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マンガ学校で学ぶと面白いマンガが描けるようになるのか…?

この春で一度辞めることになりましたが、専門校のマンガコースで講師をやらせてもらった経験をもとに、「マンガ学校」という場所について私の考えをまとめてみたいと思います。
何回かに渡ってお話することになると思いますが、マンガ学校に通いたいと思っている方、マンガ学校に興味のある方がいましたらご参考までに。

まずは…ズバリ!!
「マンガ学校で学ぶと面白いマンガが描けるようになるのか…?」
です。
結論から言えば、「面白いマンガを描くための技術的な基礎は学べる」と思います。ただしそれも、先生のアドバイスを素直に聞いて真剣に取り組んだ場合に限り…ですが。

「真剣に取り組んだ場合」について少し説明すると…
現場で感じたことですが、そもそもマンガを学ぼうとする学生自身が「マンガを学ぶ違和感」を抱えたまま入学している気がします。
自分でもある程度描けるのに、わざわざ高いお金を払って学校で何を学ぶのか…と。
それでも入学するのだから主たる目的がそれぞれにあり、実際そんな話も聞きました。

例えば…

「ひとりで描き続ける自信がないから仲間が欲しい」
「おしりをたたいてくれる環境が欲しい」
「デジタルが苦手なのでそこを強化したい」
「入賞のための情報やルートが欲しい」
「規則正しい生活のため」

などなど。
ただそうなると、すでに自分で「できている」と思っている部分には自信やプライドもあって、その部分には余計なことを言われたくないという雰囲気を感じることがありました。
学生に聞いたら「そんなこと思ってません!」と言うかもしれませんが(笑)でもね、そうした深層心理がどうしても態度に出ちゃうんですよ。
「ここはもう少しこうした方がいいよ」と言うと、あからさまに面倒そうな顔をしたり、直しているようで直していなかったり。

でもせっかく「学校」という場所に来たのに、自分の殻をやぶろうとしない、守りに入った態度で授業にのぞむのはすごくもったいないと思います。
「真剣さ」というのは、「覚悟」でもあると思うのです。
自分が良いと思っていたものを否定されたり直されたりすることも辞さない覚悟…。

学校はそもそもいろいろ言われるために行く場所です。
時には先生ごとに言うことが違うとか、持ち込んだ編集者と先生のアドバイスが真逆だったとか、そういう理不尽な目にも遭う場所です。
でも、ちょっと考えれば分かることですが…プロになって自分の作品を世に送り出すようになれば、早かれ遅かれ同じ目に遭うことになります。つまり学校で経験する理不尽は、その予行練習のようなものなのです。
ここで折れてしまったり、ふてくされてやる気をなくすようでは、プロとしてやっていくのはちょっと難しいと思います。

そして一番大事なことは…誤解をおそれずに言いますが、いろいろ言われる時や、人によってアドバイスが違う時は、たいてい「その作品があまり面白くない」時だということです。

「絵はまだまだだけど、すごく面白い!」
「ストーリーは荒いけど、すごく面白い!」
「展開はありがちだけど、すごく面白い!」

…そういう作品はもうそれでいいのです。描いているうちに技術はついてくるし、下手なことを言ってつまらなくしちゃいけないと大人たちだって分かっていますから。

じゃあその「すごく面白い作品を描く方法を教えてください」と思うかもしれません。それを学校で教えて欲しい!と。
う~ん…申し訳ないけれど私には無理ですし、いるのかな…そんなことが教えられる先生…。

なぜなら「すごく面白い作品」は、その人が生きてきた環境や経験、それらに裏打ちされた価値観や視点…そしてその人の夢や願望、趣味嗜好…そういったものが随所に現れた作品であり、それが個性であり、他人が教えることができないものだからです。

だからと言って、「じゃあ学校に行ってもなんにもならんってことかい!」と絶望することもありません。

技術がある程度身につくと、作品を最後まで描き切ることができるようになります。そうすると自分の描きたいことを整理して分かりやすく、かつ見栄え良く表現することに集中できるので、結果としてそれなりの作品がちゃんとできあがるからです。

「すごく面白い!」作品ではなくとも、「つまらなくはない」作品が描けるレベルになれば、担当編集者がついてくれます。
そこから先が本当の戦いですが…とにかく、マンガ学校では基本的に技術を教えます。だから真剣に取り組んでいればできるようになることがたくさんあります。それが「すごく面白いマンガを描くための技術的な基礎」として役立つかどうか…あとは本人次第なのではないでしょうか。

ご参考になれば嬉しいです。





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