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和紙も藍染も、歌も演奏も

何だこれは?と思わず手に取った。
ああ、なんて美しい風合い、色。

阿波の藍染手漉和紙で作られたペン皿(徳島県・アワガミファクトリー)と、正藍染手つむぎハンカチ(かぜつち模様染工舎)を思わず買った。

どちらも、北とぴあ日本の伝統音楽祭(5月23日・北とぴあつつじホール、主催:THE MUSIC PLANT)の会場で販売されていて、歌手・松田美緒さんが国内外の忘れられた歌を発掘していく中で、出会ったもののようだ。

松田美緒さんの歌をライブで聴いたのは随分久しぶりになる。
コロナ禍で、旅が困難になっている中、旅すること自体が音楽活動の根幹をなしている彼女のような人の音楽が、どう響くのかを知りたかった。

やっぱり、とてもいい。
声のバイブレーション、震えが、相変わらずすてきだ。
歌が、風を運んできてくれる。
その背景にある様々な土地の人々の暮らしを感じさせてくれる。

ポルトガルのファドを起点に、国内外のさまざまな土地を旅しながら、誰がつくったのかわからない、伝承的な歌を探求してきた松田さんの活動は、自分にはいつもまぶしい。

「歌の根源を求めて」とMCで松田さんが言ったけれど、歌の根源って、本当に一体何なんだろうと思う。
人間も旅をせずにはいられない生き物だけど、歌もまた旅をする。
国境も海も越えて。
いつか自分の書いた歌が詠み人知らずのようになっていくことが最高の名誉だと言ったのは、確かリヒャルト・シュトラウスだったろうか。

作者の存在が溶解して消えてしまうほど、過去からやってきた歌のことは、常に忘れずにありたいものだ。

このコンサートでは前半には輝&輝(KIKI)という2008年結成の津軽三味線のデュオが演奏したが、それも面白く聴いた。
特に、メインに演奏した津軽じょんがら節には、揺るぎない強さがあった。
美しい振袖姿で、演奏していないときの雰囲気は初々しいくらいなのに、演奏が始まるや否やパッと集中モードに切り替わる。

それがたとえ生まれ故郷とは異なる土地の伝統であっても、伝統とは人に力を与え、迷いから解放し、新しいことに立ち向かうための不思議な確信を与えてくれるものなのだろう。工芸品であれ、音楽であれ...。

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