不知の燈(旧:とある木こりの実話怪談)

不知の燈(旧:とある木こりの実話怪談)

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シシテル #儚視

「一葉兄ちゃん!」 「どうした?双葉」 「楽しかった!また明日も遊ぼ!」 僕は差し出された幼い手を握り返すことしかできなかった。 「どうしたの?一葉兄ちゃん?」 7歳の僕はこの時、葛藤というまだ聞いたことのない言葉と戦っていた。 「双葉あのな…お兄ちゃん…」 「どうしたの?」 だめだ…言葉が出てこない… 泣きそうになる表情を必死に笑顔で誤魔化しながら弟の幸せそうな可愛かった笑顔から目を逸らす。 「遅くなる前に帰ろうか。」 「うん!」 弟と会話を弾ませながら帰り道を2

    • 僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜②

      ?「ふふふ〜ん、ふ〜ん、ふふふふふ〜ん、バンバン!ふふふ〜ん、ふ〜ん、ふふふふふーん、ばんばん!ふふふーふーふーふーふーふふふーふふふふふーん、バン!いっちょ完了だぎゃーふふふ!喜んでくれると嬉しいにーーー!私のダーリン!」 ハインツ回想 業火を浴びて崩れる建物を僕はアンソロジーに抱かれながら見つめることしかできなかった。 子供達「ハインツ…詞華…お前達がやったのか?神父様は…神父様はどこいいるの…」 アンソロジー「神父様…?ハインツがこんな目に遭っているのに…?」

      • 僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜①

        ハインツ回想 アンソロジーが地面にうずくまり鳴いている。 ここは東北の日本海に面する県… ハインツ「アンソロジー!アンソロジー!一体どうしたのさ…」 アンソロジーは何度も嗚咽を上げながら涙を流し続けた。 ハインツ「アンソロジー!答えてくれよ…僕は君の味方だから…」 アンソロジー「私…怖いの…私…神父様に…」 泣きじゃくるアンソロジーを見て僕は子供なりに抱きしめて寄り添うことしかできなかった。 現在 ハインツ「アビリティ!エリグモス!ハインツ。ヘカトンケイル。へ

        • 僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙雲の矛先

          あの日と似た夜がまた始まった。 ?「そんな安っぽい影を出したところでこのヘカトンケイルには太刀打ちできないよ!」 巨大なロボットがダイダラめがけて空高く上げた拳を振り下ろす。 山がうなりをあげダイダラが動き出すもその大きな拳に一瞬にして飲み込まれ押し潰された。 茂庭「ダイダラを一撃で…一体この神は何者なんだ…」 ?「俺たちは王位と言ったはずだ。」 ならばと茂庭はすかさず空間の闇を切り裂きその中から鬼を出そうとする。 茂庭「魍魎…」 高嶺「ダメ!一葉!今鬼を出し

          僕と拠り所〜いわゆるお色気回と言うやつ②〜

          僕と拠り所〜いわゆるお色気回と言うやつ②〜 押し倒された俺は両腕両足を千鶴の手と尻尾に押さえつけられ身動きが取れずにいた。 千鶴「アホ…主…アホ…わしの気持ち…分からんか…阿呆…好きじゃ…わしは主が好きなのじゃ!」 ここまで顔を真っ赤にしてる千鶴を見たことがあっただろうか… 出流「あの…神様…ですよね?」 千鶴「無論!!!」 バシンとお尻から出ている3つの尻尾…と言うか、完全に蛇のそれだが…1つの尻尾を地面に叩きつける。 その時、千鶴はブルブルと体が震えた。 千

