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上田で一日。

休日、朝から気温が高い。
歩いていると、じんわり背中に汗をかき、
上着を脱いで長野駅の階段を上がった。
上田の町へ出かけたのだった。
上田駅を出て、広い通りを歩いていると、
町なかの木々の、爽やかな緑に気持ちが和む。
ちいさな城下町の新緑の眺めだった。
昼どきになり、この日はひさしぶりに、
横町の中華料理屋、美華にうかがった。
愛想の好いお姉さんに迎えられ、
隅の入れこみに落ちつく。
酢豚をつまみにビールを飲んでいれば、
じきに常連さんたちがやってきて、
お姉さんと親しく言葉を交わしながら、
思いおもいに料理を頼んでいる。
しばらくすると、
上田に暮らす友だちが顔を出してくれて、
昼のひとときを付き合ってくれた。
友だちは、この4月から新しい職場に就職された。
仕事は毎日忙しいといい、でも楽しいという。
仕事を御一緒するかたがたは、かつて学校の
校長先生をしていたような偉い人ばかりで、
いちばん年下の身で関わっているという。
いつも笑顔で、はきはきと明るい人柄は、
そんな目上の人たちにも慕われていると
うかがえたのだった。
午後の仕事に戻る友だちを見送って、
上田の銘酒、明峰喜久盛を酌みながら、
肉厚のワンタンで締めた。
飲み屋に蕎麦屋に中華屋、あちこち
知っているわけではないけれど、
これまで足を運んだ上田の店は、
どこも外れがない。
味が好くて、店を営むかたの感じが好いのが
何よりだった。
午後は、別所温泉まで足を延ばし、ひと風呂の
予定だったのに、
ビール2本と日本酒1合に酔ったら、気力が萎えた。
店を出て、ぶらぶらと辺りを散策することにした。
上田の町はもう何度も歩いている界隈でも、
ふるびた昭和の面影が、落ちついた風情を感じさせ、
飽きない。
ひと気のない通り沿いに、斜めに傾いている
古いお宅があった。
今にもつぶれそうと眺めていたら、中から
おじいさんが出てきた。
住んでいるのかい・・・
地震が来たら一発でアウトですよ。
とても心配になってしまった。
家々の軒先に見ごろの花が咲いている。
高いマンションに見下ろされるように、
緑の木々が冴えている。
ふだん暮らしている、善光寺門前も緑に囲まれて、
落ちついた風情がある。
同じくらい上田の町にも、終の棲家にしたくなる、
好い風が吹いているのだった。
ひとまわり歩いて、酔いざましにひと眠りしたら、
時刻も好い塩梅になっている。
今夜は上田の近くに暮らす友だちと、萬寿寿司で
一献の予定だった。
寿司屋が開くまで軽く一杯、久しぶりの花壱に
立ち寄った。
品書きを見たら、この日は宮城のホヤが有る。
好いですねえ。
このゴールデンウイーク、その宮城から
友だち家族が訪ねて来る。
楽しみなことと思い出しながら、
佐久の明鏡止水のうす濁りを酌みながら、
東北の春の味を利いたのだった。

酢豚食う春の近況聞きながら。




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