タイプ:ワイルド!〜キミと同じ時代を生きられてよかった〜


夕焼けで世界がオレンジ色に染まる頃、
友達と「またね!」と分かれて帰路に着く。
「ただいま!」と帰れば「おかえりなさい」
とお母さん。
泥だらけの体を促されて風呂に入れば、
兄弟とお湯をかけ合いふざけ合う。
温かい手料理が並んだテーブルを前に、
今日あった楽しい出来事が次々口からあふれ出る。
「冷めないうちに食べなさい」
なんて言われながら。

ノスタルジック!
平成初期の小学時代ノスタルジック!
現代風に言えばエモエモのエモである。
あまりの懐かしさに冒頭から涙が溢れ出る。

(ノスタルジック:遠い懐かしさを感じさせる、得がたいもの、失われたものなどに対して、心惹かれ、思いを馳せ、憧れや恋しさを抱くさまなどを意味する語。(weblio辞書より引用))


平成元年、女。
ポケットモンスターは私が小学校入学と同時に始まったアニメだ。

サトシの冒険が終わると聞いて久しぶりにアニメ を観た。

最終章「めざせポケモンマスター」の旅のお供は
タケシとカスミ。
まさに小学時代をサトシと一緒に駆け抜けた我々 世代に向けたエンディングだと感じた。

全11話で何を展開させてどう着地するのかと思えば、どれも一話完結いつもの何気ないポケモンとの出来事ばかりだった。

そして最終話「虹とポケモンマスター」
冒頭で述べたとおりとにかくノスタルジックで、 マサラタウンでのサトシの生活は、まるで小学時代の自分の思い出そのものなのだ。

朝お母さんに起こされて、
パジャマを着替えて家を出る。
ポケモンを見せてもらう約束、
友達(ケンジ)との何気ないやりとり、
ヒトカゲとかくれんぼ、
ライバル(シゲル)の問いかけ。

冬にはスケートをして、
夏にはスイカとかき氷を食べる。

「今日はどこへ?」
「う〜ん、わかんない!」
「晩ごはんまでには帰るのよ」

童心に帰っちゃうって。
もう完全に気持ちは小学時代のあの頃だ。

お母さんがいて、友達がいて、
夢中になれる遊びがあって、
遊び疲れたら帰ってくる場所があって。
なんて幸せな日々だったのだろうと強烈に思わせる。

気まぐれに草むらに寝そべってそのまま眠って。
雨で目覚めて木陰で雨やどり。
黒い雲が流れる暗い空、ポツポツ葉に落ちる雨音、自分と同じく雨やどりにくるポケモンたち。

「チャンピオンになったキミは、
どれだけポケモンマスターに近づけたのかな?」

小学生のころ、サトシの言うポケモンマスターは「四天王を倒してチャンピオンになり、ポケモンを151種類全部ゲットすること」だと思ってた。
ゲームボーイの赤緑青がそうだったからだ。

でもそうじゃない。
そう思わせてくれたのは新無印のダブル主人公
ゴウだ。
彼は「すべてのポケモンをゲットしてミュウにたどり着く」夢のためモンスターボールをガンガン投げる。

一方サトシは不必要にゲットしない。
たくさんのポケモンと友達になりこそするが、

必ずしもゲットするわけじゃない。
心を通わせた思い入れのある子だけ仲間にしている印象だ。
思い返して見れば昔からそうだったのかもしれない。

「オレ世界中の全部のポケモンと友達になりたい。それがきっとポケモンマスターってことなんだ」

強烈な出来事がきっかけで夢を強く決意するんじゃなくて、日常を過ごす中で見つけた気づきからポロッと夢を発見したって感じ。

なんとなく気づいてた。
それが本人の口から初めて言語化された。

ああこれはサトシが自分の夢の本質はどこにあるのかを見つける旅だったんだな。

桜並木。
ーつぼみがいつか花ひらくようにユメはかなうもの
ああサトシの夢は叶うんだな。
(ED直後のポケモンベストのCMがまた最高だった)

分かれ道。
ー「どこへ行こうか?」は「どこへだって行ける」でしょ?
ああサトシの旅はまだまだ続くんだな。
それを私たちはもう見ることはできないけど。

ボロボロのスニーカー。
あれ、なんかこんな歌なかったっけ?

かーらーの「タイプ:ワイルド」
もおおおおおお、懐かしすぎ。
何十年ぶりに聴いたはずなのに歌詞もメロディーも全部覚えてて、このあとお風呂で何回も何回も歌った。

小学時代こそサトシと併走してたけど、
中学高校大学社会人とずっと遠ざかってた。

ピジョンがピジョットに進化したことも、トキワの森で別れたことも忘れてたし、今回が何年ぶり感動の再会だったことも知らなかったけど、

それでも今作を通じて、初代のスタッフが私たちポケモン第一世代に伝えたかった感情は全部伝わった気がする。

人生の幸福度は幼少期の両親との人間関係。
「子供の頃どのくらい遊んだか」が重要。
ハーバード大学の研究報告。

お母さんがいて、友達がいて、夢中になれる遊びがあって、遊び疲れたら帰ってこれる場所がある。
ああなんて幸せな日々だったのだろう。
こんな思い出のある私の人生はとてつもなく幸福なものなんじゃないだろうか。

ー君はいつのまにやら大人になっちゃいないかい?
ーあの頃の思い出が君を探しているよ

「昨日のポケモン観た?」
次の日教室で語らった友達、
中学でトラブって疎遠になっちゃったな。
成人式で顔を合わせて「佐藤さん」「鈴木さん」なんてよそよそしく苗字で呼び合ったな。
あの頃はあだ名で呼び合ってたのに。
あの子も今日のポケモン観たのかな?
私と過ごしたあの日々を思い出してくれてるかな?
今なにしてるんだろう。
あの子と今日のポケモンについて語りたい。

サトシと併走したあの頃は私の一生の宝物だ。
思い出させてくれて本当にありがとう。
同じ時代を生きられて本当に幸せだった。

最高の最終章で最高の最終回だった。
サトシの旅を最高の形で締めくくってくれて本当に感謝だ。ありがとう。大好き。

サトシとポケモンにもらった宝物を胸に、
私の人生の旅はまだまだつづく。

つづくったらつづく!


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