          僕と拠り所〜いわゆるお色気回と言うやつ②〜

          僕と拠り所〜いわゆるお色気回というやつ。①〜

          大きな貸切のリムジンバスに揺られていると海が見えてきた。 出流「あっ、海だ。」 海水浴で賑わう人々を眺めながら俺はバスの後ろで外を眺めていた。 姫花が最近の騒動で疲弊していた俺らの心を休ませるために別荘に案内してくれた。 千秋と千鶴はミチオと3人で楽しそうに話している。 直人が寝息を立てて爆睡している中、口元や首を舐め回しながらヒメノがハァハァと息を荒げている。 姫花と姫子は部屋についてからの段取りや買い出し等を常在のメイドと打ち合わせをしているようだ。 みつきは

          僕と拠り所〜いわゆるお色気回というやつ。①〜

          僕と拠り所2あの日の君へ〜①再縁〜

          息子「そのほう、首を垂れよ」 山間に沈む夕日を見ながら一緒に散歩をする小学1年の息子が何度もそう口にする 父「何それ…学校で流行ってるの?」 そう聞き返すと違うよと言って首を横に振る。 テレビかゲームの影響かなと思いながら歩き慣れた畦道を解けそうな力で繋ぐ手にどこか懐かしい暖かみを感じる。 息子「夜寝てるとね!キラキラした部屋に黒と白の狐さんがいてね!あのね!いっつも笑ってくれるの!」 ニコニコ目を輝かせて楽しそうに話す子どもの姿を見てこの間までは赤ちゃんだったのにと

          僕と拠り所2あの日の君へ〜①再縁〜

          僕と拠り所〜百折不撓〜

          今まではあんなに賑わっていた部室も口数が減ってしまった。 順先生と周健先輩が亡くなって1週間が経った。 同じ階の廊下をバタバタと走る音がだんだんと近づいていることがわかった。 高嶺「はぁ、はぁ、はぁ…ごめんなさい…遅刻しちゃいました…」 息を切らしながら部室のドアを勢いよく開けた高嶺が俺たちとは違う制服で現れた。 高嶺は俺たちの高校とは別なのでそちらは学生服のデザインが違うものだった。。 直人「あっ高嶺……先輩…」 姫花「お疲れ様でございます。皆、お待ちしておりまし

          僕と拠り所〜行方〜

          出流「俺が今、この人たちの前にいること。過去に茂庭先輩と何かが起こったこと、いや…過去なのか?どこかで幼き自分を見たような呼ばれたような気がする。そこで俺は確かに茂庭先輩を見た。はぁ…何だよこれ…それに今首を閉めているこの人も一体どこから現れたんだ…もしかして、最初からいたかな…あー駄目だ、考えるだけで頭が痛くなってくる。それにミチオが言ったこと…あれは何だったんだ?全適応とか…何とかって…意味がわからない。」 虹色の瞳で微笑むミチオを見つめながらそんなことを考えていた。

          僕と拠り所〜茂庭一葉編⑤可逆転換〜 僕と拠り所〜全適応〜

          僕と拠り所〜茂庭一葉編⑤可逆転換〜 僕と拠り所〜全適応〜 鬼神やたくさんの蠢く怪異がミチオに迫る。 ミチオ「あの人は僕の力で…何度もやり直していると言った…確かにスサノオになれば心力付与で時間を戻すことができるだろうが…果たして…出流にその程度の力があるというのか…テンデイズハイの影響?まさか…だって意識を失ってるわけだし…」 そうミチオが考えていると 一匹の怪異が出流の足を掴み闇へと引き摺り込もうとした。 ミチオ「おい。僕の祠に触るな。」 彼の殺気が後方から続く鬼

          僕と拠り所〜茂庭一葉編⑤可逆転換〜 僕と拠り所〜全適応〜

          僕と拠り所〜茂庭一葉編④不遇〜

          出流「ミチオ行こう!」 ミチオ「待って!出流!お母さんに内緒で仙台なんて!」 出流「いいからいいから!ほら!隣のおじちゃんにもらって隠してた5000円あるんだし!七夕!行こう!」 ミチオ「おじちゃんって…でも本当に大丈夫なの?」 出流「大丈夫!お友達が出来たんだもん!」 爛々と煌めく出流の瞳を見てミチオはとてつもない不安を感じていた。 小学2年の夏、いじめられていた出流は一柱の神と出会う。 これは高野仙出流(木こり)のミチオから聞いた話。 仙台駅はひどく混雑し

