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『相手の表情が、スッと変わった。勇気を出して言った言葉とは…。』



京都で市バスに乗った。

観光客が戻って来ているので、
めちゃくちゃ混んでいた。
人をかき分け奥に進む。

目の前には車椅子。
若い男の子が後ろで車椅子を支えていた。
座っているのはお父さんだろうか。

「次の停留所で車椅子の方が降りられます。」
運転手さんがバスのお客さんに伝える。

間もなくバスが停まった。

『何かお手伝いしましょうか?』
車椅子の若い男の子に言おうとした。




私も東京で
車椅子の姉に付き添って電車に乗ったことがある。

姉は終始、心配のしどおしだった。

車椅子のせいで場所をとってしまって
周りの人に迷惑をかけていないか?

車椅子の乗り降りで電車の停車時間が延びて
急ぐ人をイライラさせはしないか?

とにかく、
車椅子に乗っている人も
押している人も、
いつも周りに気を遣って
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

そんな過去の記憶がよみがえる。




きっと、
このバスに乗っている車椅子の親子も
そんな気持ちだろう。

こう言う時、
周りの人から気遣いの声をかけて貰えたら
どんなにほっとすることか…
自分の経験上、そう思った。

『なにか…』
私が声を出そうとした、その瞬間。

バスの運転手さんが、
スタスタとバスの降り口近くにやって来た。

降車パネルをテキパキと開き、
「お待たせしました。どうぞ!」
と言うや否や、車椅子を押す少年を手伝って
ささっと無事に降車させ、
何事もなかったように、
運転席に戻って、すっと座ったのだ。

ひゃあっ!
手早い。
そしてスマート!!

お客さんをそこまで待たせず、
あっという間に発車した。

わおっ!
これって凄い。

何より、
お客さんに迷惑をかけないことで、
車椅子のお父さんも少年も安心したに違いない。

そして、
何事もなかったように
普通にバスの停留所を出発できた。

その光景は心のすくものだった。




そのあと、
目的のバス停に着いて降りる時…

ちょっと勇気を出して
『先ほどの対応、とても格好良かったです。』
運転手さんに言ってしまった。

お節介な人だな、と思われたらどうしようかと
不安だったが…

運転手さんは、
はにかむような表情を見せたあと、
笑顔で
「有難うございます。」と言ってくれた。

走り去るバスを見ながら
とても清々しい気持ちになった。








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