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笑って泣ける、愛すべき男。

ドジでおっちょこちょい、お調子者で空回りしがち。だけど憎めない。ここぞという時にとんでもない活躍を見せ、見る者を一気に感動させてしまう男。あいつが来るってだけで泣きそうになる、それが夏木陽太郎だ。




私はあまりマンガを読まない。

でも2つだけハマっている作品があって、

ひとつは『キングダム』。

もう一つが『GIANT KILLING』だ。


今日は『GIANT KILLING』のお話を。

昔、「サンフレッチェ好きならハマると思うよ」とサンフレッチェファンに勧められたのがきっかけ。読み始めてすぐ、1巻を読み終わるまでに泣いた。電車待ちのホームで泣いた。よく覚えている。

『GIANT KILLING』=ジャイキリは、ジャンルで言えばサッカー漫画だ。でも私はサッカーのストーリーというより、各登場人物の人間っぽさが好きだ。彼ら彼女らの個性豊かなキャラクターと、そのひとりひとりの心理状態や変化、人間性が描かれていて読んでいて引き込まれてしまう。


今回おすすめするのが「夏木陽太郎」という男だ。彼は主人公ではない。物語の最初の方は登場しておらず、途中でケガから復帰するらしい、という入り方だった。お、スーパーな選手が登場か!と思っていたら、監督にめっちゃ派手に身振り手振りを交えてアピールするしお調子者っぽくて期待してたのと違う、、と拍子抜けだった。プレーではなく、その他言動で目立つ。それが原因ではないけれど彼は試合になかなか出られず、出ても気合が空回り。簡単なプレーをミスする。普通にミスする。でもだんだんそんな夏木がかわいく思えてくる。だんだん、夏木に笑わせてもらうことが増えた。いいんだ、私の中でジャイキリはサッカー漫画というより、ヒューマンドラマだ。一人くらいこういう選手がいてもいい。夏木は笑いを取ろうと思って笑わせてくれるわけではない。本人はいたって真面目なのだ。大真面目なムードメーカー。天性の才能である。

そしてある日、夏木はとんでもないスーパープレーを見せる。簡単なプレーでミスを重ね、チームのエースからパスをもらえなくなっていた夏木がついに!! ここで覚醒した、と書かないのは夏木はこの後もこんな感じなのだ。簡単なプレーのヘマはなくならないが、ここぞというときにチームを救うゴールを決める。それが夏木陽太郎という男だ。ある意味常に覚醒している。




そして夏木はヘマとスーパーゴールを繰り返しながら代表にまでなってしまう。まじか、夏木陽太郎。夏木が代表に入って嬉しかった。多くの読者が喜んだに違いない。しかし夏木、代表でもスーパーヘマをやらかす。オーバーヘッドバックパスは後々まで話題にのぼる。なかなか試合に出られない彼。でもね、満を辞して登場するのです、ああ、泣きそうだ。


場面は1点ビハインド。失点と同時に長身FWがケガで交代を余儀無くされる。試合をテレビで観ている夏木が所属するJリーグチームのスタッフたちの会話は、交代で次に誰を出すかの議論になる。岩淵か桐生か、、でも高さがない、、。読んでいる私もその会話に違和感を抱かなかった。




「え?なんで?」

と口を開くのはチームを指揮する監督。「高さもあって速い奴ならベンチにいるじゃん」「お前らだって知ってんじゃん」。ああ、だめだ、泣く。何回読んでも泣く。

ここで読者も気づくのだ。うんうん、私も知ってるよ!!夏木だ!!!まじか、ここで来るか夏木! 所属チームのスタッフにも忘れられるなんて、なんてかわいそうな夏木陽太郎。そんな夏木がくる。ああ、泣く。

この後、シーンはピッチに戻る。今度は今まさに代表の試合に出ている夏木所属チームの選手が、“3連続失点してFWもケガで交代の最悪の状況、でもこの状況を知っている”、と思いを巡らせる。はい、ここで登場するのが『GIANT KILLING』主人公の椿くんです。椿、ごめん、今回の主人公は夏木なの。主役じゃなくてごめん。 そして椿の回想は続く。“ああそうだ”と。“あの絶望的な状況から夏木さんが2ゴール決めて、、”とプレーが切れて椿は交代選手を見る。


おおおおおおおお!!!!夏木ーーーーーーーーーーーぃ!!!


夏木がそこにいた。涙腺崩壊である。いよいよ彼がこの重要な場面でピッチに入る!というところでこの巻は終わる。最後の何ページか泣きっぱなしだった。



最新巻ではこの続きが描かれている。夏木、やってくれてます。珍プレーか好プレーかはぜひ読んでほしい。

その最新巻は55巻。いきなり最後の方だけ読んでもこの夏木の感動がちゃんと伝わらない気もするけど、とにかくぜひ。


GIANT KILLINGってタイトルだけ聞くと、壮絶な下剋上物語で成り上がっていくってイメージをしたんだけど、もうなんというか読後感は爽快なんだ。主人公の椿のプレーだけじゃなくて精神的な成長もさることながら、チームの選手スタッフ、敵チームの登場人物までが人間味があってすごくいい。笑いも適度に散りばめられていて、笑ったり泣いたり結構忙しい。

サッカー漫画だけど、正直サッカーを知らなくても十分に楽しめる。戦術でGIANT KILLINGするシーンも序盤は多いけど、そんなの全然どうでもいい。いや、これは言い過ぎだ、ごめんなさい。しかしそう思ってしまうくらい、魅力的な人間がたくさん描かれている。


こんなにあいつがいるってだけでワクワクさせてくれる選手がいるだろうか。珍プレーも好プレーもどっちも期待させてくれる、どっちに転んでも最高なんだ、夏木は。

夏木だけじゃない。読めば一人はお気に入りキャラが見つかると思う。お気に入りじゃなくても、みんなをそれぞれ好きになる。いい味出してるんです、みんな。笑って泣けるジャイキリ。サッカーに興味ない人にぜひ読んでほしい。最近あんまり笑ってないなー、泣いてないなー、という方にオススメしたい作品です。



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