行っているクオリア構造研究とそのコアアイデアの圏論の米田の補題の紹介、最後に最近私が考えている圏論の随伴を意識研究に紹介する、という話)。最後のトピックは、最近有料記事として載せたものに詳しく書きました。1,2,3 授業中は主に國吉さんか

          読者や学生からのフィードバックとやる気

          時限公開販売最後。クオリアと報告の関係性は「随伴」関係? 現象的な意識とアクセス意識の関係性への新しい見方とそこから生まれるあらたな実験パラダイム。

          (最後は一気に5章から7章までを載せます)5. クオリアと報告の関係性は「随伴」と捉えられるか?4章では、圏論における重要な結論である米田の補題と、それにインスパイアされてデザインした心理物理実験として考えられる例を紹介した。 5章では、圏論が明らかにしたもう一つの重要概念である「随伴関係」を意識研究者や認知科学者に紹介する。「随伴」とは、2つの圏の間にある関係性である。圏論で正式に定義される他の圏の間の「同じさ」に比べると、条件がゆるい分応用範囲は広い。ただし「ゆるい」と

          有料
          200

          時限公開販売最後。クオリアと報告の関係性は「随伴」関係…