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これぞ全人類が踊れる音楽。トーキング・ヘッズ『ストップ・メイキング・センス』が巻き起こすフィジカルな祝祭空間

.『ストップ・メイキング・センス』 4Kレストア

トーキング・ヘッズを最後に聴いたのって一体いつのことだったろう。そういえば『リメイン・イン・ライト』のアナログ盤をふと思い立って聴き直したような気がするが、それだってもう4、5年前のことである。それくらいとんとご無沙汰だったのだ。自分のなかではもうすっかり『過去のバンド』的な扱いになっていたのかもしれない。昔はあれほど聴きまくっていたというのに。

なので今回の『ストップ・メイキング・センス』4Kレストア版のニュースを最初に聞いた時はちょっと微妙だった。このライブ映画ももちろん当時リアルタイムで観て非常に感銘を受け、サントラのレコードも買ったし、後に発売されたVHSビデオも買った。それを今回おそらく30年ぶりくらいで観て、昔と同じように『ドヒャーっ、カッコいい!』と思えるのかどうかちょっと不安だったのである。なんか今改めて観たら意外とショボかったんだな。。。とか嫌だし(笑)。

とは言うものの、予告編を観てみたら画像もキレイになってるし、観に行った人のレビューなどを見てみるとなんだか評判も良さそうである。よし、これはやっぱりとりあえず行っとくかと。なに、ショボかったらショボかったでいいではないか。過去を美化して語っちゃうなんてのはこの歳ならではの日々の嗜みである。

ということで早速観てきました。

はい杞憂。
メチャクチャ杞憂だった。
なにが『今観てショボかったら嫌だな』だよオレ!今観ても、いや今観たらさらに『ドヒャーっ、カッコいい!』の連続波状攻撃ではないか。

いやもうこのライブ映画、やっぱりこんなに凄かったのかと。この迫力、そして臨場感。当時も『ライブ映画の最高峰』『このライブ映像は以後全てのライブドキュメンタリーの教科書になる』などと言われていたが、まさに、という感じである。カット割りといい演出といい、メンバーの表情のとらえ方といい、もう見事としか言いようがない。ジョナサン・デミ監督はこの作品が評価されて、このあと『羊たちの沈黙』を撮ることになるのだが、それもさもありなんといった感じである。

あとはやっぱりトーキング・ヘッズの揺るぎない音楽の力だろうか。彼らの音楽を聴くのは上述したようにかなり久しぶりなのだが、もう全然余裕。余裕で楽しい。アフロ、ファンク、ソウル、ロックがゴタ混ぜになったこの極めてフィジカルな祝祭的ダンスミュージックはたとえ何十年後に聴いてもまだまだ有効なんじゃないだろうか。これぞ全人類が踊れる音楽。

ちなみに映画中盤、『Life During Wartime』のあたりで、別に全然センチメンタルな曲でもないのに何故かちょっと感極まって泣きそうになってしまったのだが、この感情はなんだったのだろう。いや、一生懸命踊りながら演奏するメンバーを見てたらついつい…って感じだったのだが(笑)。なんか懐かしかったのかな、色々と。

というわけで、早速トーキング・ヘッズのレコードを引っ張り出してきて色々聴いている。サントラ盤もいいが、やっぱり『リメイン・イン・ライト』をついつい聴いてしまう。このアルバムにだけ、なにかこう只事ではない緊張感が漂ってる気がするのだ。あと、『Naked』も久々に聴いたら結構良かったのは発見だった。

あ、そういえば書き忘れてたけど、映画の中でベースのティナ・ウェイマスの動きがやたら可愛いのでそこも注目である。こんなにチャーミングな人だったのかとちょっと驚くこと請け合いである。

#stopmakingsence
#talkingheads

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