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のんびり上田。

休日、上田へ出かけた。
夕方、久しぶりの友だちと一献交わした翌朝、
ゆっくり起きて、ぶらぶら散歩に出た。
駅からの通り沿いにあるヴァシランドコーヒーに
立ち寄ったら、馴染みの蕎麦屋の、東都庵の女将さんと
お会いした。いつもお世話様ですと挨拶をして、
浅煎りの、爽やかなコーヒーをいただいた。
店を出て、あてもなく静かな小路を歩いて行くと、
道沿いのお宅に、園児募集 梅花幼稚園の貼り紙があった。
ここのお宅の子が通っているのかな。貼り紙に描かれた
絵が幼くてかわいい。木町から柳町へ出て通りを下り、
池波正太郎・真田太平記館へ行く。時代作家池波正太郎は
今年生誕百年を迎える。記念の企画展が開かれているのだった。
池波さんは、上田の武将真田家を題材にした真田太平記を
執筆する際に、たびたび取材で上田を訪れていた。
企画展ではその足跡や、訪れたときの日記が展示されていた。
上田の町の風情を気に入って、東都庵に、同じく蕎麦屋の
刀屋に、カレーのべんがるに肉屋の但馬軒と、贔屓にしていた
店も紹介されている。
上田へ来たときは、当時、市の観光課に勤めていた
益子輝之さんが案内をしていた。今も御健在で、
上田の名士として知られている。
二人で真田家ゆかりの地を訪ねたときの写真もいくつか
飾ってあった。かつて益子さんが、なんで上田の町を気に入って
くれたのか尋ねたら、上田には東京が失った昔の東京があると
返ってきたという。確かに上田の町なみには、あてもなく
歩いているだけでほっとするような、落ち着いた風情が
あるのだった。
いちど東都庵で益子さんにお会いしたことがある。
着物姿の細身で端正な姿が印象的だった。
上田について池波さんは、
折りにふれ、上田の人々の顔をおもい、
上田の町をおもうことは、私の幸福なのである。
と言葉を残している。上田が好きな身には、まことに嬉しい
ことだった。
昼どき、上田に暮らす友だちと中華の美華におじゃまして、
餃子とラーメンの昼酒をして、グランドシネマズ上田へ行く。
池波さん原作の、仕掛人藤枝梅安が上映しているのだった。
2月の上映につづいての第二弾で、豊川悦司の梅安さんと、
片岡愛之助の彦次郎に、再びお目にかかれた。
映画館を出て薄暮の中、
東都庵での一杯に、まったくもって急ぎ足になるのだった。

春雷や梅安さんは刀屋に。





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