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サブカルの帝王、ロックスター、そして軍艦

黒帯会議に行った

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 昨日は今日は今年初頭の発表以来、ずっと待ち望んでいた”黒帯会議”があった。絶大なるカリスマの先輩、金属バットと黒帯に混じることになった軍艦はさぞ緊張することだろうと想像しましたが、舞台前の写真は意外にも楽しそう。どれだけ鋼メンタル?

 こんなレアな構成のライブを観られるのは人生に一度きりだなと思い、即決でチケット買った。はるばる会場に向かう道中もアドレナリンがドバドバ。その勢いで電車内でガレバンでジングル作って某ラジオに送りつけてしまった。今聞き返すとはしゃぎ過ぎてる感じが出ててめちゃ恥ずかしい。

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 プロになるまであと2日残したNSC生、軍艦へのまさかの黒帯会議のオファー。オープニングで『女子高生とセックスしちゃう感じ?』『包め包め』とやりあう黒帯のお二人に大いに笑う。ライブが始まっても、まだ脳が現実についていかない。ゆるく長いお笑いファン人生の中で”NSC生として”こんな人気が出たコンビというのも過去に知らないし、こんなスターと共演することになったコンビももちろん知らないからだ。こんなライブを企画すること自体狂気の沙汰であるのに、それを微塵も感じさせない軍艦のネタの凄まじさといったら。これは現実か?

 内容に軽く触れると、オープニング、各コンビネタ2本、軍艦への質問、エンディングトークの1時間構成。 黒帯は『高速しりとり』『トムクルーズの大阪案内』(アリオ鳳とか地名が出てくるやつ)。軍艦は『宇宙人』と、新ネタの『魚になった相方を飼う』。金属バットは『墓地の場所が分からん』『首叩くと意識失う』。関西の芸人さんに疎くて、どれが既出とか新ネタとかネタの一般的な呼称とか知らなくてごめんなさい。

ルーキーと大先輩の邂逅

 三浦マイルド氏を始めとするマイルド軍団の構成員及び金属バットのファンである自分は、軍艦や10億円などの”同じ匂い”のする芸人さんが、金属バットと共演する日が来ることを期待せずにはいられなかった。どのように絡むのか…喜ぶのか、緊張するのか、平然としているのか…金属バットと似たような雰囲気を纏ったルーキーが、どんなスタンスで先輩方と接するのかが気になって仕方がなかった。結局、10億円も軍艦もそれぞれ別個に共演することとなった。これは2組の実力が誰の目にも明らかなことの何よりの証明になったと思う。

 この時の憧れの芸人との共演にはしゃぐ10億円は泣きそうなくらいエモかった。それに対して軍艦は、大きく気持ちを動かすことはなく、先輩を無理に立てることもせず、謙虚にしつつ凄まじいポテンシャルも見せつけていた。これは夢なのか現実なのか。ぼやーっとした気持ではあるけれど、出来れば死にたくはない。

書きたくても書けなかった軍艦記事

 こんな風に、noteに宣伝記事を書く、書くと今まで何度も言ってきて、念のためチケット報告をする際奥野さんに宣伝記事を出してもいいか確認して『全然いっすよ』と許可まで頂いていたのに、結局、何ヶ月もの間、宣伝記事を書くことはなかった。どうしても書くことが出来なかった。

 別に”軍艦の良さを独り占めしたい”みたいな気持ちがあるというわけではない。そもそももう知られちゃってるしね?ただ、SNS上の軍艦フィーバーを見ていたら、できるだけ分かりやすいキャッチーな言葉を選びながら、軍艦の漫才の良さを伝えることも、なるべく私情を交えない客観的なライブレポートを書くことも、全く必要ないし、私には出来ないな、と思ったのだ。宣伝なんてしなくてもみんな分かってる。むしろ書くことで”汚してしまう”というか、ふたりの足枷になるのではという気さえした。

 だからこれは宣伝記事ではなく、ただの日記として書いている。何も考えていないから、私情をガンガン交えるし、意味の伝わりづらい言葉も使う。自分が個人的に好きな洋楽のアーティストのこととか、サブカルのこととかも書く。客観的で分かりやすい情報のまとめを期待していた方には本当に申し訳ないです。他を当たって下さい。

はじまりはM-1三回戦の動画から

 知名度がないけど魅力がある芸人さんを見つけるのは好きだけど、NSC生にハマるということは今まで無かった。だからほとんどの人の例に漏れず昨年の三回戦の動画で軍艦を知った。初見の印象は、多分ほとんどの人と一緒だと思う、『バンドマン』。バンドマンの二人の、面白い会話を聞いている感じ。とはいっても、2021年M-1時点では梅野さんがボケ、奥野さんがツッコミをしていたから、今の素の会話っぽいスタイルよりももう少し型の決まった、構成のしっかりした物語に近い漫才をしていた(今が構成しっかりしてないとかそういう意味ではなく、今よりかっちりしていた、という意味)。

