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美術館で。

ついこの頃、近所の長野県立美術館で、
信濃デッサン館展が開かれていた。
かつて、上田市の塩田平に、作家、窪島誠一郎が
開いた信濃デッサン館が在った。
村山槐多、関根正二、野田英夫など、若くして亡くなった
画家の作品を展示していて、5年前に閉館した際に、
収蔵作品を県立美術館に託されたのだった。
信濃デッサン館は、開館して間もないころに二度、
足を運んだことがある。
作品を拝見するのはそれ以来のことだった。見終わって、
階下の展示場へ行くと、長野県の小中学生の絵画展を
開いていた。地域ごとに並べられた作品を観ていくと、
色使いに構図、捉えた景色に、
いやいや、みんな上手だなあと、ほれぼれ感心して
しまった。子供たちの健気な気持ちが作品に現れていて、
気持ちが温かくなったのだった。歩いてすぐの場所に
美術館が在って、好い作品への余韻を抱えながら、
歩いてすぐの蕎麦屋で一献。まことに贅沢なことだった。
先日、上田市立美術館の山下清展へ足を運んだ。
大正11年に東京で生まれ、幼いころの病気がもとで、
知的障害になったという。
その後入学した養護施設でちぎり絵と出会い、
恩師の指導を受けて、才能が花開いたのだった。
展覧会や個展で多くの人の目に触れると、すぐに
人気が出たという。
養護施設を飛び出して長らく放浪していたものの、
放浪先で絵を作ることはなかったという。
旅先で観た景色を鮮明に覚えており、施設に戻ってきては
作品を仕上げていたというから、とてつもない記憶力だった。
作品を拝見していくと、当時の紙質なのか色質なのか、
時間の経過のせいなのか、貼り絵に派手な感じが見られない。
やや褪せた感じの色合いの作品が並び、
有名な「長岡の花火」も、むしろ落ちついた雰囲気が
感じられる。このたびの作品展では、貼り絵の他に、
油絵に水彩画にペン画も展示されていた。
どの作品も緻密に丁寧に描かれており、
集中力もまたすごいと目を見張った。
昭和46年、脳出血で亡くなった。このかたもまた、
49年の短い生涯だった。
並行して市立美術館収蔵の、村上早展も
開かれている。気に入りの版画家で、久しぶりに
拝見できたのもありがたいことだった。
どちらも四月初めまで開いているから、もう一度
来ることとする。
美術館を出て城跡公園に行くと、すでに白梅に紅梅が
咲いている。今年は桜の開花が早そうだな。
年々、春を迎えられることが、有難くなっているのだった。

頚椎に痛みかすかや梅開く。




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