【中小企業診断士 / 初学者向け】2次試験対策-心得編

今回は、診断士試験の実質的な天王山、『2次試験』についての前提知識をまとめています。これらをふまえて対策を進めていきましょう

2次試験は1次試験の延長にあらず。別次元の試験と心得よ

たしかに1次知識を活用するという意味では1次試験と2次試験には強い関連性があります。しかし、わざわざ二段階で試験を用意するということは、それぞれの試験で判断したい内容が異なる、ということです

1次試験の趣旨


診断士の必要な最低限の知識を網羅的に習得しているか、ふるいにかける試験です。だからこそ足切り点を設定していて、大きなばらつきによって総合点で通過するというパターンを阻止しているわけです。それに加えて、年度ごとに科目の難易度も多少上下するため、要は『7科目すべてをそれなりに勉強しないと落ちるリスクが高まる』試験としているわけです

2次試験の趣旨


→1次試験を通過することで、企業診断業務に必要な、最低限の知識があることが証明されました。
2次試験では、それらの知識=武器を利用して、的を得たコンサルティングができるかどうかをスクリーニングします。現実では社長や関係者にヒアリングを行い情報収集をし、何が課題かを把握します。試験では情報=与件文・設問文です。先方の悩み・解決したいことは、設問文と与件文に与えられます

課題を抱えた企業=痛みを訴える患者を前にして、企業のドクターたる診断士が問診をし、方針をたて、治療を施します。個別の病名や症状、お腹を切開する方法、止血の仕方など、テーマごとの知識は習得しています。
しかし、果たして患者がお腹が痛いからと言って、本当にお腹を切開すべきなのか、お腹以外の部位に根本的な病巣があるのではないか、ということです。知識を試す1次試験、実際の患者を前に治療をほどこせるかが問われる2次試験。1次と2次には、とても大きな『段差』があるということです。

2次試験:出題者側の意図とは

2次試験の作問者は1次の知識やキーワードを与件に散りばめます。解答するために必要な知識、今回のケースでは使わない知識を混ぜて、並列に配置するわけです。それはなぜか。
『本当に理解している人と暗記で上辺だけ知っている人をきちんと選別したいから』です。これが2次試験を通じて設問側に課されたミッションです。きちんと理解をしていないと情報の取捨選択ができない、つまり得点に差が生まれるように問題を作るわけです。

2次試験に正解はない?

正式な解答が発表されないため、正解を知る術はありません。しかし国家試験であり、複数の採点者が採点をする以上、必ず出題者側が想定した解答は存在します。ただし、2次試験は得点が高い上位2割程を合格とする試験です。正答率があまりに悪すぎる設問については、想定した正解でなくとも、救済措置として、もう1つの解答にも点数を与えるという判断がなされることはあるでしょう

2次試験:題意を掴み、トラップをスルーできるか

『理解をしている』とはどういうことか。
特に分かりやすいのは事例Ⅳの経営分析かもしれません。過去問を解いていくと気づくと思いますが、いくつもトラップが仕掛けられています。
たとえば営業利益率が業界平均より高かったとして、それをこの企業の強みとして解答する。有形固定資産の額が業界平均の2倍ちかく大きいから、企業の課題として解答する。電卓を弾けば、業界平均より上か下かは確認できます。しかし、その企業のビジネスモデルや与件で与えられた状況設定をふまえると、果たして本当にそれが強みの源泉といえるのか?もしくはすぐに切開しないと命に係わる課題となるのか?、きちんと考える必要があります。
知識に反応させてミス解答を誘うことで、理解している・考えている人、つまり診断士としての素質を有している人とそうではない人をふるいにかけているわけです

キーワードによる勉強は危険


以上をふまえると、頻出キーワードやパターンの暗記は初見問題に対して相応のリスクを伴うことが理解できます。2次試験を通過した方の特徴の1つは、前提となり知識を暗記したとして、あくまで『与件ベース』で過去問を勉強して、本番で見事に対応した人だということです。
そもそも診断士の診断業務が綺麗にパターン化され、それを当てはめれば対応できる類のものであれば、わざわざ生身の人間がやる必要はないわけで。同じ事例が2つとない一点物の組織文化や事情を抱える企業に対して、整理し、関連性を見出し、1つ1つ解きほぐしていくことが診断士に求められる能力だ!という出題者側からのメッセージであるようにも感じます。

なお、2次試験は『ケーススタディ』と言ってもよく、その事例の業界のビジネスモデルを知っているとよりイメージが湧き、設問を解く上では有利になるでしょう。診断士の職務や適正に合ったことは、参考書や問題集に載っていなかったとしても少しずつ吸収して積み上げていくと、本番では思わぬ追い風を吹かせてくれるかもしれません。

診断士の受験業界は、大学受験業界に比べると、とても小さいです。参考書や問題集、過去問集のバリエーションは数える程度。そのため診断士受験生が使う教材は、ほぼほぼみんな同じといえます。しかし、ストレートで合格を決めていく人もいれば、問題集や過去問を何回転しても受からない人がいる試験です。
過去問を●年●回分解いたか、は合格を分かつ分岐点ではないということです。過去問を深く読み込み、出題者の意図やトラップがどこにあったのかを探しにいく。そのレベルの深さを前提に、さらに幅をこなすことで、初見での読解力・分析力が養成され、短時間でも出題者側の狙いを外さない解答が描けるようになるわけです。完結な文章を書くテクニックなど、試験である以上は技術論も多少ありますが、合否を分ける本質部分でないでしょう。

2次試験:真のライバルは?

たった1点の上に数十名が乗っかっている試験です。上位2割に入るということは、本番で1点でも多くもぎとる必要があります。しかしそれは頻出キーワードをとにかくぶち込む作戦には帰結しません。仮にキーワードはあっていても、因果関係が成立していなければ得点されない可能性もあるからです。ストレート合格を目指す人は2次試験を半年~1年、もしかしたらそれ以上にやっている人と、点数を競うことになります。1次試験の勉強完了を待つことなく、なる早で2次試験の対策に取り組むべきでしょう。
多くの予備校が1月から二次対策のカリキュラムをスタートさせます。2次試験に落ちた受験生は、1次試験の通過権を持ったまま、1月から2次試験の再勉強を始めます。
だからといって必要以上にビビることはありません。問題集を闇雲に回す人、再勉強するものの敗因分析を十分にしないまままた勉強している人、など、全員がパワーアップして本番に相まみえるわけではないからです。
しかしそのうちの数割は、的を得た勉強、計画修正を経て、間違いなくパワーアップした状態で本番に臨みます。ストレート生が勝負するのはその層の人たちです。

まずは早めに直近の過去問を1年分解き、何をプラスしていけば合格に近づくのか考える必要があります。(直近の過去問は実力が備わるまでとっておくべき…という意見がいかに的外れか、本記事でもご理解いただけたかと思います。こののち、すべてもれなく糧にするレベルにやりこむわけですから、関係ありません)
そのとき、今回の記事でお伝えした『前提』をふまえて対策に臨むことが、最終的に合格を勝ち取る『切り札』になると考えています。

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