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心損傷(Left Anterolateral incision)

これは倉敷所属中、
に最も心に残った症例の紹介です。

この症例は
瀬戸大橋を介し隣県である
香川県からのご紹介です。

*ちなみに香川県は大好きです笑
四国のどこかに行くにしても、
必ず高速道路を降りて、
朝うどんを食べるのが恒例でした。

自動車自損事故。
「近くの病院へ搬送した方が安全だ」
と思うほど、不安定な状態でした。

ただ
救急隊も理由があり当院に依頼しているはず。
急いで搬送してもらうことにしました。

搬送まで45分、
この時間で準備をします。

まずは手術着に着替え、
汗っかきなのでヘッドバンドをして、、、
どうでもいいですね笑

次に救急部での準備。
この準備は決まったルーティーンはなく、
救急隊からもらう情報をベースに、
どの程度重症なのか、
どんな損傷があるのか予想して
準備しています。

点滴、輸血、人員、機材。
その後に情報をチームにシェアし、
イメトレをしたり、
言葉は少ないですが、
チームメンバーを繰り返し
「〇〇だったらこうしよう」
と話し合い、患者さんを待ちます。

手術の可能性が高いかと思っていたので、
外傷チームメンバーにもお願いし、
診療に協力してもらいました。

さて実際に患者さんが来ました。
血圧は救急隊の情報通り低いままで、
収縮期血圧は70。
なんとか患者さん自身で、
頑張って命をつないでいる状態でした。

さて原因は?
救急隊からは
「緊張性気胸が疑わしいです」と
聞いておりましたが、その所見もない。

一通り必要最低限の検査を行い、
心臓の周りに血液が溜まっている、
心タンポナーデが疑わしいと考えられました。

「開けるしかないよね。」

この、開けるか、は
開胸手術を行おうということです。

バイタルサインが不安定、
全身麻酔、気管挿管を行えば、
更に血圧は下がるだろう。

CT検査を行う余裕はありません。
一度心臓が止まってしまったら
救命率がグーンと
下がってしまうと言われています。

患者さんの状況や、
手術室へのアクセスのよさ、
病院によって手術の内容が少し変わるのも
外傷の面白いところです。

私たちは救急室で
左開胸手術を選択しました。

左開胸を行うと普段見られない、
パツンパツンの心嚢を認めました。
心嚢を切開すると、血液が溢れてきます。
収縮期血圧が一気に150まで上がりました。


やはり心タンポナーデで良かったんだ。
損傷部位は心臓表面の微小血管、
これは圧迫+止血剤で止血できました。
(心臓血管外科出身のメンバーがいて、
とても心強い!)

この患者さんには外傷チームだけではなく、
多くのER医、ナースが参加してくれました。
皆で蘇生しながら、出血源を突き止め、
手術をする。

一人一人が責任を持ち治療に参加し、
チームワークで救命できた症例です。

個人的にはチームワークを感じられる瞬間が、
最高に嬉しいです。



外傷患者さんは適切な治療をすれば、
意外とすんなり帰っていく。

3週間ほどで元気に退院できました。
お迎えの際ご家族からお礼の品を頂きました。
うどんでした。

患者さんの顔を思い浮かべながら、
頂いた感謝の言葉を思い返しながら食べた。
最高においしかったのは言うまでもない。

うどんはさっぱり派

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