善光寺門前に暮している。この頃町内でつづけて 御不幸があった。長らく自転車屋を営んでいた かたがいた。子供の頃から見知ったかたで、いつも店先で 自転車やバイクの修理をしていた。手先の器用なかたで、 仕事のないときは、大きな凧を自作の絵を描いて作ったり、 毎年、年明けのどんど焼きを神社の境内でやるときに、木を 組み立ててだるまを突きさす土台を作ったり、 秋祭りのときに、婦人部のみんなが作る焼きそばの屋台を 作ったり、町のためにあれこれ準備をしてくれた。 こちらが二十代のときに、
四月、春らしい陽気になってきた。善光寺界隈を 散策すれば、先々の家の庭や道沿いに、いろんな 花がきれいに咲いて、気持ちを和ませてくれる。 早朝の空気もゆるくなり、寒い冬の間さぼっていた、 ノルディックウォーキングを再開している。 花粉とウイルスを防いでくれるスプレーを顔に 吹き付けて、一時間ちょい余り町をひとまわり。 帰ってきたら、目と鼻と顔をよく洗う。 花粉症に苦しんでも、朝の空気はやっぱりさっぱりと 気持ちが好い。困ったのは、二年ほど前から、 花粉症の薬を毎日飲むと、たま
使っているスマホの調子がおかしくなった。 使い始めて四年、この頃になって、意味不明の 通知音が鳴るようになったのだった。それまで スマホの設定をいじった覚えがないし、なにが 原因なのかわからない。 パソコンを開いて、スマホ謎の通知音で検索したら、 けっこうおなじ症状に悩むかたがいるようで、 対策方法が並んでいた。なんとなくそれに 従って処置してみたものの、ぜんぜん症状が変わら ない。十分に一回鳴る時もあれば、 続けざまに鳴る時もあって、小鳥のさえずりのような 音が長々響いてい
上田へ出かけた。別宅に荷物を置いてから甲田理髪店に 寄った。 この店のご主人は、施術の間、ほとんど話しかけてこない。 こちらも余計な気遣いをせずに済むのがありがたいのだった。 髪をさっぱり短くして、ほど近い寿司屋の萬寿の暖簾を くぐる。愛想の好い御主人家族に迎えられ、 お通しのホタルイカでビールを飲んで、握りをつまみに 木曽の九郎右衛門の純米吟醸を酌んでいたら、二階から ひとり娘のなおちゃんが降りてきた。こんにちは~と声を かければ、照れたようにニコッと笑う。 お母さん似の美
桜が咲いた。冴えかえりの日が続き、開花がおそかった。 ところがそのあとの陽気の良さに、あれよあれよと咲き はじめて、もう盛りを迎えている。 すぐそばの氏神さんの桜も、善光寺の東側、城山公園の桜も、 すっかり見頃になっているのだった。 週末の土曜日の朝、散歩に出たら、早朝から公園の界隈に、 花見客がずいぶん訪れていた。芝生の桜の木の下に、 早々にブルーシートを敷いているところもいくつか有った。 通り沿いの桜並木を見上げて、スマホで写真を撮る人に、 じっくりカメラを構えて撮る人に
休日になると、たいていどこぞの蕎麦屋で酒を 酌んでいる。ビールを一本にお銚子を二本。 ときにはそこに加えて蕎麦焼酎のお湯割りを 追加して酔っ払っている。 四月初めの休日、善光寺門前を歩いて行くと、春休みの 観光客の姿が多い。ところどころに真新しいスーツの 若者を見かけて、今日は新年度初日と気がついた。 参道を抜けた信号を右手に行くと、老舗の蕎麦屋の元屋 が在る。 ずいぶん久しぶりに暖簾をくぐってみたのだった。 年配のご主人夫婦の、親方と女将さんが営んでいて、 いつも繁盛してい
このところ、日本や世界のあちこちで地震が起きている。 二日前には、台湾で大きな地震が起きたばかりだった。 元日に起きた能登半島地震では、暮らしている 長野もずいぶん揺れたという。その日は群馬の 草津温泉に滞在していて、熱めの湯と酒に癒されていた。 地震が起きたとき、すっかり酔いつぶれていて、 まったく気がつかなかったのだった。 心配してくれた友だちからのメールで、地震があったと 知った次第だった。なんとものんきなことだった。 金沢に大学時代の友だちが住んでいる。 心配になって
木曜日の朝、いつものように仕事の準備を終えて、 SNSを覗こうとパソコンを開いたら、 インターネットに接続されていませんとの表示が出た。 ときどきこういうことがあり、そのたびに修復作業を している。いつもならじきに繋がるのに、 この日はどういうわけか、何度繰り返しても 繋がらないのだった。再起動を何度かしてみたり、 接続機器を外して繋げてみたり、一時間あまり格闘 しても、繋がる気配がない。悪戦苦闘をしていたら、 近所の知り合いがガラッと入口の戸を開けて、 顔を見るなり、ああよ