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オシャレな大人になるヒントをくれた場所

文房具を買うのは、もっぱら地元のヒグチヤ文具店だった。

街の文具店にしては立派で、品揃えもそれなりに充実していた。

それでも間に合わないときなどは、銀座の伊東屋に行っていた。

気取っていたわけではなく、家から一番近い大きな文具店が伊東屋だっただけだ。

ところが、ある日、小学校4年生か5年生の頃だったか、父が今まで行ったことのない文具店に連れて行ってくれた。

人混みを好まない父らしく、(一般的に最寄駅とされる池袋ではなく)有楽町線の東池袋から、

なぜか最短距離とは言えないサンシャインの地下通路経由で、

たどり着いたのは、

東急ハンズ池袋店だった。

今までのヒグチヤとも伊東屋とも雰囲気が違った。

実用的な文具を買う今までの文具店のイメージと違う品揃え。

プロ仕様からバラエティーグッズまで、どのフロアもいつまでも見ていられる、お店でありショールームである。

そんなイメージ。

ホームセンターが今ほどカジュアルではなかった当時、そんな店構えは新鮮で、少年だった私はすぐ魅入られてしまった。

それからは、幾度となく東急ハンズ池袋店を訪れた。

用のないフロアにも立ち寄り、買えもしないインテリアを眺めては、オシャレに変貌する自分の部屋を夢想した。

パーティーグッズのコーナーを隈なく見ては、使う用のない面白グッズを買いたい衝動を抑えるのに苦労した。

当時買い物をするたびにもらった割引券も嬉しかった。
貯まった券を使う時の何とも言えない高揚感!

大学に入って少し経った頃、一人暮らしのアパートから至便な新宿に東急ハンズができてからは新宿店に行くことの方が多くなったが、それでも池袋店への思い入れは格別だった。

そんな池袋店が…

建物老朽化のため閉店してしまう。

居ても立ってもいられず、父と初めて来た道を辿ってやってきた。

閉店まで10日ほどの店内は、すでに驚くほど商品が少なくなっていた。

しかし、こんなものがあったので思わず参加。

ネタバレできないので詳細は控えるが、最後の思い出に店内を回るのにはうってつけの企画だった。

テナントは軒並み先行で撤退しているが、そのうちの一角が素敵な、でも切ないコーナーになっていた。

お客さんのメッセージカードが貼られた壁があったり、お店のヒストリーがパネルで紹介されているコーナーがあったり、随所に終焉を感じさせる店内だったが、多くの人に愛されてきたのも感じ取れた気がした。

37年の歴史とのこと。

初めて来た時は開店して2〜3年といったところだったのか。

今までありがとう。

池袋店はなくなってしまうけど、東急ハンズのことはこれからも推していく。

さようなら。

それにしても、池袋の東口は随分と変わった。

昔ハンズの近くにあった角扇かどせんっていう大判焼のお店、定番のあんこやクリームはもちろん、他のスイーツ系、肉系やおかず系の変わり種が10種類近くあったのが楽しかったけど、土地開発のあおりを受けてなくなっちゃったな。かなり前の話だけど(今ラウンドワンがあるところ、たしか)。

変わっていくのは仕方ないけど、どこか寂しさはあるね。

ところで、今回の閉店は、建物の取り壊しを受けてとニュースで見た。
じゃあ、サンシャインシティと繋がる地下道の入口はどうなってしまうのか。

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