見出し画像

私とシティーハンター

昭和の終わり頃、日テレの平日夕方4時半からの30分はアニメ再放送の時間だった。

ルパン三世の再放送をよくやっていた枠で、ほぼ毎日欠かさず見ていた。

あれは小5の頃か?

その枠でアニメ「シティーハンター」が再放送された。

当時、週刊少年ジャンプをはじめとする漫画雑誌を読むという習慣がない私にとって、アニメ放送がシティーハンターとの初対面。

ギャグシーンのくだらなさ、お色気シーンの程よいエロさ、それを全てひっくり返すバトルや謎解きのカッコよさ。

その全てのバランスが完璧に整えられた世界にしっかり魅了された尚文少年は、毎日欠かさず観るのみならず、すでに既刊本が多数あった単行本を1月2冊程度のペースで買い求め、アニメ「シティーハンター2」の本放送に釘付けになり、ついには単行本の発行に追いついて最新刊の発売を待ち侘び、モデルガンに興味をもち、新宿駅東口に伝言板を探しに行くなどもした(当時すでに当地から伝言板が撤去されていたのを知ったのは後の話)。

そんな「シティーハンター」の魅力は何をどう語ってもすでに他所で語られているものの焼き直しになってしまうのだけれど、敢えて語りたい。

主人公・冴羽獠の圧倒的な存在感。

シティーハンター・冴羽獠

法で裁けぬ悪を裏の世界で片付ける掃除屋スイーパー
鍛え抜かれた肉体と卓越したガン・テクニック、冷静な判断力と大胆な実行力、男が憧れる漢の要素を全て兼ね備えたような存在感。
にもかかわらず、変態レベルのとんでもない女好き。美人を前にすれば、大胆な行動力はそのままに、冷静な判断力を失うことも…

しかし、その二面性こそが獠の最大の魅力。
主人公に二面性があること自体はよくあることだが、その振り幅は他のキャラクターの追随を許さないのではないか。
ただ振り幅が広いだけでなく、その二面性がなんの違和感もなく共存し、一人の男の描写として“あり得る”ということが絶妙なのである。

パートナー・槇村香の存在感

冴羽獠をアシスタントとして支えるパートナーの槇村香。

パートナーだった兄・槇村秀幸の後を受ける形で獠を支える立場になった香。

しかし、裏の世界にもバイオレンスにも無縁だった香は慣れない裏稼業に戸惑いを隠せない。
それでも必死に獠のサポートをする。愛する兄を失いできた穴を埋める唯一の手段として…

冴羽獠が一定完成された存在として描かれるのとは対照的に、香は物語を通してずっと成長し続ける存在である。
その対比の中、当の獠が香の成長に気付き、支え、信頼し合うことで生まれる関係性の変化が、実は「シティーハンター」全体に通底するストーリーの軸なのかもしれない。

いつまでたっても上達しない香の射撃の秘密。その秘密にも深い理由と獠の不器用な愛が隠されているのだが…ここでは伏せておこう。

脇役たちの魅力あふれるキャラクター

連載の序盤は、冴羽獠と槇村→香に依頼人、そこから派生する敵もしくはターゲット、その周囲の人物で物語が構成され、メインの2人以外は話が終わるとともに表舞台から去る。

しかし、ストーリーが進むにつれ、個性と魅力あふれる脇役たちが現れ、物語を深めていく。

海坊主は、傭兵時代”ファルコン”の通り名で知られた歴戦の兵士で、重火器を軽々と扱う怪力とトラップの知識・技能を兼ね備える大男。2mに及ぶ巨躯にスキンヘッド、サングラスという風貌と、ぶっきらぼうな物言いからかなり威圧的なキャラクター…に見えるが、人見知りで女性が苦手、さらには猫(特に子猫)が大の苦手という一面も。また人情に厚く、正義感も強い。

獠とは対照的なキャラクターながら、それはそれで男が憧れる漢でもある。
時に敵、時に味方という存在として描かれるが、平和な日本においては基本的に同士として動くことが多い。

そんな海坊主と獠も、過去の因縁から命を懸けた対決をするのだが…

ちなみに、本名は”伊集院隼人”である。

美樹はそんな海坊主を愛し慕い寄り添う存在であり、実質的なパートナーである。
戦地で孤児になった美樹を見捨てることができなかった海坊主が、”戦地を生き抜くため”傭兵としての技量を叩き込んだ。それは美樹が一人で生き抜くための技量であり、その技量を叩き込むことはいずれ自分が美樹の許を離れる運命の表れでもあった、はずだった。

しかし、美樹は(ある意味)親身になって生き抜く術を身につけさせてくれた海坊主に愛という特別な感情を抱く。そして、海坊主を追って日本の新宿にやって来るのだった。

海坊主に対する一途な愛と傭兵として完成された兵士としての冷徹さが複雑にかつ不安定に共存する。そして、戦地育ちゆえの人付き合いの苦手さもあって、ツンが強すぎるツンデレのキャラクターである。

私の一番の推しキャラが、何を隠そうこの美樹である。
こんなに愛されるなんて、海坊主がうらやましい。

ちなみに、美樹にとって”愛するファルコン”なので、獠などが「海坊主」と呼ぶことに初めは強烈な嫌悪感と反発を見せるが、次第に慣れたのか割り切ったのか自然と受け止めるようになる。

野上冴子は美貌と妖艶なプロポーションを備える刑事。
時にその美貌とプロポーションで刑事らしからぬ作戦をとる。
冷静にして大胆、そしてセクシーな冴子は、しばしばその美貌を武器に(ダシに)獠を巻き込み、利用し、ほったらかす。それなのに獠は…

冴子は獠の前のパートナーである槇村が刑事だったころのバディでもある。そして今は獠と共闘し、獠を利用する存在でもある。ゆえに香にとっては兄の形見でありかつ獠をめぐるライバル的存在でもある。

他にも冴子の妹で探偵の野上麗華、獠の日本での恩人である教授、獠がアメリカでスイーパーをしていたころのパートナー・ミックなど、レギュラー格の脇役になりそうでならなかった存在も捨て置けない。

ちなみに、敵役コメディ部門では、銀狐が群を抜いて存在感抜群だと思うんだけど、どうか。

それにしても、愛する「シティーハンター」をWikipediaに劣るような紹介文を書いてでも伝えたいとおもったのはなぜか。
それは愛が常にあふれているのはもちろんだが…

そして、天使の涙エンジェル・ダスト

今日、2023年9月8日(金)、劇場に獠、香と仲間たちが帰ってきた。

昼間の新宿東口通路で奇跡の歩行者写り込みなし!

劇場版「シティーハンター 天使の涙エンジェル・ダスト」公開

あの日なかった伝言板
獠!香!

「エンジェル・ダスト」という文言、予告編に明らかに登場する海原神、獠が香へ叫ぶ「来るな!」の声…

ああ、これは原作の最終盤にして最高の場面をベースに作っているんだな。
アニメとしてもここを描くんだな。

そう思うと、もう期待しかない。
興奮してきた。

そして、今我が家にはコミックス単行本を読んで「シティーハンター」にハマっている奴がいる。

中1の次男である。

伝言板も”MY CITY"も知らない中1の坊主(本当に坊主)が「シティーハンター」にハマるとは。
ちょっとエロくない?と思いつつ、そもそも少年誌連載だし、私がハマったの小5だし。

よし、一緒に行くか!

まさか親子で劇場版「シティーハンター」を見に行く日が来るなんてなぁ。
感激である。

鑑賞の暁には、また感想をここに記したいと思う。

(そして流れる「GET WILD」)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?