 M-1で軍艦の評価が高かったのは、その構成力を認められたという側面もあるのかもしれない。実際、準々決勝のご褒美として、道頓堀ZAZAに金属や見取り図やももなどの名だたるメンバーと共に漫才した時も、他のメンバーたちにまったく見劣りしないどころか、失敗をアドリブでハプニング笑いに変える機転まで見せていた。

 …なんていうか、もし自分がなんの武装もせずにしゃべりだけで舞台に立った、と想像してみればわかると思うけど、そういう機転の利かせ方ってそうそうできるものではない。周りが凄い人揃いだったら尚更。大勢の視線がある中で、覚えたネタをそのまま披露することだけでも、声が震えるだろう。声なんか出せなくて当然。アドリブなんて雲の上の世界。前の出演者のネタをイジったり、アドリブで笑いを取る大先輩は、芸歴を重ねて、舞台慣れしているから出来るわけであって。

 でも一年目でそれが出来るということは、それだけ強い自分軸を持っているということだ。それから舞台やオフでの会話を含めた、バンドマンとして活動していた経験が活きているということ。その二点が軍艦の最強の武器であり魅力だと思う。

 上記のインタビューでお二人が応えているように、二人は軽音楽部で出会い、梅野さんも奥野さんも、音楽性の違いはあれど日常的に人前に立っていた人たちだ。(お二人の音楽性は各自のTwitterで見られるので是非です。)”大勢の視線”に恐怖を感じている様子が無い。奥野さんが『4分の漫才すら長くて見れない』と言っていたように、M-1やお笑い番組を見たりすることも殆どないらしいから、共演するベテランがどんな人たちだろうと、特に気にすることもない。それが鋼の舞台度胸の出所なのか。

(すごく即興的でリズミカルで音楽的な軍艦のネタ。癖になる。いつもお後がよろしくて最高)

ただ、幸せに生きていきたい

 今日の黒帯会議では、二人が『今後どうなっていきたいか』という話題になった。お笑いファンが知りたいのは、黒帯さんが言っていた通り、この二人は『マイルド軍団に入ってインディーズ路線を突っ走る』のか、『劇場に入ってキラキラしたスター街道を突っ走る』のか、どちらなのかということだと思う。

 こういうことを聞かれるたびに二人が示し合わせたように言ってきたことは『月収15万円くらいで、幸せに生きていきたい』ということだ。寄席単価を上げて、週2勤務、あとは好きなこと(音楽とか友達と遊んだりとか?)をして過ごしたいらしい。

 金属バットのモチベーションもそこにある。なるべく働かずに最低限の暮らしで生きていくために、M-1で名を売り、寄席の単価を上げようとしている。お笑いファンでもなければ、金属バットのラジオも聞いていないと思われる軍艦の二人が、不思議なことに金属バットとまるっきり同じことを言っているのだ(昨日の黒帯会議でも、二人のスタンスに金属バットは『15万あれば生きていけるもんな』と大いに共感を示していた)。なんて言うか、二人ともロックな人間の生き方をしている。きっと生粋のバンドマンなのだろう。

軍艦のロック精神

 軍艦の二人のツイートが好きだ。二人のつぶやきを見ていると、金属の小林さんが『ファンの意向で自分たちの行動が変わることはない』と明言していた時の、デジャブを感じる。軍艦の二人も、SNSや各種メディアでの言動を見る限りだと、ファンの意向によって自分たちのやりたいことを曲げることは”ほぼ無い”ように思う。気まぐれであるかもしれないけど、今のところ。

 売れるためには、自分のやりたいことを抑えて世間のニーズに応える必要性が出てくる。まっとうにお金を稼ぐ社会人や、理知的な人は、みんなそうやって生きている。それは勿論、社会に絶対に必要なことで、なによりも素晴らしい善行である。

 軍艦も、音楽で売れたければ、低音ボイスの鳴り響く中でテクニカルかつメロディアスに魅せるメタルコアや、シューゲイザーみのある憂いのある音楽ではなく、世の動きに敏感になり、緻密に計算して、youtubeで鬼再生されてポップカルチャーにのし上がれるような音楽をやる必要が出てくるだろう。漫才だって、あくまで寄席スタイルの、お兄さんたちの面白いおしゃべりじゃなくて、賞レースに向けて緻密に構成されたものをやる必要があるだろう。けれどそれをやらないで好きなことをやり続けているから、やっぱり軍艦はロックそのもの。

軍艦から透けて見えるサブカルの帝王とロックスターの幻影

 彼らのロック全開な言動や漫才を見るたびに、ウケるとかスベるとかを全く気にせずに、ただ好きなことだけやり続けたサブカルの帝王の顔が脳裏を過ぎる。

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(この動画の後半のMADめちゃくちゃ飛べます。)

 地下芸人やサブカルの人気、神格化の風潮が高まる中で、永野さんが芸人さんやお笑いファンの方に『自分を貫いた』とか言われて持て囃されているのをたまに見かける。けれど永野さんは、強い意志を持って貫いているというよりも、好きなように生きているだけように見えた。少なくとも、かつて自分が鬼のように通ったロフトプラスワンで見た永野さんは、そんな風に見えた。誰よりも自分を持っていて、我儘で悪意に満ちていてた。世の全てを俯瞰で見ていて、ひねくれていて、最低で最悪だった。しかし当の本人は誰よりも楽しそうだった。だから永野さんはいわゆる”社会不適合者”であるとともに、サブカル界のロックスター以外の何物でもない。

