衛生パスの行方2〜フランスの場合〜

8月、フランス全土に施行された衛生パスからひと月ちょっと経ちました。

現行では、どんどん取り締まりがキツくなっていっている印象です。


私は音楽講師として学校で働いているので、そちらで、また身近な仲間内で話している現状をここに書きます。


私の場合、8/25に学校から一斉のお知らせが来ました。

9/3に最初の顔合わせと会議への出欠への問い、

そしてそれまでには講師陣はワクチンを済ませるように、

正確には8/30までに済ませるように、今の時点でまだの人は、学校のかかりつけ医のクリニックから、特別にすぐ予約を入れてもらえるようにできるから連絡せよ、との事が書かれていました。

あと5日がデッドラインの時の一斉通知。

メールのタイトルを見ただけで、胸の動悸と、悪い予感がしました。


去年の4月、これまで20年以上その座を守り、

小さな創作活動や子供達を大切にしてくれてきたディレクターが辞めて、新しい校長が来ました。

古いディレクターは正義感の強い、リーダーシップと軸のある意見を持ち、対等に話せる女性だったのです。

定年退職でしたが、このタイミングで辞められるのは個人的に残念、また、今後を懸念してはいました。

私はその新しいディレクターと新学期が始まる前に話し合いました。

健康上の理由で打てない場合、ワクパス免除、あるいは医師のレターで緩和措置をとることが可能か否かを尋ねるために、そのメールを受け取ってすぐに会いに行きました。

市からの返事と言うことで、結果はNO。

他の人たちと同じように3日に一回、ワクパス更新して提示せよ、と言う返事が、新学期直前に届き、胸がザワザワ。。様子を見るしかありません。

時を同じくして昨年度は、受付や内部のスタッフがほぼ入れ替わり、雰囲気がガラリと変わったことは否めず、戸惑いがありました。

スタッフが新しい世代になり元気になった、それだけではない気がしていたからです。

昨年はまだ、半分以上の講義、レッスンがリモートでしたから、その変化を感じたのは今年に入ってから。

でもこれはまずい、と感じました。


何がまずいのか、と言うと、

-コミュニケーションが希薄 (マスク+リモート授業などで、感情や個人的なやりとりが減り、会話がパサパサな味気ないものに。また私は、リモートの影響もあり、密閉状態に息が切れて、昨年度の冬は鬱状態でした)

-皆が仕事を分業しているが、総括して相談に乗れるまとめ役がいない

-人は人、で他人事感が強く、無関心 (コミュニティ、仲間感が感じられない) などが目立って感じられます。
(これは学校の外、一般社会に於いても感じる事です)


そこにこの、パスサニテール(衛生パス) が導入されて、殺伐とした雰囲気は否めません。


私の学校では、申し込みする12歳以上はパスは全員義務、そして送り迎えをする保護者など大人たちも校内に入る際には義務付けられ、入り口には受付の子がへばりついていて、一人一人へのチェックは厳しくされています。


実際私も、講義初日にテスト結果が遅れて開始に間に合わず、校内に入れてもらえませんでした。

以来結果までの時間に猶予を持って検査を受けています。

これを同僚に言われるわけですから、人間関係が悪くなっても不思議はありません。
分断はこんなところから生まれるのだと、身をもって実感しました。


周りの知人、友人によると、学校によっては、12歳より年齢が緩いこともあれば、パス施行していても厳しいチェックをしない、あるいは週に何日か講義がある場合は1週間に一度見せれば良い、と言うケースもあるらしく、措置の仕方はまったく違います。


現時点で私は、週に2回から3回(結果までの時間の計算、そして週末必要があることで増える)の検査をルーティンで受けています。


郊外に住む自宅の近所には唾液検査ができる場所はなく、パリまで行かねばならないので、時間と手間の負担もバカにはなりません。

時間が間に合わない時は結果の早い近所の検査に行く事になります。


予約を取らねばならないラボと、無しで駆け込めるラボ、街にあるテントの検査場や薬局は今のところ全て予約無しで受けました。


現在はカルトヴィタル (国民健康保険のようなもので、外国人でも滞在許可があれば申請できます。掛け金はありません) で無料のこの検査、10月中旬から有料化されると言われています。

働きに行くのに、お金を払ってパスを発行してもらう。私はこんなにバカバカしく、無駄なことは無いと思っています。


でも、このことで人間関係に深い影響が出てきていることも確かですし、それは悲しいことだと感じています。

例え選ぶ道が違えど、それぞれの選択の先に理解し合うことができない事に、深い悲しみと、そして憤りを覚えます。


しかしこの感情を無駄にしてはいけません。

違和感を言葉に出し、勇気を出して最初の行動の一歩を!

ぜひ立ち上がりましょう。


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