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同級生に

春めいて、朝の散歩を再開した。
ジャージに着替えて、いつものように
氏神さんの階段を上がれば、
里山も、見下ろす町なみも、柔らかな空気に
包まれている。静かな町の中を歩いていけば、
そこかしこで、走っている人たちとすれちがい、
長野マラソンの日がもうすぐとわかるのだった。
美術館裏の白梅を眺めて、
清泉女学院の前をすぎて行けば、市民プールが
すっかり取り壊されて、更地になった。
元オリンピック選手だった市長は、新たに
スケートボード場を作るという。
子供たちでにぎわうかなと、
広い敷地を眺めた。
その先の招魂社の階段を上がり、
長野の町が平和でありますようにと、手を合わせる。
当たり前の日常に、いつ何が起こるかわからない。
そんなことをつくづく感じる昨今の世の中だった。
およそ1時間の散歩で、体がほぐれるのは
気持ちが好いけれど、この春の花粉は、
いつもよりも手ごわい。
帰ってきて薬を飲んでも、なかなか
効いてくれない。
春もこれさえなければと、毎年思って
しまうのだった。
仕事場の掃除を終えて、朝刊をめくったら、
長野市副市長に、西沢正樹氏が就任と載っていた。
まじですか。
高校の同級生で、陸上部で、ともに
汗を流した人だった。
頭が良かったものの、秀でて成績がよかったという
覚えはない。副市長かあ。
凄い出世だなあと、ほとほと感心をした。
警官をしている友だちは、ただいま県警の
交通本部長におさまって、こちらも大した出世だった。
会社を起業して、たくさんの年収を稼いでいる
友だちに、大学の教授をしている友だちに、
県や市の職員として、市井のために働く
友だちもいる。
コンビニを営んで、気の利かないスタッフや、
態度のわるいお客に
へきえきしている友だちに、派遣の契約社員で
食っている友だちに、おおきな塾で先生をしている友だちや、
新興宗教にはまった友だちに、
酔っ払ってばかりいる、出来のわるい美容師もいる。
みんなそれぞれの暮らしをかさねてこの歳まで。
音沙汰の知れない友だちは、みんなどうしているのやら。
何年か前に中学校の同級会はあったものの、
高校の同級会は、40年近くやっていない。
懐かしい気持ちはあるものの、会えるも好し、
会えぬも好し。この歳になり、ひと様との出会いの執着も
失せてきた。幸い日々、恵まれた縁に囲まれている。
それで充分ありがたいことと、思っているのだった。

色気なら梅の香ほどが程好くて。

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