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【芸術の秋|沖縄タイムス唐獅子⑨2011年11月28日掲載】

*これまでに執筆した記事を振り返っています。 

芸術の秋にふさわしく、県内外でもさまざまな展覧会やイベントがめじろ押しであった。

11月初旬に、東京と横浜のアート・エリアとマネージメント業務調査のため、美術館やギャラリー、街中のアートを視察してきた。横浜美術館を主会場に行われた現代美術の国際展覧会ヨコハマトリエンナーレは「みる、育てる、つなげる」をテーマに、黄金町バザールや新・港村(BankART)など地域と連携した企画を展開している。

この試みは相乗効果を生み、3カ月の開催期間で、33万人以上の来場者を記録。芸術が横浜の観光へも大きく貢献しているさまを示していた。また「つなげる」試みとして、美術だけに留まらず、音楽、演劇、古典芸能などのプログラムを文化施設や大学と連携し、芸術としてそれらを楽しむ方法を提案していた。

東京では商業アートやデザインフェスタなど、アートをビジネスに転換していく手法と、より広く、質の高いものを提供するためのマネージメントがどうなされているか、関係者から伺った。このように県外での事例に学び、地元沖縄の個性を活かしながら、果たしてアートで何が出来るのか、調査をもとに日々模索している。

県内での動きとしては、前島アートセンターやカイナアートフェスタが10年という一区切りを迎え、解散や転換の時期を迎えている。主要メンバーが30~40代に達し、次へのステップへと「進化」が迫られているように思う。よく先輩たちから「次の世代を担う若者がいない」という言葉を耳にするが、世代を超えてジャンルを超えて、彼らが「交わる場」が必要なのではないだろうか。

先日、ギャラリーラファイエットで開催された石川真生写真展「日の丸を視る目」で、幅広い世代の人が県内外から訪れ、交流の場となり、その集客力にみなが驚いていた。それは、作品の持つパワーもさることながら、自ら広報に力を入れてきた石川さん自身の経験によるところも大きい。それに加え、感性を刺激された若者たちの行動も反映された結果であったと思う。私が理想とする「交わる場」を現実にしてくれた展覧会であった。

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