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#1-3 カオスマップの向こう側 D2C女性アパレル編

今回は5ブランドピックアップ。

ようやく女性アパレルブランドをコンプリート。

前回分は「#1-2 カオスマップの向こう側 D2C女性アパレル編」を参照ください。

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10.HEART CLOSET <胸の大きい女性のためのラグジュアリーブランド>

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<基本情報>
創業年:2016年
創業者:黒澤 美寿希(女性)
運営会社:㈱122
製品:D~Kカップ向け女性アパレル
累計調達額:約17,000千円

アパレル未経験の黒澤 美寿希さんが立ち上げた「胸の大きな女性に向けた」ファッションD2C

2019年にはリブランディングして「ラグジュアリー」の要素を加え、ハイファッション化を図っています。

もともとニッチな市場で競合も少ないので、ブランドが確立されてきたら付加価値をつけて高価格帯にピボットするというのは優れた戦略。D2Cは一定の需要が把握できるので「安売り」しない。

同じ課題感を持った創業者の原体験から生まれた「overE」と思想は似ていますが、高品質高価格帯の戦略を取っている点が異なります。

<なぜ創業したか>
洋服というのは社会的な側面が強く、こうした状況は精神的に負担となります。私自身、胸が大きいので、その辛さは身にしみて感じています。洋服を着るのは毎日のことであり、仕事や冠婚葬祭などTPOに合わせる必要がありますが、胸が大きいとサイズが合わず、無理やり着るしかありません。胸の大きい人は、決して胸を小さく見せたいとか隠したいと考えているわけではありません。「嫌な思いをすることなく安心して着られる」のは大前提で、その上で自分の体に合ったものを着て美しく見せたいんです。そうした思いに応えるために、アパレルは未経験でしたが2015年12月に「HEART CLOSET」を立ち上げました。
胸の大きな女性の悩みを解消!「胸のサイズから洋服を選ぶ」アパレルブランド!

創業においては、クラウドファンディング(Enjine)を活用して、プレマーケティングをした上で生産に入っています。

このパターンは他のD2Cブランドにも当てはまることが多く見られます。

とくに原体験発のブランドは、ニッチな市場をターゲットにしていることが多く、「自分の課題認識は社会のニーズとフィットするか」という検証を事前にすることで、成功確度を高めています。

HEART CLOSETは、クラウドファンディングで目標金額の1200%を達成し、200の媒体に取り上げられたので、知名度が高い状態でスタートを切ることができました。

顧客接点:SNS+ブログ

売上の82%がSNS経由と言われているほど、SNSからの流入が多いのが特徴。創業者がこまめにツイッターを更新するとともに、投稿者との交流を盛んに行うことで「胸が大きい」ことへの不安、不満を話題にして情報共有するコミュニティを形成しています。

また、SNSと相性の良いブログメディア(オウンドメディア:HEART CLOSET)も開設し、「巨乳あるある日常編」など、胸の大きな女性の共感を得られるコンテンツで集客し、ECへと送客する仕組みも整えてます。

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<所感>
ファッションと社会性を結びつけて、これまで、コンプレックスによって、ファッションに自信を持てなかった人にHEART CLOSETを通じて「自信をもってもらう」というストーリーは非常に好感が持てます。

また、クラウドファンディングを活用して「0次流通市場」で検証してから生産する体制は、D2Cのように仮説検証を繰り返すアジャイル型にはハマっていて、今後のデファクトスタンダードになっていく気もします。

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上図:Makuake「成長可能性に関する説明資料」より抜粋

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11.SOÉJU <スタイリングサービス発の女性アパレルブランド>

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<基本情報>
創業年:2014年
創業者:市原 明日香(女性)
運営会社:㈱モデラート
製品:「ベーシック」で「ほどよい価格」の定番アイテム
累計調達額:約116,000千円

2015年から、30代〜40代女性をターゲットに、自分の体や好みにピッタリくる着こなしや「持っている洋服の見直し方」を、プロのスタイリストがオンラインでスタイリング提案してくれる「SOÉJU personal」事業を開始。(最初はLet me knowというサービス名)

