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インソール作成の為の足部解剖学〜後足部(距骨下関節)〜

こんにちは!理学療法士の和田直樹です。
師匠の『ばすぎ整形外科クリニック 西島晃一先生』の資料をもとに今回は後足部を構成する関節の1つである距骨下関節についてまとめていきます。


距骨下関節とは?

距骨と踵骨より構成される関節で前部・中部・後部の3つの関節面があることで、3平面の動きが出る特徴がある。
関節軸としては遠位・内側・背側から近位・外側・底側へ軸が走行する
(立体的に斜めに関節軸が走行する)

・関節軸が3平面全ての面にないため、3平面での動きが生じる
・前部、中部、後部で関節面を構成する
入谷式足底板 基礎編 より引用

関節面を詳しく見ると・・・
前部・中部・後部の関節面それぞれが複雑に構成している。
距骨下関節の運動軸はHenke(ヘンケ)軸と呼ばれ、距骨頭の背内側面から入り、踵骨後方の底外側に至る。
距骨下関節はこのHenke軸を中心として主に内外反方向へ動く。
骨間距踵靭帯のうち足管骨靭帯は運動軸である
載距突起部が触れるようになると、インソール作成時にしっかりと距骨下関節のマーキングをすることが出来る。

青色:前踵骨関節面
赤色:中踵骨関節面
緑色:後踵骨関節面
意外に前部の関節面も広い!

足関節と距骨下関節の機能軸の違い

足関節機能軸を中心に動かす→底背屈の動き
距骨下関節機能軸を中心に動かす→内外反の方向に動き
両者の軸があることで足部は自由な方向に動くことができる自在継ぎ手を形成している。

実際の動きで見るとこんな感じ
内側下方から外側上方へアーチを描くように動く

印が付いている部分が関節軸
印が付いている部分が関節軸

動きのイメージとしては水に浮いている舟のようなイメージ
側方・前後に揺れる、進行方向を変えるような動きをする

運動軸と靭帯
骨間距踵靭帯のうち足管骨靭帯は機能軸であるHenke軸にあり、円滑な運動を維持する為、どの肢位でも緊張を保ち距骨下関節の軸として円滑な運動を維持する働きがある。

関節の中にあり、実際には触れない為「ここにあるな〜」くらいの感じで覚えておくと良い

距骨下関節 回内外による変化

距骨下関節は回内外の動きによって様々な変化が生じる。

<回内>
・足根骨管靭帯が交差するように緊張
・足根骨管靱帯の後中繊維や後内繊維が緊張。最終域になると距骨外側
突起と踵骨溝外側部が接して支点となり、距骨下関節内側部を引き離すようなストレスが生じる
・距骨の前踵骨関節面が底側踵舟靱帯と接する
→靱帯性制御となり剛性力とアーチの高さは低下する
・前足部の関節面が平行になり、柔軟な足部を形成する

※足関節の脱臼骨折などで内側の回内方向へ強制されると底側踵舟靭帯が損傷されてしまい距骨下関節過回内が生じやすくなる。
また内側縦アーチを評価する際にこの部分の安定性がとても大切になってくる
→距骨頭と載距突起が触れることで過回内が生じていないか?
 内側縦アーチが保たれているか?が見れるようになってくる

<回外>
・足根骨管靭帯の絡みが解けるけど、緊張は保たれる
・中距踵関節を中心とした運動を維持するため、補足として運動軸に近い足根骨管靭帯の前中繊維が緊張して運動軸の位置が変わらないように制御している
・距骨の前踵骨関節面が踵骨の前距骨関節面と接する
 →踵骨との骨性制御になり、剛性力とアーチの高さは高くなる。
・前足部の関節面が交差し、強固な足部になる

荷重による影響

距腿関節は前脛骨筋や下腿三頭筋などにより操作されるが、距骨には筋肉は付着せず、周りを通っているだけ。
代わりに距骨は荷重による圧迫を複数ある踵骨との関節面に分配させることで機能性を上げている。
ということは距骨への荷重がしっかりと加わらないと距骨下関節が機能しにくくなってしまうことになる。

