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【東京百景】高円寺と女子

「高円寺に『猫の恩返し』のモデルになったカフェがあるから行こう」と誘われたのが今から四年前の大学一年生の春ごろ。

入学早々にできたジブリ好き仲間に誘われたのである。お互いに持っている情報は「ジブリが好き」というだけ。なので2限が終わってからの行きの道は、そろそろと手を出したり引っ込めたりする猫のように皆で会話を進めていた。と思う。(もしかしたら私だけかもしれない)

四人でこじんまりとした店でピザを食べて、食べている途中で「キャッチコピーだけで映画のタイトルを当てよう」と誰かが言った。出題者の女子は一人。他の三人で誰が「にわか」なのか探るようにゲームが進んだ。結局食べ終わってしばらく経っても勝負がつかなかった。綺麗にほぼ同時に答えるのである。

途中で出題者の女子が「じゃあ次はディズニーのキャッチコピーがいい、ウチ、ディズニーの方が好きだし」と言った。

お前かい。


また私はブックカフェというものが大好きである。高円寺には「アール座読書館」という私語禁止カフェがある。そこは読書する者の、読書する者による、読書する者のための読書空間なのである。ちょっとしたお茶菓子と本、そして水の流れる音が素敵な空間。高円寺だからこそできる雰囲気なのだと確信している。

その頃はまだ親がインスタという存在を知らずフォローされるという地獄の監視はされていなかったので、私はインスタグラムで己のプライベートを晒すことになんの躊躇もなかった。そのためちゃんとしたインスタグラマー女子として胸を張って「アール座読書館」と投稿した。

後日、大学でめちゃくちゃ美人すぎてこちらから話しかけるのが怖い女子に「こないだインスタであげてたところ行きたいんだけど、どこにあるの?」と言われ、緊張しすぎて咄嗟に「ここにアール座読書館」とほざいてしまった。すぐに「高円寺です」と言った。


大学卒業間近にして、あの時は「ああ、終わった」と思った大学生活もこうして数々の奇妙な繋がりに想いを馳せてみるとなんだか名残惜しい。さっさと次の繋がりについて妄想を始めないと「あの頃の方が良かった」なんて言い出しかねない。

でもやっぱり、この名残惜しさが美しいと思う。

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