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「あたしは柴犬のアキ」17

 次の日もモモちゃんとお出かけをする約束をしていたので、モモちゃんが散歩から帰ってくるのを確認して誘いに行った。
「モモちゃん行こう」
「アキちゃん今日は探検に出かけない」
モモちゃんの提案に少し戸惑った。でもモモちゃんはこの辺をよく知っているのでモモちゃんに任せることにした。

 モモちゃんは楽しそうに前を走った。あたしはしっかりとついていった。探検と言っただけあって、色々なルートを通る。側溝のグレーチングのトンネル、他所の家の犬走り、長い階段や雑木林。モモちゃんはホントに楽しそう。ときどき猫に遭遇するけどその度に威嚇していた。あたしもやりたかったので威嚇の仕方を教えてもらった。
「アキちゃん、見つけたら直ぐに唸るのよ、先手必勝よ。絶対ひるんだら駄目よ」
「モモちゃんわかった。次はあたしにやらせてね」
次の猫に遭遇した時、あたしは全力で唸った。でも猫はびっくりもせずにじっとこっちを見ている。唸り続けても逃げないのであたしは唸るのをやめた。モモちゃんがすかさず唸った。
それでも猫は逃げない。モモちゃんも諦めて唸るのをやめた。猫がゆっくり近づいてきた。そして目の前に座った。あたし達は逃げるのもカッコ悪いし、猫が何を考えてるかわからないのでちょっと怖かったけど、猫と同じ様にお座りした。暫くすると猫が話し始めた。

 「私はミー、近くの家で飼われているの。あなた達、犬なのに自由に散歩してるなんて珍しいわね」
あたしは自由に散歩するに至った経緯をミーに話した。ミーは大笑いした。
「犬なのに度胸があるのね。好きになったわ。友達にならない?」
あたし達は戸惑ったけどミーのゆっくりした所作に安心感をおぼえた。
「あたしはモモ、この子はアキちゃんよろしくね」
「わかった。モモちゃん、アキちゃんって呼ぶわね」
「じゃああたし達もミーちゃんと呼ぶわ。よろしくね。アキちゃんも挨拶しなさい」
あたしはミーちゃんの顔を舐めて挨拶した。ミーちゃんは少し微笑んだ。
「モモちゃんとアキちゃん。もう猫を見て威嚇するのはやめてね。二人の事はこの界隈の猫に話しておくから仲良くしてあげてね。犬の知らない色んな情報を教えてくれるわよ。なんてたってあたし達は塀を乗り越えられるし、どこの家も入りたい放題なのよ」
ミーちゃんの話にあたし達は納得して頷いた。

 家から出て、もうけっこう時間が経っていたので、また今度会った時はお話しようねと約束して、あたしとモモちゃんは駆け足で家に帰った。
「アキちゃん今日も楽しかったね」
「モモちゃん明日も行こうね」
ふと振り返ると、お互いのお庭で大きな声を出してお話しているあたし達の姿を、隣のおじいちゃんとおばあちゃんが優しい眼で見ていた。

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