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『差し出されたタオルの有り難さ。軽やかな優しさに想う。』

あ、乗り換える駅だった!

乗って来た急行電車がホームに止まってから
少し経って気が付いた。

バタバタととりあえず立ち上がり
ホームに降り立つ。

慌てて…
目の前の各駅停車の電車に乗り込んだ瞬間!

後ろから…
『落とされましたよ!』
目の前に差し出されたのは
私がさっきまで汗を拭いていたタオル。

『あ、有難うございます!』
「良かった、じゃ。」

黒一色のいでたち、
アーティスト風の青年が目に飛び込んでくる。

そして風のように、
私が乗り込んだ各駅停車の電車から降り、
また向かいの急行に軽やかに滑り込んだ瞬間、
電車のドアが閉まった。

わおっ!
間一髪。

感謝の言葉を言いながらも、
あまりの素早さに
何が起こったか分からなかった。

ゆっくりとこの数十秒を反芻する。

そっか。

慌てて私が立ち上がった時に
膝に乗せていたタオルが落ちて
気付かないまま
各駅停車に乗り換えてしまったのだ。

それに気づいて
急行がすぐに発車してしまうリスクも考えず
私を追いかけて
タオルを届けてくれた彼。

タオル一枚のことなのに、
急行に乗らなくてはならない自分のことは
二の次にしてくれた。

その優しさが
心にしみる。

そんな爽やかな優しさのバトンを
今度は私が誰かに渡したい。

清々しい気持ちの
素敵な朝になった。


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