奈良の文化財がいまもある理由
そろそろ今年も終わりますね。
毎年年末には『感謝のお参り』と題しましてツアーをやっています。
一年間無事に過ごせたことを、つつがなく働けたことを、あちこちお出かけできた健康があったことを、色々感謝する気持ちでもってお参りするというものです。
お寺や神社参拝というと、ついご利益を~と手を伸ばしがちですけど、この時だけはめいいっぱいの感謝を捧げに行きたいと思っています。
東京国立博物館に参りまして、写真撮影OKのところにこんなものがありました。
明治の頃『壬申検査』というのがありまして、日本の古社寺にどんなものが伝わっていて、どんな美術的な価値があるのか、ということを調べたのです。
当時は開国したばかりで、諸外国に負けない日本になるために色々がんばっていた時期ですが、新しい眼差しにさらされた仏像たちが好事家の目に止まり、次々に売られて海外流出していたという時期でもありました。
当時はありふれていた古いものの価値が見出されず、日本人が古いものの良さをわかっていなかった為に起きた悲劇でした。
自分たちが受け継いできたものより、海外の目新しいものの方が価値があると思い、簡単に手放してしまっていたのです。
そういった状況を打開するために、行われたのが壬申検査でした。
明治政府が初めて行った文化財の保護政策なのです。
調査隊は伊勢・名古屋・京都などを回り、もちろん奈良にもやってきました。
その時に撮られた写真がこれです。
馴染み深い東大寺大仏殿や、興福寺北円堂、そして薬師寺の東塔などが写っています。
背景など今と変わらないところもあって驚きなのですが、もっと驚きなのは、薬師寺東塔などにつっかえ棒がしてあるのです。
東大寺大仏殿が、その重みに耐えられず傾いてきて、つっかえ棒をしたことがあるとは聞いていましたが、まさか薬師寺東塔も…
今は平成の修理も終わって古代の姿を保ち続けていますが、実はけっこうあぶなかったのかも、などと思います。
奈良は古いもので満ちています。
1300年前から、1400年前からずっと残り続けているんですよーすごいですよと連呼してますけど、それは偶然残ったわけではありません。
いつの時代も残すために努力した人々がいて下さったのです。
感謝のお参りは、今私達が気楽にお参りできる、そのことそのものにも目を向けねばならないことだよなと、そんなふうにも思います。
2023年12月25日(月)は薬師寺、26日(火)は春日大社、28日(木)は東大寺に伺います。
年末の忙しい時期とは思いますが、案外お寺はすいていますので、ごゆっくり参拝しませんか?
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ご参加お待ちしております。
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