好きなものはキャンディみたいに消えていく

ぼくが今唯一好きだったもの、バンド「赤い公園」の作詞作曲とギターを務めていた津野米咲(つのまいさ)さんが、29歳になったばかりの10月18日、亡くなった。自殺とみられるらしい。

ここ10年、「好きな曲」はあったとしても、アーティスト単位で「ハマれる」音楽に出会えてなかった。唯一自信を持って好きと言えるアーティストは赤い公園をおいて他にいなかった。その絶対的な中心人物が亡くなった。

ぼくが好きになったものは、呪われたようにすぐに遠ざかってしまう。気がする。


好きになったラーメン屋はすぐにつぶれる。

大好きな友人も恋人もすぐに遠くへ行ってしまう。

音楽業界もそうだった。

最近だと、きのこ帝国もMrs.GREEN APPLEも、好きになって聴き始めた瞬間に活動休止になった。乃木坂46の中田花奈さんも、ラジオ「沈黙の金曜日」を聴き始めた途端に卒業してしまった。

自意識過剰か、マーフィーの法則か、そう評価するのは簡単だが、確実に、何かを好きになると、すぐにその大好きな何かとの別れに直面してしまうのだ。


そして、それが、ついに笑いごとでは済まされない領域に踏み入ってしまった。



音楽に興味のない、その他のことにも対して興味のないぼくが唯一大好きだった、バンド「赤い公園」の作詞作曲・ギターの津野さんが、自ら命を絶ってしまった。




ぼくが全世界の他の何にも興味をもてない中、唯一、彼女が作る曲、彼女が奏でるギターを楽しみに生きていたのに、それが、プツっと、一瞬でたち消えた。

実際に会ったことすらない、薄く細くひ弱な糸でしか繋がっていないはずなのに、その糸から感じる引力の重さに、ぼくは今抗いかねている。





どうしてぼくが好きになったものはすぐに消えてしまうんだろう。

キャンディのように一所懸命に口の中で転がすから、すぐに溶けて無くなってしまうんだろうか。

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