<荷重下での距骨下関節の動き>

荷重下になると距骨下関節の軸の周りで距骨・踵骨・距腿関節が連鎖的に動いてくる。
・距骨下関節回内時
 脛骨が内旋することで距骨が内転しながら斜めへ滑り落ちる。
 距骨の底屈と共に踵骨の回内も生じる。

※あくまでも「距骨下関節の中で」距骨が下に下がるので「底屈」と表現される。

・距骨下関節回外時
 踵骨が回外することで距骨が距骨下関節の中で斜め上へ上がる(背屈)ことで脛骨の外旋が生じる。

言葉がややこしくなるが、大切なのは距骨下関節の中で距骨が「落ちている」「上がっているか」になる。

<荷重による脛骨軸と足部の変化>

骨形態的に脛骨と距骨は内側に位置しているが、踵骨は外側に位置する。その為、荷重が加わると距骨下関節は回内しやすくなることが考えられる。
距骨下関節の回内では下腿が距骨と一緒に外方へ傾斜する為、膝関節には内反方向のストレスが加わってくることが考えられる。
ということは、膝関節OAで内反変形が生じている症例に対して、距骨下関節の回内位を軽減させることが必要になる為、インソールにて距骨下関節回外や内側ウェッジのパッドを加えることも十分にあり得てくる。
膝関節OAの内反変形があるから外側ウェッジなどで外側を高くするのではなく、踵骨の位置と内果・外果の位置を確認し、足部の位置関係を把握することが大切になってくる。


距骨下関節中間位の見つけ方と可動性の確認方法

まずは距骨下関節のアライメントを確認

下腿遠位1/3の横径二等分線と踵骨横径(近位2/3)の二等分線を書き、
うつ伏せで非荷重での距骨下関節のアライメント・脛骨との位置関係をを確認。

構造的な異常として距骨下関節は中間位だけど踵骨の位置がズレていることがある。
その際は下腿遠位1/3の横径二等分線と踵骨横径(近位2/3)の二等分線がそれぞれどこにあるかを評価することでチェックできる。
正常値として距骨下関節の全可動域は30°と言われており、正常な中間位は0°と言われている。
その0°を見る時の基準になってくるのが下腿遠位1/3の横径二等分線と踵骨横径(近位2/3)の二等分線の位置。
それぞれの二等分線が直線上になっていれば中間位は0°になる
→踵骨の後面がしっかりと触れられないと距骨下関節のアライメントをしっかりと評価することができない。

<可動性の評価>

距骨下関節の可動域は回内位から回外位までのだいたい30度。この30度を「1」とした時に回内方向には1/3、回外方向には2/3動くと言われている。
全可動域を動かした中でだいたい1/3動く方向と2/3動く方向の真ん中が中間位になってくる
※この中間位の設定が大切になってくる為、回内方向へ1/3動いて、回外方向へも2/3動く領域が中間位という概念はブレないように評価することが大切。

<動かす際の注意点>

動かす時は踵骨をしっかり把持。
下を持つと前足部の動きになってしまう為、しっかり踵骨を動かすようにする。
踵骨を持った状態で動かし回外・回内方向へ動かすことで可動性を確認できる。

回外方向
回内方向

<簡易的な距骨下関節の評価>

外果の上下の窪みが線上にある場合は距骨下関節は中間位。
外果の下の窪みが線より外側・・・距骨下関節回内位、足部外反位
     〃       内側・・・距骨下関節回外位、足部内反位

※この時は後足部を評価しているので前足部を持って操作してもOK

歩行時の距骨下関節

歩行時において立脚初期には距骨下関節は衝撃吸収を行う為、回内位になる。
その後、立脚中期から終期に向けて足部の剛性力を高める為、距骨下関節は回外位になる。
この切り替えが大切になっており、タイミングが違ったり、強弱があると歩行動作に影響が生じてくる。

・立脚初期以降も距骨下関節が回内位になっていると・・・
 →剛性力の低下により足の振り出しに影響が生じる。

・立脚初期での距骨下関節回内が強すぎると・・・
 →脛骨の外方傾斜による外側動揺が生じやすくなる。

このように距骨下関節の回内位から回外位への切り替えを理解しておくことで距骨下関節のアライメント・可動性の評価による動きの予測だけでなく、歩行動作からどのタイミングで距骨下関節の回内・回外が強くなっているかの推測も行うことが可能になってくる。