 軍艦が気になりだした当初は、奥野さんがこんな風にツイッターで好き放題発言しているのも、アマチュアのうちだけだろうと思っていた。プロになったら、きっと周りを見て、自分を作り出すだろうと。でも予想に反して二人は一向に変わる気配がなく、そして誰よりも楽しそうだ。好みでない文化に無理に馴染もうとはしない。心許せる好きな人と一緒に過ごして、自分を余すことなく表現する。

 キラキラ街道だとか、インディーズ街道だとか、お笑いファンの中でしか通じない狭いイメージに自分を押し込めることもなく、自分の好きな自分のままでいる。売れようが、売れまいが、二人はそれを一生続けていくのかもしれない。永野さんがそうしているように。金属バットがそうしているように。ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーがそうしているように。みんな”社会不適合者”で、みんなロックスター。そういう文化はいつの時代だって絶対に必要だ。わたしも含めて、彼らの生きざまに救われる”社会不適合者”が、たくさんいるのだから。

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他の人は、スベるのが嫌だとか、ウケるのが欲しいとかいうのがあるらしいけど、僕には本当にそういうのはなくて、自分が気持ちいいほうに行きたいだけ。だから、トレント・レズナーがそれの何百倍も凄いバージョンだということでわかる部分はあるかもしれない。 (- 僕はロックなんか聴いてきた~ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!~  著・永野 - RittorMusic)

 いつかのよしもと漫才劇場、NSC現役生ライブで、軍艦は2分ネタを全て飛ばした。わからなくなって、もういいやってなって、雑談だけで2分繋いだ。

 『俺ら準々決勝まで行ったんすよ』

『あーもうそろそろカンカンカン(ネタ終了の合図)鳴るんちゃう?』

 とか、言いながら。

 彼らを観てると、スベる?ウケる?ネタ飛ばす?…そんなことどうだっていい、と思ってしまう。軍艦は舞台上だろうがプライベートだろうが、軍艦であり続けるしかないように見える。ずっと自分でありつづけてしまえば、そりゃ反感も買うだろうし、炎上もするかもしれない。反対に大量の信者も生まれるかもしれない。ロックスターの宿命だ。けれどそんな世間の反応なんて”些事だ”と笑い飛ばすような彼らが私は見たい。

これからの軍艦

 私はごく身近な東京で、頑張りつつも好きなように生きているたちをマイペースに追いかけ続けるので、二人がプロになってから出るであろう大阪のインディーズライブや劇場まで追うことはしない。お金も時間もないし出来ない。だから有志のファンの皆様に情報を頂きつつ、マイルドさんと絡む時が来た時とかどうしても見たいライブにはときたま遠征もしつつ、密かに二人の幸せを願う感じになると思う。M-1に対する二人のモチベーションはよくわからないけど、『月収15万・週2勤務生活』を叶えるためにも、M-1ファイナリストやセミファイナリストになって二人の寄席単価が上がったら私はうれしいから応援すると思う。宣伝はあまりしない。何も宣伝せずとも、伝わる人には、伝わるだろう。二人にはそれだけの魅力があると確信している。

お笑いファンならずとも、黒帯会議は必見

 この配信を見れば一目で軍艦の凄さが分かる。同時に、金属バット、黒帯がどれほど粋で格好いいかもわかる。

 正直、軍艦が売れる、売れないとかは、どうでもよくて。カート・コバーンみたいに、言動に振り回されたいという気持ちが強い。ある日突然いなくなるかも?どっちかいきなり金髪にするかも?トレント・レズナーみたいに、どっちかが筋トレにハマって、いきなりムキムキになっちゃうかも?そんな我儘に己を貫く表現者のオーラを感じるお笑いコンビ、それが軍艦なのだ。だからお笑いファンのみならず音楽フリークも二人には着目して見てほしい。そのためにこんなタイトルにしたのです。

軍艦の音楽

 最後にこれだけ貼らせて下さい。漫才とは全く関係ないバンドマンとしての二人の姿です。この正反対の方向性の音楽が両方好きだという人たちと、ハイタッチして明け方まで飲み明かしたいなー。

(何も考えずに聴けば良い。踊りましょう、跳ねましょう、飛びましょう。)

(未だにこの曲でうちの子寝かしつけてる。全てが美しくて、穏やかで、聴くたびに涙が溢れる。)

 この記事伝わる?伝わらない?そんなことももうどうでもいいです。そっちがロックならこっちもロックでやりましょ。VIVA!!社会不適合者☺︎軍艦の二人の未来に幸あれ。

(2022.3.29 nao 拝)


追記 : 夕方ごろに軍艦のドキュメンタリー動画が公式に上がったようです。過剰に演出しすぎじゃ?と全く思わせないカリスマ性、確実に面白いって断言できるところが軍艦の凄いところ。記事を読んで興味を持った方は是非見てみて下さい。


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