2018年からは、スタイリング提案する中で取得した顧客データと接客で見えた定性データを元に企画した、色々なスタイルに合わせやすいファッションを企画製造。オンラインを中心としたD2Cのサプライチェーンで販売を開始しています。

<なぜ創業したか>
自分自身が「一番困っていた事って何だろう?」と振り返った時に、洋服を選ぶのが結構苦しい時間だな、と。この年代の女性って、たった1日の中でも色んなシーンがあるんですよね。そして、それぞれ「何着よう…」ってすごい悩んじゃうんです。例えば、朝息子のサッカーの朝練に連れて行って、昼フリーランスで相手先に出かけて、それで帰ってきた後に PTA があるとか。前の晩にクローゼットをひっくり返してあーでもないこーでもないって悩んだ挙げ句、翌日雨が降ったりすると「またイチから考え直さないと」って。この時間って「ファッションを楽しむというよりは結構苦しい時間だな」と思ったんです。
「選んだ道を正解にする。モデラート代表市原明日香さんの自分らしい仕事のつくり方」

こちらも前述のHEART CLOSETのように、クラウドファンディングのMakuakeでスタイリング提案のテストマーケティングの後、生産を開始。

商品に対してカウンセリングサービスがついてくるという付加価値を付けることで、他のD2Cとは異なり、オンラインでは対応しづらい「スタイリングサービス」で差別化しています。

顧客接点:スタイリングサロンとサブスクリプションプラン

SOÉJUの特徴の一つは、代官山にサロンを設けてリアルのファッションコンサルティングスペースを設けていることです。

サロンでの接客を通じて、顧客が何に悩み、どの提案に満足しているかなど、オンラインでは探りきれない顧客情報を取得しています。それがまた自社ブランドの企画に活きるというサイクル。

ほかに、SOÉJUは自社ブランドを持ちながらもユニクロやZARAなど他社製品もスタイリングに含めて提案してくれるところも支持を得ています。

自社ブランドだけを推薦するのではなく、中立的なコンサルティングで、あくまで「顧客にとって一番のスタイルが何か」を起点に提案してくれる。というのがブランドロイヤリティ向上に寄与しています。

また、もう一つの特徴として、スタイリング提案をサブスクリプションでサービス提供することで、継続的な顧客接点を持つことを可能にしています。

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提案スタイル数や頻度によってプランは異なりますが、オンライン、もしくはサロンにおける対面でのカウンセリングを実施しています。

通常のアパレルブランドであれば、販売して終わりのワンショットの顧客接点で終わるところを、継続的に顧客接点を設け、顧客の手を離さない仕組みを構築しています。

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<所感>
スタイリングサービスから派生しているため、スタイリングにアイデンティティを持っている点が他社との差別化に繋がって面白い。

また、接客の中で顕在化するニーズを元に商品企画しているので、販売の確度が高い。AIを活用したいという創業者の発言もあったので、今後、顧客データを元にしたAIスタイリングなどに着手していくのではないでしょうか。

これは米国のStitchFixの戦略とも似ていて、StitchFixは、スタイリストが選定した商品の購買データをAI分析して、データを元にPBを開発しています。スタイリングにAIサポートを活用したり、提案商品にPB商品を加えることで利益率を改善しているのです。

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12.Feast <胸が小さい人向けランジェリーブランド>

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<基本情報>
創業年:2015年
創業者:ハヤカワ五味(女性)
運営会社:㈱ウツワ
製品:AAA~Aカップ向けのランジェリー
累計調達額:N/A 千円

キュ〜トでクレバ〜な経営者としてメディアに取り上げられることも多い、ファッションデザイナーのハヤカワ五味さんが手がけるランジェリーD2C。

overEやHEART CLOSETと同様に、バストサイズの悩みに端を発するわけですが、feastに関しては「胸が小さい」ことへのコンプレックスを解決するために立ち上げられました。

大学1年生の19歳の時に創業してるというから驚き。高校生の時にも、自身でデザインしたストッキングを販売していた実績もあるほど、「この世に無いものを、自分で生み出す」ということをずっとやってこられてる方ですね。

