ピクトハウス-10

【伝説のおもちゃ『24hピクトハウス』への愛を語る】ーおもちゃソムリエほさかと透明液晶に表示された終幕ー


私、ほさかなおは言わずと知れた「おもちゃ好き」である。

約月一のペースで子供向け玩具店「トイザらス」に通い、おもちゃパトロールを行なっている。大人なので、違うおもちゃ屋さんの「エムズ」にも行く。守備範囲は広く、かわいい動物の人形「シルバニア」からTENGAの形をしたロボット「TENGAロボ」までを愛でている。また、子供へのおもちゃ選びも得意としている。いわば「おもちゃソムリエ」だ。そんな「おもちゃソムリエ」ほさかが「最愛のおもちゃ」について語ろうと思う。

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 ピクトハウス

さて、みなさんは『24hピクトハウス(以下ピクトハウス)』というおもちゃをご存知だろうか。私はこの『ピクトハウス』というおもちゃに対し、永遠の愛を誓っている。

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このおもちゃに出会った私は、まるで「モノリス」に触れた猿のごとく衝撃を受けた。『ピクトハウス』は「セガトイズ」によって2005年に発売され、主に小学校高学年生をターゲットとした玩具である。
当時は全国主要玩具店の他、インテリアショップ、雑貨店、書店にて、3,150円という価格で発売されていたらしい。知名度がどれほどあるのかわからないが、とりあえず世間で大流行となった過去はない。少なくとも、私の周りで『ピクトハウス』を知っていたという人物はいない。

「セガトイズ」の「エレクトロニクス技術」を駆使しているわりに、広報は控えめだったように思える。その「健気さ」も、私を魅了するポイントである。ちなみに私は『ピクトハウス』の「最終プレスPDF資料」を保管している。当時の「セガトイズ」はかなり本気だ。


運命の出会い


私はそんな『ピクトハウス』が発売されていたことを、リアルタイムでは把握していなかった。『ピクトハウス』とはかなり特殊な出会い方をした。

発売されてからどれくらいたったのだろうか、私は中学生。当時の「おもちゃソムリエ」はひたすら「サルゲッチュ」というゲームの攻略に勤しんでいた。いかに効率的にサルを捕まえるか、脳内はいつもそんな感じである。他のことに脳を使っていれば、未来はもっと明るかったのかもしれない。

しかし、おもちゃパトロールは欠かさなかった。というのも、12才下で当時2~3才であった従姉妹の子守を頻繁に任されていたため、「おもちゃソムリエ」は大活躍だったのだ。そんな時、なんとなくフリーマーケットで従姉妹に購入してあげたおもちゃがこの『ピクトハウス』。

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「なんか汚ねーけどまぁ買ってもいいかな」といった軽い感覚で購入した記憶がある。「メルカリ」では有りえない判断力だ。それほど価格が安かったのかもしれない。『ピクトハウス』とはそんな出会い方をした。
今でも『ピクトハウス』を愛す私にとって、それは運命の出会いといっても過言ではなかった。


シンプルなシステム

簡単に説明すると『ピクトハウス』は「放置系」のおもちゃ。
ジャンル的には結構珍しい。「放置系」だと『人生銀行』というおもちゃがあったが、あれは大人向けだったので、別物といえるかもしれない。「放置系」おもちゃあるあるだが、時間が表示されているため、インテリアのような時計の役割も果たす。ただ「ぼーっ」と眺め、『ピクトハウス』に現れる変化を楽しむ。世話はいらない。あくまでこちらは傍観者だ。

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また、度々「なぞの○×クイズ」が表示される。
申し訳程度だが、クイズゲーム要素もあった。


複雑な構造


簡単に構造を説明したいところだが、仕組みは意外と複雑。

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「こえだちゃん」の家を連想させる小さな家の形をしており、家の中には薄い膜のようなものが見える。これは透明な液晶画面となっており、主にこの画面を見て楽しむ。玩具業界初の透明液晶を採用したおもちゃだ。透明な液晶に映し出されたキャラクターは、家の中を自由に動き回る。
「メリーポピンズ」のように二次元と三次元が融合して見えるのだ。当時の私は、「なんてハイテクなんだろう」と感動してやまなかった。
同じく二次元と三次元が融合する初音ミクのLIVEを見て、「ピクトハウスやわ」と呟いたのは、おそらく地球上で私一人だけである。


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画面の手前にボタンが3つ。
「たまごっち」のように、選択肢を迫られた際はこの3つのボタンを操作する。もちろん安っぽい音も鳴り、そのピコピコ音はなんともノスタルジックだ。部屋の中を覗いて、右にある小さな扉は開閉する。
まるでラムネ菓子の「ペッツ」の首を開いた時のような地味な音で開く。しかしその地味な音がどことなく可愛らしい。

