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読みました「コモンズ思考をマッピングする」


神保町でフリーマガジン「じじ神保町」を制作していた頃に知り合った、需要研究所の山本眞人さんによる著書「コモンズ思考をマッピングするーポスト資本主義的ガバナンスへー」(BMFT出版部)。

近年、日本でもコモンズという言葉はよく聞くかと思いますが、重要な先行研究について、残念ながらまだ日本では翻訳されていない本がいくつかあるようです。本書では、その内容を踏まえた上で理論や実践がまさに地図上にマッピングされるように紹介されています。

耳馴染みのない人名や言葉が多く出てくると難しく感じるかもしれませんが、山本さんの文章は伝えるのが難解なはずのことであっても落ち着いて読むと必ず理解することのできる文章です。

ぜひ、一緒に読む仲間が増えてほしいなと思います。(読んだ、買った、興味があるという方はぜひお教えください!)

序章はこちらから読むことができます。日本でのコモンズへの関心の高まりについてのところなど、ここだけでも大変興味深いです。
https://kenji-world.net/commons/?fbclid=IwAR1u22bXCyyvYBw0gYZIZJF7nmdrRa4HTbs6y7mQc29qX2jgiClSkHQ7ugU

ユーラシア大陸を旅し、世界各地の人々と現代のフォークソング、オペラを編んできた音楽詩劇研究所主宰河崎純さんによる帯文を引用します。
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宮沢賢治やM・エンデが描いたように、国家に先立つ共同体は広場か円形劇場だ。本書が誘う先には、そうした場で今も響く即興的な声が聴こえる。

文化人類学「暮らしのアナキズム」著者の松村圭一郎氏による帯文はこちら。
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コモンズをめぐる多彩な議論を探求し、国家と市場、公と私、その境界領域に広がるコモンズこそが、私たちの手で世界の基盤であることを教えてくれる。

追記▽▽▽
伊藤亜紗氏による書評が毎日新聞に載りました。
https://mainichi.jp/articles/20220827/ddm/015/070/016000c

伊藤さんの書評は、牧草地に牛を放牧するとき、その牧草地が個人のものである場合と、「みんなのもの」として共有していた場合の違いを考える場面からはじまります。(「コモンズの悲劇」G・ハーディンによる説。「コモンズ思考をマッピングする」に登場するE・オストロムがこれを批判している)

先日、友人たちとの読書会でもこちらの本を紹介しました。コモンズという言葉を聞いたことのない友人に説明するのは少し難しかったのですが、企画している人はイベントを企画するのが好きな方だったので興味を持っていただけたようです。

イベンターの他にも、教育に関わる方、おもしろい遊びのルールを真面目に考えたい方、Wikipediaのような誰でも参加可能なプロジェクトに関心のある方、世界は多分どんどんまずいことになりそうだけれど希望を見つけたい方、声を届けるために連帯が必要だと感じている方、路地が好きな方、あらゆる分野の方が読んで発見のある本だと思います。

どの章も重要ですが、例えば独立運動で知られるカタルーニャ地方で受け入れられた地域通貨の話が登場したり、国家なき社会における降霊会と夢幻能の比較の話があったり、さいごの章では「負債論」や「ブルシット・ジョブ」で知られるD・グレーバー氏とD・ヴェングロー氏による「The Dawn of everything」(翻訳されていない!)の概要紹介があります。これもとても興味深かったです。

とにかく濃い、ので読み進めるのは簡単ではないと思いますし私も4年ほど山本さんから直接お話をお聞きしておきながら、まだ理解しきれていない部分があってお恥ずかしいのですが、だからこそもっと様々な知識を持った方に読んでいただけたらきっとさらに新しい発見があるだろうと感じます。

また、何かに向き合うときに、こちらの中で紹介されている小規模(と言うほど小さくない)でも確かな実践の例の数々を参考にしたいと思います。

こちらのサイトMapping Commons Thinking
から本についてのメッセージ、評を誰でも送ることができます。現在、あちこちに芽生えているコモンズ的活動について気づいたものを送るフォームもあります。


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