<なぜ創業したか>
ハヤカワ:もともと私自身、貧乳がコンプレックスなんですが、貧乳向けの商品はほとんど売っていません。ショッピングモールに下着屋さんが3~4件入っていたとしても、全店舗で5個も売っていないくらい商品がない、とういうことを体感していたので、それを「自分で実際に形にすればいいかな」と思い始めたのがきっかけです。
小さい胸用のブラは一応あるにはあるんですけど、まず、ダサいんですよね。フルオーダーのものでも、やっぱりデザインがとてもダサいんです。
そこで、「大企業はこれが限界なんだ、だったら私がやったほうが早いな」と思いました。自分が欲しければ作る、人に何かを望むならまず自分から動くという理念を持っているので、文句を言う前に作ろうと思いました。
ラグジュアリーブランド『feast』デザイナー兼、株式会社ウツワ社長であるハヤカワ五味氏

大企業が販売効率化のために「イレギュラーサイズ」を生産から外していることに憤りもあり、feastが利益を出すことで、「大企業が当たり前にAカップサイズを作っている状態」に持っていくことがfeastの目標のようです。

ゴール目標として、非常に分かりやすい。

顧客接点:オンライン、オフラインの多様なチャネル

デザイナー自身がメディアとして、SNSやyoutube、noteなどの多様なチャネルで発信してフォロワーを増やしています(Twitterフォロワーが7.5万人(2019年12月)。もともと、ニッチなターゲットの課題解決型のプロダクトのため、ファンも熱狂的でコミュニティも強固。

リアル店舗としては、17kgのようにラフォーレ原宿に常設店舗を展開。サイジングの課題解決を図るというプロダクトの特性上、リアルで試着したいという顧客ニーズは高いようです。

ターゲットのトラフィックが多いラフォーレ原宿にブランド体験の場を持つことで、顧客満足度を高めています。

また、amazon経由でもEC販売しているのも特徴です。ランジェリーの特徴として、購入したことやスタイルをSNSでシェアしないことから、一番顧客がアクセスしやすいamazonで販売を開始した。ということですが、

D2C=ECプラットフォームでの販売は悪。といった固定概念ではなく、顧客のために一番買いやすいチャネルを考えたら、リアルの場とamazonという選択になった。という感じでしょうか。

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<所感>
デザイナーの言動に目が行きがちですが、ここまでフォロワーが増えたのも、女性特有の課題に悩み、自信を持てなかった人がこれまで多かったことに対して、課題解決型のプロダクトを開発したことだと思います。

サイジングの課題は日本だけの問題でも無いため、グローバルも狙える。と言う主旨の発言をされていて、原体験型の課題解決プロダクトはグローバルも狙えるので、「ニッチなマーケットを狙うD2Cはスケールしない」という通説を覆す一つのヒントになりそうです。

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13.AND MARKS <instagram発D2C>

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<基本情報>
創業年:2019年
創業者:三輪 武寛(男性)
運営会社:and marks(株)
製品:スマホネイティブ向けアパレル
累計調達額:?千円

L*ecren(ガーリー好きな女の子)
BLACK BUNNYS(黒が好きすぎる女の子)
黒の古着女子(黒が好きすぎる女の子・古着)
Lavand Rose(甘くて棘がある女の子)
GATE RUE(ストリート系)
PINK BUNNYS(BLACK BUNNYSの姉妹ブランド)

と、すでに多様な6ブランドのD2Cを運営するAND MARKS。とにかくinstagramを徹底活用して「画像」による認知を図っているのが特徴。

販売チャネルは自社ECですが、商品説明のテキストは極小化されている代わりに、スタイルの画像はとてつもなく充実しています。WEBの作りも完全にスマホベースで、スマホを操って、画像でブランド認知するスマホネイティブに対してのWEBデザインと言えます。

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リリースとしては、L*ecrenが渋谷ヒカリエでPOP-UPしているのが発信されているぐらいで多くの情報はまだ世に出ていませんが、

POP-UPにレジを置かずに、「WEBで試着/購入予約をして店頭で試着した上で気に入ったらECで購入する」というOMO施策にも挑戦しており、新しい顧客接点にも取り組んでいるようです。

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<所感>
instagramの運用代行もしている企業のようなので、とにかくinstagramで消費者を巻き込んでいくのが得意。という感じ。POP-UPの販売員もインフルエンサーを揃えたり、プロモーションにインフルエンサーを使ったり。