また、外から家を軽くノックすると、連動してこの扉が開いて小イベントが起こる。これもまた可愛い。部屋の左に階段があり、画面に表示されたキャラクターはこの階段を登る。
それと同時に二階の窓が光る。なかなか凝った演出だと思う。

そして、この『ピクトハウス』、実は通信機能のようなものがある。
家と家を横に繋げてがっちゃんこすることで、『ピクトハウス』内の住人がくっつけた家を行き来したりするらしい。実際にこの目でその通信機能を確認したことは無い。人生で一度は拝んでおきたい光景だ。


ストーリー

「この家で一体何がおこなわれるのか...」
これは『ピクトハウス』を手に取った瞬間、一番気になるポイントだ。簡単に説明すると、「人間」の家に「動物」が引っ越してきて、同棲生活をおくる...というストーリー。最初の選択画面でキャラクターを選び、その同棲生活を眺めるのだ。

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トイレに行ったり、お風呂に入ったり、ご飯を食べたり....そんな住人の動きをただただ見守る。そしてその同棲生活はいたって平凡であり、とくに何か大きなイベントがおこることは無い。

また、操作していない間、彼らはほぼほぼ動かない。子供に放置ゲーは結構つらい。傍観者を務めるにはまだ早い年頃をターゲットに置いているように思える...かといって『ピクトハウス』から声をかけてくることも無い。


なので正直に言おう。
ぶっちゃけ時計だ。



他には無い特徴と魅力

「ただの時計」である『ピクトハウス』最大の特徴であり、おもちゃ業界に衝撃を与えたのが「CM表示」だ。『ピクトハウス』、なんと生意気にも「CM」が表示されるのだ。一体どういうことかというと....ピクトハウスでは時間ごとにちょっとした「動き」がある。その中に「ピンポーン」というチャイムと共にドアが開き、チョコレートが配達されるという演出がある。

その直後、画面いっぱいに「アポロ」という文字が表示される。

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そう。チョコレートを食べるこの小イベントは、「アポロ」のCMなのである。私は初見時、突然のCMに驚きを隠せなかった。
「ここで一旦CMです」と住人が発することなく、そう...突然...
小さな画面に堂々と広告が表示される衝撃はあまりに大きかった。YouTubeで広告が流れ始めた時、「ピクトハウスじゃん」と呟いたのも地球上で私一人だけかと思われる。

他にも小イベントごとに様々なCMが表示される。
どれも化粧品や飲み物などの実在する商品だ。おもちゃのくせに生意気な...最初の方に「健気さに魅了された」と書いたが、いったいどこが健気なのだろうか。前言撤回する。私はこの『ピクトハウス』の「がめつさ」こそを愛している。


平凡な日常の終わり 

他にも『ピクトハウス』ならではの演出がある。…それは、変化の無さとCMに飽々してきた頃だろうか。いきなり聞き覚えのない音楽が流れ、表示されたキャラクターが激しく動き始めた。


「おいおい!何が起こった!!」


思わずガシッと『ピクトハウス』を掴みあげ、必死に家を覗きこんだ。

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先ほどまでの平穏な日常は消え、ただの時計ではなくなった『ピクトハウス』。すると軽快な音楽が流れ始め、ほどなくして人物名がずらずらと表示された。

「プロデューサー...スポンサー...」

スタッフロールだった。

理由は定かではないが、『ピクトハウス』は何かの節目を迎えたらしく、スタッフロールが流れ始めたのだ。

『ピクトハウス』は終わる。

そしてまた最初のキャラクター選択へと戻る。『ピクトハウス』という一つの物件は、違うオーナーの手に渡ったのだ。


ピクトハウスが教えてくれたこと

我が道を行く『ピクトハウス』は私に教えてくれた。

「強く生きろ」...と

人の心を無にする放置ゲーのくせに、絶妙なタイミングで広告を表示してくる。そしてスタッフロールを流し、勝手に終了する。しかし、住人は常に笑顔でこちらを見ている。自信に満ちたドヤ顔で。「何があろうと我を貫け、そして笑顔でいろ」そう『ピクトハウス』は私に語りかける。


ピクトハウスの今

パソコンの画面からふと目を離し、右手の方を見るとそこに『ピクトハウス』はある。地味に電池を交換し続け、今でも見える位置にひっそりと佇んでいる。

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時間はパソコンで確認するため、もはや時計としての役割すら果たしていない。しかし『ピクトハウス』の中で、その平穏な日常は繰り返される。時間になればCMが表示される。そんな『ピクトハウス』を時折横目で確認することが私の癖だ。そして、スタッフロールが終わりを告げる「その時」を待つ。

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そう。『ピクトハウス』の新たなオーナーが現れる「その時」を、私は静かに待っている。

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