見出し画像

読書感想:心が分かるとモノが売れる

読んだきっかけ

先月参加したアドテック東京のセミナーの中で、鹿毛さんが登壇したセミナーを聴講。テーマは「パーパス」だったが、鹿毛さんのひとつひとつの言葉はひとつひとつが芯を食ったような重みと分かりやすさがあった。エステーと言えば、個人的にはCMの面白い会社、消臭力や米唐番を出している会社、というイメージだったが、鹿毛さんがどうやってお客さんと向き合って来たのだろうということに興味をいだいた。

個人的な今期のテーマとしても、「お客様理解」を深めることを目標にしており、そのテーマとしても合致していた本書を読んだ。

総括

まず本書を通じて感じたのは、「借りてきた言葉を使っているようじゃだめだ」ということ。一冊を通じて、様々なエピソードとともに鹿毛さんがこれまでどうやってお客様と向き合ってきたかがまとめられているが、冒頭の方で自分のスタンスを反省させられた一節がある。

マーケティング手法がすべてを解決すると思って仕事を進めたときに、人は知らず知らずのうちにお客様を「生身の存在」ではなく、無機質なデータの塊に置き換えて、理解したつもりになってしまう。

第一章マーケティングとは「心」である マーケティングの出発点「4P理論」「STP分析」P.15より

頭の中では、お客様のために~と思っていても、自分は果たして本当にお客様を生身の存在として考えられていただろうか。

PRの「メディアパブリシティ」の領域で言えば、どうしても最大公約数的な考え方が必要になる。例えばテレビのニュース番組で紹介されるには、様々なニュースとの比較検討で勝ち抜かなくてはならないが、1人の生活が変えてしまうことよりも、1,000,000人の生活に影響があることのほうが当然ニュースとしては優先されやすい。

どうすれば番組担当者に話を聞いてもらえるのか、という場面ではある程度デフォルメ化された情報やステレオタイプ化した情報の伝え方は役に立つ。特定の特徴を持った人の集合体を作って、ラベリングする手法などはその典型だ。アクティブシニアとか、リケジョとかそうした言葉をイメージしてもらえれば分かりやすい。

ただ、実際の企業と消費者のコミュニケーションの現場では、そのスタンスを自分が向けられたらどう思うだろうか。

文中に「老人の臭い」をテーマとした、「心を汲み取れていないマーケティング」の例が登場する。ここでは、老親の介護に悩む家族がいると仮定し、排泄物の臭いを消臭するニーズに対する一見正しそうなコミュニケーションが書かれているが、これまで自分もクライアントに対してこうした「一見正しそうな」ことを提案してしまっていたのではないか、と大いに反省した。

文中で繰り返し出てくる、「売上はお客様を喜ばせた総量」というフレーズは、分かった気にならず、常に自分のインサイトと紐づけてお客様がどう感じているのかを考えながら、仕事に向き合わねば、と強く感じた。

学び

自分自身のインサイトを導き出す力をつけることで、他者のインサイトを探し当てる力がつくということです。逆に言うと、自分のインサイトも分からないのに、他者のインサイトを理解するというのは到底無理な話だということです。

第4章自分の「心」に潜り、一流の消費者を目指そう ステップ3心のフタを開ける力をつける P.90 より

最近、行動経済学の本などを読んで、「人は必ずしも合理的な選択をしない」ということは理解しているつもりだったが、自分の行動の中に「非合理」なものがどれくらいあるのかはいまいち理解しきれていなかった。

ただ、この4章の始めに登場する、「24時間以内にとった行動」「その前後の出来事」「昔の出来事を詳細に思い出してみる」というワークは自分の非合理性を理解するのに非常に役に立った。

一朝一夕で身につくものではないと思うが、こうしたトレーニングを続けて一流の消費者を目指していきたいと思う。

この記事が参加している募集

読書感想文

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートは、複業ライターとしての活動費に使わせていただきます!