すでに6つのブランドを運用していますが、FLEEKRSのように、企画・製造の機能まで持っているようであれば、今後もインフルエンサーを使ってブランド拡充していきそう。

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14.Baraille&Garments<アンダーウェアD2C>

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<基本情報>
創業年:2018年
創業者:ナカソネ ユウ
運営会社:BACHELOR PARTY
製品:男性用アンダーウェア
累計調達額:?千円

もはや、なぜ女性アパレルに分類されてるのか不明ですが、調べる限りは「男性用アンダーウェアD2C」。

プロダクトはアメリカンシーアイランドコットンを使用したボクサーパンツで、自社ECで販売していますが、アンダーウェアには珍しく、ブランド着用モデルの動画スタイルがあるなど、かなりファッショナブルな作りになっています。

アンダーウェアに特化したそのプロダクトも面白いのですが、WEBのコンテンツ「Laboratory」が非常に魅力的で、各社のアンダーウェアを徹底解析して、サイズ感や着心地だけでなく、モデル着用したスタイルまで見せて、ここまで調べるのか!と言うほどのアンダーウェア愛を感じます。

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<POP-UPリリースにおけるコメント>
マリリンモンローのスカートが風で舞い上がるあの有名なシーンではいていた下着ブランドをあなたはご存知でしょうか。はたまた、ジョン・ F・ ケネディやチャールズ皇太子が愛した下着ブランドをご存知ですか?欧州シェアナンバーワンの下着ブランドや、スウェーデン首相も着用するブランドなど、名作と呼ばれるアンダーウェアを今回チョイスしました。普段、ひとの目に触れる機会の少ない男性のアンダーウェアですが、そういうアイテムこそ手を抜かず、自身の気に入ったモノや、上質なモノをきちんと選ぶ、とはいうのが大人の男性ではないでしょうか。世界には多くの優れたアンダーウェアが存在しています。名作に触れ、ブランドのヒストリーやこだわりを知ることで新たな世界の一面を知るきっかけになれば幸いです
PR Times「アンダーウェア特化のD2Cブランド「BARAILLE & GARMENTS」が11月5日に正式デビュー

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<所感>
作り手のアンダーウェアへの「愛」を強く感じるブランド
。他社製品の研究結果詳細をオープンすることで、「こんなに研究してるなら、自社製品にも活かされてるだろう」と、自社ブランドへの信頼にもつながり、BARAILLEで購入してよう。となってしまうほどの説得力です。

海外ではSPLENDIESのようなアンダーウェアサブスクもあるので、消耗品と捉えれば顧客接点も多いですし、様々な販売方法がありそうです。

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今回のまとめ

これまで調査のD2Cにもありましたが、「クラウドファンディング」を活用してプレマーケティングした上で、生産に入るブランドが多いですね。

もはやクラウドファンディングが基本サプライチェーンに組み込まれるほどの勢いで存在感を示してきています。

またD2Cをスケールさせる戦略として、
・課題解決型からのグローバル化
・多ブランド運営によるチーム化

という視点がありました。

feastのような課題解決型のブランドの場合は、「グローバル」が狙えます。身体的、心理的ストレスは日本人だけが抱えてるものではなく、海外に同じ悩みを抱えている人もいます。

身体的課題であれば、アジアの親和性が高く、中国市場に入り込めれば、かなりスケールする可能性があります。これまで、ニッチな市場に絞ったD2Cはスケールしにくい、という通説がありましたが、グローバル展開が可能であればまだまだスケールの可能性はありそうです。

一方、課題解決型では無い、「インフルエンサー(日本人)発のD2C」や「メディア発D2C」の場合は、コミュニティが日本に閉じている可能性が高く、単一ブランドによるスケールではなく、AND MARKSのように、同じ哲学の元、いくつものブランドを束ねて運営することで、チームで勝つ。という戦略になりそうです。

今回で女性アパレル編は終了ですが、次回は男性アパレル編。どんなD2Cがあるか楽しみです。

掲載画像は各ブランドHP、インスタから抜粋して掲載させていただいています。

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