図書館紀行No.1福島県下郷町 グリーンプラザ・田沼文蔵記念館

利用者は自分ともう一名。
図書館にあるべき本来の静かさ。だれも呼吸をしていないかのような静穏。
郷土資料や貴重な資料が南側の窓のすぐ横に置いてあるのが非常に気になるが、まあいいだろう。
いつもならその郷土資料を手に取るが、新刊スペースに目が行った。
『風間教場』長岡弘樹、小学館。
木村拓哉主演でドラマ化されたことで知った小説。「最近の小説」を読んでなかったので、補給。

主人公は警察学校教官、風間。記憶力、観察力、推理力に長ける。半年間の訓練で、学生を落伍者ゼロで一人前の警官にすることを目標に奮闘。
妙なキャラ付けがあるわけでもないのに、各人物がセリフだけで判別できるほど巧みにかき分けられている。小説の基本だろうが、実際に書くと難しい。
推理小説を読む際の手探りで道を探すようなの読みごたえ。文章から想起される警察学校に満ちているだろう緊張感と初々しさと合わせて非常に心地良い。

文章はシンプル。無駄に難しい言葉や特殊な比喩がほとんど使用されていない。僕はこういう文が大好きだ。

「失敗体験というものにはやはり、人の関心、興味を惹きつける不思議な力があるものだ。学生の前で失敗することもまた大事。」風間の上官あたる久光校長から風間へのアドバイスは、職場の出来の悪い後輩への指導の参考になる。かなあ。
この場面ではなく、久光校長から風間、風間から助教の優羽子へと指導技術や思いが受け渡されていく様が描かれる。こういう「継承」の物語は、ぼくの最も好きなジャンルだ。

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