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フィリピン研修2023春(12)ー職業訓練

「国際協力の多様なあり方ーNGO以外のアプローチ」(1)

この研修の第一週間目は、孤児院や貧困地域視察、スカベンジャー(ごみ回収従事者)問題や、ピナツボ火山の噴火後に再定住者の子弟のために作られた小学校など、社会問題の実態を理解し、特にNGOによる支援の実際について勉強したので、2週間目は、ガラッと趣を変えて、政府の社会政策や、民間企業の貢献について研修することにしました。まずはTESDA(技術教育・技能開発庁)です。

TESDAは(義務教育を終了した)フィリピン人の職業訓練と雇用促進を目的とした政府機関です。職業技術にかかわる各種資格の発行も行っています。日本のハローワーク等による「求職者支援訓練」に似ていますが、その比較と評価はまた別の機会にしたいと思います。

今回訪問したのは、タギッグ市にあるTESDA Women's Centerです。ここは日本の援助で作られた施設で、ちょうど女性月間でした。まだ予算がおりてないということで、プログラムが始まっていない事業もありましたが、最初の概要説明の後、調理、バーテンダー技術、縫製、鉛管工事、溶接、電気・電子、そしてSAMSUNの訓練施設を訪問し、それぞれご説明いただきました。

ちょうど女性月間でした
ここは日本の援助で作られた施設です
まず概要についてお話をうかがいました。

まず、調理については日本のABCクッキング社の資金援助・技術協力のもと行われているもので、1週間程度の短期の研修で、15の品目について学んでいます。300人の研修が目標とのことで、日本企業による国際協力がこのような形で実施されているとは予想していなかったので、大変興味深く拝見しました。本日はたこ焼きづくりでした。

ABCクッキングさんの資金援助で調理実習を行っています
これらのメニューを学んでいきます
調理器具が提供されています
本日はたこ焼きづくり
惣菜パンも作っていました

バーテンダー養成の訓練室です(ABCクッキングとは関係ありません)。

縫製・ドレスメーキングの訓練室です。JUKI株式会社の工業用ミシンを使っています。古い機械のようなので、修理ができるかちょっと心配なので聞いてみましたが、とりあえずは大丈夫のようでした。

フィリピンの女性の伝統的衣服

Plumbing(鉛管・配管、上下水道の配管工事)の訓練室です。

溶接の訓練室です。溶接には電気溶接とガス溶接があります。

電気・電子技術の訓練室です。

最後にサムスンですが、研修自体は政府予算で行いますが、研修のための最新のテレビ・電気製品はサムスン電子が提供し、OJTの機会をサムスンが提供することになっています。単に電気・電子技術の研修だけでなく、将来の雇用に直結する研修をフィリピン政府の研修機関に組み込んでいるところは、日本の電気・電子産業の現地進出との関係で、ちょっと考えさせられるものがあります。

サムスン電子の電気製品の研修をしています。
終了後はサムスンでOJTを受けることが出来ます
テレビ・電気製品はサムスン電子の提供

ところで、はたしてこのような訓練施設が、雇用促進や失業対策にどの程度貢献しているのか、いろいろな疑問がわいてきました。かつて「アジアの技能者養成」についてはいろいろな研究があったように思いますが、最近あまり聞かないような気がします(単に私の不勉強のせいかもしれませんが)。ただし、考えてみれは、「アジアの技能者養成」は、1990年代以来、日本への研修・技能実習生(+特定技能生)問題として形を変えたのかもしれません。

TESDAのような国内政府機関がどのような役割を果たしているのか、そして日本への研修生が、フィリピンの技能工養成にどの程度貢献しているのか、時間があったら調べてみたいと思います。

(注) 写真の出典は、全て©2023 Aratameです。
(続く)
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