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過去の思い出では終わらせない〜ライブ映画「チェッカーズ 1987 GO TOUR at中野サンプラザ」感想〜

年齢を重ねるにつれ、「昔はよかったな」と思うことが増えてきた。
そして、その思い出が楽しければ楽しいほど、過去にとどまってしまい、戻ってこれなくなりそうになる。

期間限定で上映されているライブ映画「チェッカーズ 1987 GO TOUR at中野サンプラザ」を観てきた。

私にとってチェッカーズは、「これ以上好きなバンドはない」と言い切れるほど、愛してやまないバンドだ。

1983年にデビュー、翌年にはシングル3曲が同時ベストテン入り、ヘアスタイルやファッションにまで影響を与え、社会現象を巻き起こした。

1992年に惜しまれつつも解散したが、昭和ブームの到来や周年が重なり、最近何かと話題になることが増えていてうれしい。

「チェッカーズ 1987 GO TOUR at中野サンプラザ」の話に戻すと、1987年当時、私は高校3年生だった。

このGO TOURは、春、夏、冬とツアーが組まれていたが、私が参加したのは、春ツアーだけ。6月1日の神戸公演を最後に「受験が終わるまではチェッカーズ断ちをする!」と親に宣言していたからだ。

結果、志望大学に進学できたのだが、ライブに行けなかったことは、ずっと心残りだった。

37年越しにそのライブを映画館のスクリーンで観られるなんて!
高校生に戻った気分で劇場へと向かった。

一点の曇りもない頃のチェッカーズ


1987年5月、アルバム「GO」がリリースされた。

アルバムをリリースするたびに、メンバーが手がけた楽曲の割合が増えていき、5枚目の「GO」で、ついに念願の全曲メンバーオリジナル、セルフプロデュースを実現したのだ。

GO TOURは、このアルバムを引っ提げてのツアーだった。

そんなノリに乗っていた時期のチェッカーズの姿が、スクリーンの中にあった。一点の曇りもなくて、まぶしかった。

チェッカーズがこの先どうなるかを知っているから、このまぶしさが切なくもあった。

2022年に観た、解散を目前に控えたFINALツアー最終日の武道館ライブの映画と比べると、メンバー間に漂う空気の違いを感じずにはいられなかった。

規格外の魅力にあふれたバンド

チェッカーズのライブパフォーマンスは、当時の自分には当たり前すぎて、そのすごさを理解できていなかったけれど、改めて見てみると、規格外の魅力にあふれていた。

まずは、全員歌えるグループであること。

メインで歌う曲が多いのは、郁弥くんだけれど(ここはあえて郁弥くん呼び。ソロになってからは藤井フミヤで活動)、残りのメンバー6人もそれぞれリードボーカル曲を持っている。
さらに、アカペラで、7人の見事なコーラスを聴かせてくれるバンドでもあるのだ。

ダンスでも見せて(魅せて)くれること。

ボーカルの3人だけでなく、ギター、ベース、サックスの3人も、「演奏大丈夫なの?」と心配になるくらいに踊る。振付師がつけたようなキレッキレの洗練されたダンスではないけれど、彼らにしか出せない味があった。

歌やダンス以外でも楽しませてくれること。

MCでのメンバー同士の掛け合いが面白いのはもちろんのこと、フェロモン系と言われた郁弥くんの発言にどぎまぎさせられた。
だって突然、「時間とタイミングが合えば、今度みんなキスしよっか?」なんてさらりと言ってしまうのだもの。

メンバー紹介でさえ、ただの紹介に終わらせない、常に観客を楽しませる仕掛けがいっぱいだった。大がかりな演出ではないけれど、自分たちで作り上げた、型にはまらないパフォーマンスは、毎回心を躍らせてくれた。

メンバーが1人旅立ってしまった今、叶わない夢だとわかっているけれど、できることなら、もう一度、チェッカーズのライブを生で観たい。

1987年から2024年へと続く道

チェッカーズの思い出に浸ると、過去から抜け出せなくなりそうになる。でも今回は大丈夫。

このGO TOURで披露されている楽曲の中には、現在開催中の、藤井フミヤさんの40周年ツアーで歌われている曲がある。

だから、映画の終盤、アンコールで歌われているそれらの曲を聴きながら、2024年に帰ってこれるのだ。フミヤさんが歌い続けてくれていてよかったと心から思う。

今月、フミヤさんのライブに行く。
40周年ツアーに参加するのは3回目。でも、前の2回とは全然違った気持ちで、フミヤさんの歌を聴くことになりそうだ。

最後に、チェッカーズを好きだった人も、チェッカーズを最近知った人も、ぜひ劇場でこのライブ映画を観てほしい。きっと、心も体も踊る2時間になること間違いなしだから。


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