          僕と拠り所〜茂庭一葉編④不遇〜

          僕と拠り所〜茂庭一葉編③不変〜

          生徒「お前気持ち悪りぃーんだよ」 出流「返して…返してよ…」 生徒「ママでも呼んでみな!」 出流「ねぇ…返してってば…」 僕の上履きの黒い靴が物置の上へ投げられる。 後日、僕は先生に事情を伝えた。 先生は全校生徒に僕の靴の行方をプリントにして配ったが、そのありかを知っているはずの奴等が現れるものはいなかった。 出流「ここに、あります。」 僕は先生にその靴のありかを伝えた。 用務員のおじちゃんがゴソゴソとハシゴを上り僕の靴を見つけ出した。 用務員「あった!こ

          僕と拠り所〜茂庭一葉編③不変〜

          僕と拠り所〜茂庭一葉編②前夜〜

          僕たちは苦戦していた。 最初は単純に考えていた。 高嶺恭子の千里眼で子供達を保護してしまえばいいと。 だけどそううまくはいかなかった。 全てはタイミングなのだと分からせられた。 たとえ保護したとしても怪異化した神たちがそこに集まり一度に契約されたらこの世界が崩壊しかねない… そして仮にうまく保護できたとしたらその神たちは対象を変えてまた別な子供たちと契約をする者も現れた。 1人の少年は高速道路の事故でそのまま姿を眩ませ、家に何度も訪問するもその力に一歩も…玄関どころか門を

          僕と拠り所〜茂庭一葉編②前夜〜

          僕と拠り所 あらすじ

          ある日いじめられっ子の木こりは1人の怪異と出会う彼はミチオと名乗り拠り所だと言った。 家に帰ると木こりはミチオを自分の部屋に入れ冷蔵庫に入っていた作り置きのカレーを2人で頬張る。 お風呂に入ろうとリビングを通るとそこにはいつも木こりに暴力を振るう血の繋がっていない父親が飲んだくれていた。 その父親が木こりに殴りかかると木こりは目を瞑る。「大丈夫…痛いのは慣れてる」 しかし、いつもの痛みが今日は無かった。 恐る恐る目を開けるとそこには… これは東北地方の1998年頃の出来事。

          僕と拠り所〜茂庭一葉編①九夏〜

          アスファルトがゆらゆらと蜃気楼を立てて揺れ、その揺れが大きくなるにつれ蝉たちのジリジリとした鳴き声が大きくなる。 僕は道路沿いに平行に立ち並ぶ木を見ながら汗ばむ体を首元の襟をバタバタさせながらもう片方の腕をポケットに突っ込み少しふやけたメンソールのタバコを取り出し箱を開ける。 茂庭「あれ?ない………」 再度全てのポケットに手を入れ探すが見つからない。 そうして誰もいないカフェテリアの外の喫煙所でもじもじしていると僕の横でカチン…チァッと音がしてゆらゆらと小さな熱気が僕の

          僕と拠り所〜茂庭一葉編①九夏〜

          僕と拠り所〜王位の本質〜

          アナザー木こり「なぁミチオ!最初に助けられたんだっけ?」 アナザーミチオ「いや…どうだったかな目を開けた時にはもう…僕たちの好きなようにやればいいんじゃないかな?」 アナザー木こり「好きにって…じゃぁ、千秋のこと犯してからでもいいの?」 アナザーミチオ「でもそれだとこの世界の千秋も木こりもかわいそうなんじゃない?だって2人はまだ…」 アナザー木こり「うぶだな…」 2人は肩を並べながらこの世界の木こり達同様に仲睦まじく寄り添っている。 直人「さっきの男!」 八咫に