見出し画像

気が急いて

コロナ禍になってから、仕事場に
空気清浄機を入れた。
14畳の仕事場に、余裕を見て、
38畳対応の機種を設置した。
お客さん相手の仕事をしていて、アンモニアや
アルコールやらの原料を含んだ
薬品を使用している。
使いだすと、じきにごうごうと
動き出して、健気に空気をきれいにして
くれるのだった。
毎春、花粉症に苦しんでいる。年々、
症状に重い軽いはあるけれど、
この春の花粉は、なかなか強烈だった。
例年、朝に薬を飲めば、夕方まで
症状が抑えられていたのに,
薬の効き目が午後には切れて、
もう一度服用することとなる。
仕事場に人の出入りがあるたびに、
空気清浄機がすかさず動き出す。
これまでこんなに反応しなかったから、
出入りに伴って、たくさんの花粉が、
入ってきているとうかがえた。
先日の朝、起きたら寒気がする。
体温を計ってみたら、平熱をこえていた。
そのうちに咳も出始めて、風邪をひいて
しまったのだった。春のはじめの風邪なら、
今に始まったことではない。
ふだんなら気にもせぬことながら、
コロナ禍の中、花粉症はまだしも、
風邪はよろしくないと心配になり、
あわてて解熱剤と咳止めを買ってきて飲んだ。
その2日後、仕事をしていたら、急に
体中に汗が流れだし、めまいを起こした。
あれれ、どうしたんだ。
仕事がつづけられず手を止めたら、
異変に気付いたお客さんに、
大丈夫?すこし休んでくださいと心配をされた。
自室へ行って、上着を脱いで汗を拭いて、
着替えてから、しばしめまいが収まるのを待った。
なんとか仕事をこなして、お客さんを見送って、
へなへなと、椅子にくずれおちた。
鼻炎に解熱剤に咳止め、ふだん薬要らずの身が、
はやく症状を押さえたいと
つよい薬を飲んだせいで、
逆に体を不調にしてしまったのだった。
それからしばらく薬を飲まずにいたら、
ようやく普段の調子に戻って、ほっとした。
歳をかさねて、体力も免疫力も、
若いときのようなわけではない。
気を急いて体に無理をかけぬよう、
気をつけなければいけないのだった。
すぐ先の、氏神さんのソメイヨシノが
開花して、連日の陽気の良さに
促されて、あっという間に満開になった。
いつからか、今年の桜を目にするたびに、
生き延びられたなあと、そんな思いに
駆られるようになった。
この春も、花粉にやられながら、
しずかに歩いていきたいことだった。

花満ちて生き延びられた感の有り。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?