見出し画像

観光立国・金沢 3つの美しさ


能登半島の地震の影響で、石川県の金沢や福井県、富山県など近隣の観光地がひとくくりに「被災している」と思われて観光客が減っているそうです。

実際に被害が甚大で、立ち入りも遠慮すべきところは能登半島ふきんだけで、ほかのところは普段と変わらない状況であり、ぜひ観光にきてもらってお金を落とせば、巡り巡って被災地支援にもなる!ということで、金沢に行ってきました。

金沢といえば加賀百万石。

きらびやかな伝統工芸に、茶屋の文化。美味しい海鮮料理…と見どころいっぱいのイメージですが、その中でも特に「観光立国」として優れている点が多いと思ったので、そのことを書きます。

金沢で感じた優れている点はなんといっても街が美しいこと。この美しさを作っている要素は3つあります。

金沢の美しさ1 ゴミを捨てない・捨てさせない取り組み

ひとつめは言葉通り、ゴミが見当たらない美しさです。

ゴミがないのは、金沢城や駅周辺、茶屋街などを管理する人たちがきちんと清掃しているのがまずあるでしょう。でもそれ以外に、東の茶屋街で「食べ歩き禁止」のポスターを見かけましたので「ゴミが自然発生することない仕組みを作っている」のではないかと思います。

奈良公園ではゴミ箱が設置されず、それは鹿がゴミ箱をひっくり返して食べないようにする配慮なのですが、やはり「ゴミを持ち帰って」とアナウンスしても、徹底されないこともあります。

最初からゴミを作らない、食べ歩きをさせない、というのは金沢をどういう街にしたいのか、ということが明確なのです。

観光で飲食は欠かせず、でもただ売るのではなく、その先まで見つめた取り組みが金沢を作っていると感じます。

金沢の美しさ2 プロに仕事をさせる

ふたつめは、「庭師というプロが活用されている」です。

金沢は雪の多いところですので、樹木を保護するために「雪吊り」が名物にもなっています。

この雪吊りは名勝『兼六園』が有名ですが、それ以外の町中の樹木も、縄でかっこよく縛っているのが見られました。

どこの木々もきれいにまとめられていて、多くのところに庭師さんの手が入ってるのかなと思います。

街の景観をプロが手掛けている。

そりゃ統一感も出ますし、見栄えもいい。

これはその道のプロを使うことで、庭師さんにお金が落ちるし、育成にも貢献していることなのです。

どの道でも、長く修練してもらうには時々仕事があるだけでは成り立ちません。

でも、こうやって街ぐるみで「庭師」の仕事の需要を作れば、勝手に育つし途切れないでしょう。

観光促進にお金を使うといっても、色んなやり方があるのがわかります。

金沢の美しさ3 工芸品であふれる街

3つ目は、工芸品で街があふれている。石川県の伝統工芸を知ってもらう、売る、ということが徹底されていることです。

伝統工芸は、伝統といついていることで、どこか敷居の高い手の届かないもの、というイメージがありますが、そうとう高級なものから、手軽なものまで取り揃えている。これが金沢の強みです。

駅前のお土産物屋さんでも、おしゃれなセレクトショップでも、重厚な骨董品やさんでも、いたるところに九谷焼や輪島塗の作品があって色んな買い方があるのです。

そして、ちょっとうがった見方をすると、現代アート美術館として有名な「21世紀美術館」というのがありますが、これって、石川の伝統工芸の最先端に位置しているという認識なのではないかと思います。

古くて価値のあるものから、新しくてあらたに価値が見出されたものが同居する場所・金沢。

最先端のアートに触れに来た人々は、否が応でも町中で工芸品が売られているのを目にするし、日常で使えるようなお手軽なもののあるし、使ったら良さが分かってリピートするかもしれない。

21世紀美術館で、最新のアートシーンが展開されれば、常に追いかける人がやってきます。

そういった人々が、あらためて古い工芸品にも出会う。

石川県の伝統工芸が長年培ってきたブランド力と、それを過去のものにしない取り組みが見えます。


この大きな3つの美しさの下に、さらに細かな取り組みが沢山あって「観光立国金沢」を支えていることを感じました。

ほな、あとはあんじょう頼みます。


奈良でガイドをしています。これからもっとあちこち回っておもしろいガイドを提供します。ご支援どうぞお願いいたします。