<立脚初期〜中期にかけての運動連鎖>

距骨下関節は運動連鎖のキーポイントになりやすく、立脚初期にどうなっているかが大切になってくる。
基本的には距骨下関節が回内すると下腿と大腿が内旋方向へ動くが、それぞれの回旋量が違う為、距骨下関節の回内にて下腿は内旋するのに対し、大腿は回旋量が少ないので相対的に見ると下腿に対して大腿が外旋位になる。
すると骨盤は大腿部に対して前方回旋が生じる。

・距骨下関節回内時の運動連鎖

距骨下関節回内

下腿の内旋が促進される

立脚初期での適正な衝撃吸収が行われる

体重の前方移動が遅れる

重心が前方へ移動しにくくなる為、
大腿の内旋・骨盤の前方回旋が抑制される

骨盤より大腿骨の方が回旋量が多い為、
相対的に骨盤に対して股関節が外旋位になる

相対的に見て、股関節外旋位、大腿外旋位になる為、
下腿の内旋が大きくなり、膝関節が内旋してくる

※もともと距骨下関節が回内になっている人は回内誘導を加えると、前方への体重移動の遅れと下腿の内旋と外方傾斜が加わる為、外側へ流れるような反応が生じやすい。(例外もあり)
逆に何らかの原因で前方への重心移動が早すぎる人は重心移動が調整されスムーズになる為、良好な動きになる

・距骨下関節回外時の運動連鎖

距骨下関節回外

下腿の内旋が抑制される

足部の剛性が高まる為、立脚初期での適正な衝撃吸収が行われる

体重の前方移動が早くなり「パタン」と前に倒れるように足部が動き、
衝撃吸収が行われないことで「ドンッ」と体重が前に乗るようになる

重心が前方へ移動しやすい為、
大腿の内旋・骨盤の前方回旋が促進される

骨盤より大腿部の回旋量が多い為、
相対的に骨盤に対して股関節が内旋位になる

相対的に見て股関節内旋位、大腿内旋位になる為、
下腿の内旋が小さくなり、膝関節が外旋してくる

※もともと距骨下関節が回外位になっている人は回外誘導を加えると、衝撃吸収がより出来なくなり、重心の前方移動と相対的な膝関節の外旋が生じる為、膝関節周囲への負担が強くなる可能性が高くなる。
逆に何らかの原因で重心が後ろに残ってしまう人は、重心移動が調節されスムーズになる為、良好な動きになる。

<立脚中期以降に生じるの運動連鎖>

「歩行時の距骨下関節」の図にあったように立脚初期から中期の間に距骨下関節は回内位から回外位になることで、衝撃吸収からの前方への推進力を生み出しているが、
立脚初期の距骨下関節の位置によって立脚終期にも影響が出てしうまう。

立脚初期で距骨下関節が回外していると・・・

衝撃吸収が弱くなることで体重の前方移動が早くなり、
「パタン」と前に倒れるように移動する為足関節は底屈方向へ動く。

早い段階で重心が前方へ移動している為、
立脚中期以降で重心の前方移動が遅れてくる

重心が後方へ残る為、立脚終期の蹴り出しが強くなる

逆に距骨下関節が回内していると・・・

衝撃吸収が強くなることで体重の前方移動が遅くなり、
「グッ」と止まるので足関節は背屈方向へ動く

立脚中期以降で重心の前方移動が早くなり、
立脚終期ではあまり蹴らないようになってくる

まとめ

距骨下関節は位置によって剛性力を変化させたり、荷重によってもその後の運動連鎖に影響を与えます。また、インソールを作成する上で関節誘導を行う場所でもある為、関節運動のイメージを持った状態で下腿軸と踵骨軸を使ったアライメント評価・可動性評価・荷重下でのアライメント評価を行った上でその人がどんな後足部をしているのか確認することが大切になってきます。
そこに動作が加わり、回内誘導した方が良いのか回外誘導した方が良いのかを見ていくと良いと思います。
次回は中足部についてまとめていこうと思います。
最後までご愛読ありがとうございました。


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