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体験入学のススメ (海外在住者の日本の学校体験)と地方の可能性

この冬休みはずっとノルウェーで過ごしたのですが、子供たちは「日本に行きたい」と言い続けていました。

シンガポールで生まれ育った息子たちが、なぜこんなに日本が大好きになったのか。
おそらく、小学校の頃から毎年、長期休暇のたびに日本の学校に体験入学し、その経験が彼らにとって非常に意味があったからだと思うのです。

海外在住者の日本での体験入学。ニッチではありますが、割と強いニーズだし、それに応えらえる地方があれば、地域活性化や発展の可能性がありそうです。

海外在住者側からの視点で、我が家の日本での体験入学経験を書いてみたいと思います。

我が家の体験入学先

コロナ禍をのぞいて毎年のように体験入学をしたのは、私の故郷である大分県臼杵市です。山と海に隣接する田舎の小学校で、1学年1クラス、生徒は各学年3~10人程度のとても小さな学校です。息子たちの名前を全校生徒と先生が覚えてくれ、毎回温かく迎えてくれた非常にアットホームな学校です。

大分県の田舎の小学校。少人数クラス

2022年は日本に10か月ほど長期帰国したので、大分県と、長野県白馬村でも体験入学しました。
白馬村は縁もゆかりもなかったのですが、スキーに行き白馬村の環境に魅了され、ペンションのオーナーと仲良くなったこともあり、4か月間短期移住しました。

スキーに行って魅了された環境

白馬村の小学校は各学年2クラス、生徒は1クラス30人弱の規模でした。北アルプスに囲まれた風光明媚な観光地で、国内外から移住者が多い土地柄です。クラスに数人は親が外国人だったり、外国出身の生徒がいて、多様性のある学校でした。

風光明媚な長野県白馬村

体験入学で得たもの

日本語学習

息子たちは、家庭言語は日本語、学校言語は英語で育ちました。
日本語の日常会話に問題はないけれど、読み書き漢字の日本語能力は学年相当に及ばないレベル。

体験入学は2週間~1か月のパターンが多かったのですが、短期間でも目に見えて日本語力は上がりました。一日中日本語シャワーを浴びるせいか一気に語彙が増え、先生やお友達との日常会話によってコミュニケーションとしての日本語が自然と身につきました。毎日の音読+漢字の宿題にも鍛えられました。

自然体験

2021年末まで都市国家シンガポールに住んでいました。緑が多い国ですが、自然が身近にある環境ではありません。そして、気候は常に夏。

その点、日本は四季の変化と素晴らしい自然があります。豊かな四季と自然を味わう体験は、子供たちには新鮮で楽しいものでした。

私の実家は結構な田舎。息子たちは近所のお友達や従妹たちと木登りしたり、裏山で基地を作ったり。子供時代に自然の中でのびのび過ごす体験をしてほしい、と願っていたので、田舎の環境で生活できたのは貴重でした。

裏山でピクニック
木登りする男子

日本の情操教育・学校行事・給食

シンガポールの学校教育は世界でもトップクラス。英語、算数、中国語の能力は非常に高く、日本から教育目的で来られる方も少なくありません。
一方で、体育、音楽、美術、学校行事の優先度がどうしても小さい。

その点、日本の学校教育、特に幼稚園(保育園)や小学校は情操教育が充実しています。昨今、日本の教育への批判をよく聞きますが、海外から見ると日本独自の良さをたくさん感じます。

運動会・音楽会・遠足・マラソン大会などの年間行事に加え、地域探検や社会見学など多様なイベントがカリキュラムに入っています。また、田舎では田植え、さつまいも堀り、もちつきなど、四季折々のイベントもあります。

大分での田植え体験
収穫したお米はもちつきに
冬はマラソン大会
春の運動会

情操教育とは少し違うかもしれませんが、日本の学校給食の素晴らしさは特筆すべきものです。あんなに栄養バランスがよく、美味しく、地域の食文化を取り入れ、多様なメニューを楽しめる給食は、胸を張って世界に誇れます。

第二の居場所づくり

体験入学では、ある程度まとまった期間を祖母や従妹たちと一緒に過ごしました。私の故郷やそこに住む人々たちと、しっかり繋がる体験になったと思います。また、自分たちのルーツである日本と、心情的に強く結びつくことができました。

白馬では、ペンション経営のご家族とほぼ毎日のように交流し、息子たちにとって彼らは憧れの対象で、信頼できる存在になりました。
一緒に長い通学路を歩き、自然の中で遊んだお友達とは、短期間でも濃い時間を過ごせたようです。

白馬にて川遊び

自分がメインで生活している場所のほかに好きな場所があること。安心でき、元気になれ、頼れる人がいて、帰る場所があること。
そういう第二、第三の居場所があることは、人生に安心感と豊かさを与えてくれる気がします。

地域コミュニティ

大分県臼杵市の小学校は、地域とのつながりを大切にしていました。学校行事に地域の方々を招き、お年寄りの方々と交流の機会を作り、学校だけに閉じずに地域コミュニティで大切な役割を果たしていました。

故郷の風景

一方、長野県白馬村は移住者の多いコミュニティです。外国人や海外からの移住者が珍しくないという土地柄で、多様性を受け入れるオープンな素地があり、外から来た者や短期滞在でも馴染みやすいコミュニティが存在していました。

短期間であっても住んでみることで、その地域の特色やコミュニティの個性がわかります。自分たちがどのような地域に合うかを考える材料となるし、将来的に移住する場所を探す手掛かりになると思います。

体験入学がしやすい社会に

海外在住者目線から体験入学経験を書きましたが、ニーズは国内にもありそうです。
都会に住む、地方暮らしを体験してみたい家族は結構いそうだし、今の学校が合わず、環境を変えて違う学校を体験したい子供もいるかもしれません。

体験入学は個人によって合う合わないがあるし、地域や学校、先生やクラスメイトなどにより充実度は大きく左右されます。そして、学校側の負担が大きいというハードルも。

我が家は運良く、過去の体験入学はいつも快く受け入れて頂きましたが、地域によって様々な条件やハードルがあり、受け入れてもらえないケースもあると聞きます。

子供にとって、学校生活が与える影響は大きいものです。その国や地域を理解する最適な場所だし、環境が変わることで発見できることはたくさんあります。

国外からも国内からも、短期で入れ替わる生徒が一定数いても大丈夫な学校が日本にたくさんあるといいし、それを可能にする教育体制(ICT教育プログラムなど)が整えばいいなと強く思います。難しいかもしれませんが、そんな柔軟性と個性を持つ学校がもっと増えたら面白くなりそうです。

この冬は体験入学できなかった息子たちですが、今年の夏にまたトライできないか思案中です。受け入れてくれることを切に望みながら。

白馬村の風景


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