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夏祭りの夜に。

この夏、新聞やニュースを観ていると、
あちこちで夏祭りが開かれて、多くの人で
賑わっているという。
コロナ禍で、祭りも中止になっていた。
久しぶりの再開を、皆が待ち望んでいたのだった。
7月さいごの土曜日、上田へ出かけた。
夏の恒例行事、上田わっしょいが、4年ぶりに
市街地で開かれるのだった。
それぞれの町の連が、わっしょいわっしょいの
音楽に合わせて市街地の通りをたてよこに
踊っていく。
どこぞの飲み屋で一献引っ掛けて、踊りのかたがたを
眺めて祭りの雰囲気を楽しむか。思案しながら
歩いていたら、犬を連れたおばあさんと小さな女の子に
出くわした。よく見たら、馴染みの寿司屋の萬寿の
お母さんと、孫のなおちゃんだった。
出会ったからには、今宵のひとときは萬寿で
過ごさなくてはいけない。お二人と連れ立って
そのまま暖簾をくぐった。
カウンターの隅に落ちついて、黒ラベルを飲みながら
見たら、日本酒の鎮座する冷蔵庫に、
祝甲子園出場、上田西高校のポスターが貼ってある。
先日、長野県予選の決勝の接戦を制して、切符を
手にしたのだった。
上田西、やりましたね。萬寿のご主人に声をかければ、
甲子園でも頑張ってもらいたいと愛想をくずす。
鯨のベーコンをつまみに地酒の亀齢を酌む。
上田の柳町にお蔵を構える岡崎さんの亀齢は、
人気が有りすぎて、とても入手困難な銘柄だった。
暮している長野市の飲み屋ではなかなか見かけないのに、
上田に来ると、この寿司屋でも、馴染みの蕎麦屋でも、
普通に冷蔵庫に置いてある。
つい注文してしまうのだった。しばらくしたら、
近所のマンションに住む飲み友だちが来てくれた。
小学校6年生の息子のお母さんで、
息子は友だちみんなと祭り見物に出かけたという。
友だちとつるんで出かけるようになったかと、
成長ぶりにしみじみした。
あさがおの柄の浴衣が好く似合い、鯵のたたきを
つまみに、佐久の黒澤の杯を交わした。
程好く酔って店を出れば、通りは連なる踊りの集で
盛り上がっている。大人から子供まで、笑顔の姿を
眺めていれば、
夏はこうでなくっちゃねと、こちらも楽しくなるの
だった。

夏祭りまずは寿司屋の一献で。




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