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Vol_26:感情のリサイクル

誰かに辛く当たったり、
きつい言葉をかけてしまったり、
そんな自分が嫌になる瞬間はないでしょうか。

ただそれは、自分が悪いというよりも、環境や相性の問題であることが多い。

ついつい人は「本当の自分」や「自分の本性」があると考えがち。
なので、「自分」なるも のを探して、バックパックを背負う旅が流行った時期もあった。

が、、、旅先に「自分」なる存在が落ちていて、それを偶然見つけるなんてことがあるわけない。

なぜなら「自分」は、環境によって変化するのが当然だから。

バックパッカーとしてアジアの片隅を訪れ、
夕日に感動したり、一期一会の人々と優しく言葉を交わす人がいたとする。

でも日本に戻ると、慌ただしい日々に忙殺され、空を見ることもなく、街で人とぶつかっても謝りもしない。

どちらが本当の自分なのか、という議論に意味はない。

単純に、余裕があるか・ないかで人間は変わるというだけの話だ。

人の性格は文脈によって変わる。
能力も性格も「固定化」していない。

女優の蒼井優さんが結婚した時、
「『誰を好きか』より『誰といるときの自分が好きか』が重要」と言った。

僕はただ、彼女の語彙力と豊富な表現力に感服した。
いくら相手のことが好きでも、緊張したり、見栄を張ってしまうことがある。それ自体が悪いことではないが、蒼井さんは「自分」の状態を起点に考えた方がいいと述べている。

同様の理由で、イライラしてしまったり、気に食わない人がいたら、できる限り関係を持つべきではない。

客観的にどちらが悪いかを検証することができたとしても、お互いの相性が悪いというのは事実である。

相手のいいところを見つけようとか、
自分の心を落ち着かせようとか、
そのような努力を重ねるくらいなら、距離を置くのが最もシンプルな解決法だと思う。

つまり環境を変えれば自分の気持ちも変わるということ。


ただ、物理的に苦手な人と距離を取れない状況の人はどうすれば良いのだろうか。

今日のメインテーマであり、僕が編み出したワザはずばり「嫌な経験こそ記憶にとどめる」ということ。


僕が中学生の時、TSUTAYAでスピッツの初のベストアルバムを手に取った。

それは200万枚を超える売り上げで大ヒットを記録したのだが、発売はメンバーの意向を無視した、レコード会社の決定によるものだったそう。

その不和を象徴するように、
タイトルには「RECYCLE(リサイクル)」という言葉が冠されている。

既発曲を再利用して商売しようとする大人の都合で出されたアルバムです、というメッセージにもとれる。


実際、今でもこのアルバムはスピッツ非公式扱いになっている。
当時、中学生だった僕は、スピッツの意向よりも、「リサイクル」という言葉の使い方に興味を持った。

リサイクルという言葉は、空き缶など「廃棄物の再利用」という意味で、かなり古くから使われてきた。

特に日本では一般的な用語になっている。

英語でも同じ文脈で使用されることが多いが、アイデアやジョークの使い回しという意味もあるらしい。

いずれにせよ、新作のアルバムに付けるタイトルではないと思った。

『人生の様々な局面で「リサイクル」を意識すれば、効率よく生きていくことができるのではないか。』

僕が中学生の頃に抱いた直感は今でも正しかったと思っている。

誰もが不可逆的に、一度の人生しか送ることができない。
そして、全ての人にとって、時間の 流れはほとんど平等と言っていい。

良い事、悪い事。
同じ経験をしてもそれを「楽しかった」や「つまらなかった」とその瞬間の感情で済ませてしまう人もいれば、後から何度も反芻(はんすう)して何かに役立てようとする人もいる。

僕の場合は、人前で話したり、文章を書く仕事をするようになってから、人生のコスパは劇的によくなった。

このnoteにしても、中学生の頃、スピッツのCDに抱いた考えを、少し時を超えてリサイクルしている。

感情も再利用することができる。
日々をただのフローとして捉えるのか、ストックされていく資産のように考えるかで、人生は大きく変わる。

その瞬間は、イラっとしたり、悲しみに暮れたり、退屈だと思った出来事でさえ、後から価値を持ってくるかも知れない。

しかし、何がいつ、どのようにリサイクルできるか、先んじて知ることは難しい。

記憶は消せないからこそ、嫌な経験をした時ほど、来たるべきリサイクルのために、詳細を記憶しておいたほうがいい。

誰かを説得したり、反論したりする材料や話のネタになるかも知れない。

苦手な人とは距離多くのが一番だが、それができないときは「記憶にとどめる」。やっぱりこれが良い。

ただし、人生に無駄なことは何もない、という話ではない。
たとえば同僚のIさんは、毎日のようにくだらない親父ギャグを連発しているが、これは聞いた瞬間から忘れるようにしている。

反芻する価値のない出来事もある。

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