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「あたしは柴犬のアキ」27

 ドッグランに連れて行ってもらえる日になった。家族もみんな楽しそう。お姉ちゃんはあたしの水やおやつを準備してくれている。うちの車はエブリイってみんな呼んでいる。モモちゃんのお家の車は白くてとっても大きい。それに比べればとっても小さい。でもみんなの手があたしに届くからお気に入り。あたしは後ろのシートの足元に伏せをして乗る。絨毯が敷いてあって気持ちがいい。多分あたしのためにママが敷いてくれたんだと思う。

 十五分くらい走ってドッグランの駐車場に着いた。今日はガラガラだった。お兄ちゃんがすぐにあたしのリードを引っ張ってドッグランに入った。先にゴールデンレトリバーとチワワがいて遊んでいた。あたしは二人に挨拶して、とりあえずお尻をクンクンした。二人もあたしのお尻をクンクンした。お互い安心できる相手とわかったので、かけっこをして遊んだ。お兄ちゃんがボールで遊ぼうって叫んでいるけど知らんぷりして犬だけで遊んでいた。三十分くらい遊んで疲れたのでお姉ちゃんに水をもらった。ドッグランの外を見ると、黒柴が立っていた。

 「えっクロ」あたしは目を疑った。まさかクロじゃないわよね。黒柴はドックランの入り口まで来た。クロだ。パパさんの顔を確認してクロに間違いないと分かったのでこっちから吠えた。その声でクロも気が付いた。お互いうれしくて吠えあった。
「あきちゃんと会えるなんて嬉しい。ここは何をするところなの?僕初めてなんだ」
あたしはドッグランの遊び方を教えた。それから二人で走ったりじゃれあったり他の犬はそっちのけで二人の時間を楽しんだ。

 うちのパパとクロのパパさんが話している。
「今日初めて来たんです。リード外しちゃいましたけど良かったですか」
「大丈夫ですよ。ひょっとしてバス停の近くのお家ですよね?大きなバイクとジムニーの。黒柴ちゃんは庭で飼ってますよね?」
「えっご存じですか?」
「バスに乗るときに良く通りますよ。あの黒柴ちゃんが寄ってきて尻尾を振ってくれるのがうれしくていつも通るようにしているんです」
「じゃあご近所さんですね」
パパがクロのパパさんに家の場所を教えた。
「えー、あの木の塀のお家ですよね?あのお家の柴ちゃんですか。たまに通る時塀の隙間から見ていますよ。散歩の時も通りますよ。夜中ですけど」
クロのパパさんもあたしのお家を知っていたみたい。
パパとクロのパパさんは急に親しくなって笑いながら話していた。あたしとクロはママのところに行ってビスケットをもらって食べた。
「アキちゃんおいしいね」
「うん」
お姉ちゃんとお兄ちゃんはクロをいっぱい撫でて可愛がっていた。
「お姉ちゃん黒柴も可愛いね」
お兄ちゃんはクロをとても気に入ったみたい。
あたしはとても幸せな気分だった。

 ママとクロのパパさんも話し始めた。
「一昨日の夜中に散歩していたら、お宅の家の前でクロが急に吠えだして動かなくなって大変でした」
「一昨日の夜中ですよね?うちも遠吠えして、動き回って大騒動でしたよ」
「何時頃ですか午前1:00頃でした」ママが言った。
「うちもそれぐらいでした。お互い呼び合っていたかもしれませんね。でも会わせた事はないし不思議ですね~」
「仲良く遊んでいるみたいだしまた会わせましょうか?散歩の時そちらの家のほうに行くようにします。よろしいですか?」
「どうぞどうぞ、私の帰りが遅いのでずっと庭で退屈していると思うので来てやってください。家の者にも話しておきます」
あたしとクロは話を聞いていたのでお互い顔を見合わせて笑った。クロは舌を出してニヤニヤしている。こんな顔のクロを見るのは初めて。

 「そうそうこの前アキちゃんみたいな子がうちの前をうろうろしていましたよ。脱走することもあるのですか?」
「アキはずっと庭にいるから違う子じゃないですか。柴犬は似ている子が多いし」
「それもそうですね。柴犬は近所にいっぱいいますよね」
クロのパパさんは納得した。あたしはほっとした。

 パパとクロのパパさんはずっと話していた。気が合ったみたい。もうすぐお昼。ママが「パパ、もうおなかペコペコよ。帰りましょう」と言った。
「お先に失礼します」
「じゃあまた近所でお会いしましょう」
クロのパパさんに挨拶してあたし達は先に帰った。

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