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Summer Pockets REFLECTION BLUE 久島鴎√ 感想

Twitterに書けないことをちょこちょこ書いていきます。

久島鴎、早くストーリーを読み進めたいと思っていた子の一人です。
というのも、紬√を進めようとし、紬がいない際に1度鴎に会いに行った際に、

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島のどこかにある、宝箱を開けるための鍵を一緒に探す約束をしてしまいました。なのにその後放置。あまりにも申し訳なさすぎる…。

…。
ていうか、鴎√完走して結末知っちゃった後だと余計にごめんなさいの気持ちしかないよね。他の子√に行ってしまったら鴎が10年間夢見た夏の冒険もできず、10年前に”友達”と交わした「冒険に招待する」約束も果たせないわけです。この√に行ったらあの子は一体どうなってしまうんだろうって考えてしまうの、僕だけじゃないはず。選ばなかった子も、どうか幸せになってほしい。

このストーリーの多くの部分では、鴎と羽依里の2人で島を冒険することになります。その冒険が「一度しかない〇〇歳(少年期)の夏休み」を想起させるような爽やかさに溢れていて、読んでいて心が満たされていきます。
金網を伝って屋根に上り、そこから校舎内に侵入したり、暗号を頼りに鍵を探したり、茂みを掻き分けて塞がれていた新しい道に出たり、色々です。

(ところで、自分は物語開幕から後半まで、鴎と羽依里は10年前に実際に会っていると信じて読み進めていました。鴎は羽依里のことを知っている。しかし羽依里は何らかの事故で、それこそ後述する木登り落下とかで鴎に関する記憶を失っていると思って読み進めていました。鴎の過去の冒険に出てくる人物の中心にいるのが「タカ」なのがミスリードを余計に誘っているようにしか思えません。鴎にとって、それだけ羽依里が過去に書いた手紙の内容が印象に残っていた、ということなのかな)

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鴎は羽依里のことを最初から知っていたのでしょうか?
知っていたはずです。10年前に羽依里が小説の中のカモメに送った手紙を読んでいて、その内容や名前の珍しさで覚えていたのではないかと。
でもなければ、ストーリー上で初めて会った際の(↑)の「羽依里」と呼ぶ声の温かみは出せないと思います。

過去の夏休みの冒険をたった一つの宝物として大切にしていると呟く鴎に対し、羽依里は次のような言葉を投げかけます。

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10年経っても色褪せずに思い出せるような夏休みを経験した人間なんてそうそういないと思います。そんなかけがえのない一瞬を2人は今、経験しています。

Summer Pockets、本当に素晴らしいゲームなのは間違い無いです。"夏休み"という概念が消滅して数年が経った自分にとって、「もう二度と戻りえぬ夏休みに対する羨望」がこのゲームに浸る快感だと思っています。
しかしこれは時に「10年前の夏休み、何をしてたのかあまり覚えていないな…」と自分を苦しめるポイントでもあったので、羽依里の言葉にどこか救われたところがあります。大抵の人間は、覚えていないんだなって。

ストーリーを最後まで読み進めると、鴎は2年前から海外の病院で闘病生活を送っており、この夏に入る直前にこの世を去っていることを知らされます。
羽依里の前に現れた鴎は、やり残したことを果たそうとして現れた幻影と言ってもよいのかもしれません。

しかしここで気になるのは、羽依里の前に現れた鴎は100%本当の鴎なのか、というところです。
「スーツケースに座って坂道を滑り、そのまま止めきれずに海にダイブする」
「金網を伝い、校舎の屋根に登る」
「落ちたら骨折の危険があるレベルの高さの木に登ろうとする」
冷静に考えると、彼女の足が本当に弱っているのであれば、こんなことしようとはしないと思います。
(「したい」とは思っているのでしょう)
とすれば羽依里の前に現れた鴎は、病室の鴎が夢見た理想の、小説に出てくるヒロインであるカモメに近い人物(快活で積極的で誰とでもすぐに仲良くなれる、ひげ猫団のリーダー)なのかなと想像できます。
小説の中のそんなカモメは、羽依里の初恋の相手であるという描写もありますね。

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この選択肢。平穏なBGMですし、正解を選ばなくても段々と選択肢が減っていって正解だけが最後に残るパターンかな。
などと思って一番上を選んだら酷いことになりました。
どうしてこんな選択肢、言ってしまえばBAD ENDを用意したのかって話ですよね(ていうか選択肢の3/4がそれなんですけど)。
木に登るのに失敗し落ちた時(BAD END)に、羽依里は鴎の記憶を失います。そして「3つ」の鍵を持ったまま実家に戻ってしまう。
羽依里「もうこの島に来ることはない」
⇨もう宝の地図の入った宝箱を開けることはできない。
ゲームオーバー。鴎のやり残したことは何も果たせず、逆に心残りを増やしてしまったことになります。

正解の選択肢を選ぶと、木に登る時に、「前にも誰かに頼まれて木に登ったような」と羽依里は何かを思い出しているんですよね。これに関しても自分は「10年前に鴎と冒険している時にも木を登った。そこでBAD ENDのように落下して羽依里は鴎の記憶を失った…?」とか考えていました。
…全然違いましたけど。
じゃあこの伏線は何だったのさ。例の小説の中にそんな内容があったってことなのかな。ミスリードしてしまいがちな伏線だらけで困る。

ところで、木に登るのに失敗する際に羽依里は過去の、部活で失敗したトラウマを思い出しているんですよね。後日羽依里と鴎で洞窟を冒険している際に、羽依里はそれに関して「人の期待を裏切った」と話していました。
ここが絡んできそうな気がしますが、トラウマを解消するようなストーリーはこの√ではあまり出てこなかったと思います。他の√に期待したいところです。

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「子供の」
「夢を叶える手助けをするのが」
「大人の喜びです」
鴎の母、鷺の言葉です。多くのファンを生んだ児童小説家だからこそ出せる言葉だと思います。
このような母がいたからこそ、鴎は病気にも負けず、最後の最後まで夏休みを全力で楽しむことができたのではないでしょうか。

昔はあたりまえのように夏休みがあって。
どれだけ長くてもそれが当然だとばかり思っていて。
でも鴎のように、その当然が当然じゃなかった子だっているんですよね。
それでも鴎は、小説の内容のような輝かしい夏休みをずっと渇望し続けていました。
後からどれだけその時間が大切だったかを知っても、もう戻ってくることはないんですよね。
物語の終盤で羽依里はこう言います。
「俺は、俺の信じたもののために、(夏休みの)残りの時間を使おう」
永遠のようで一瞬なんです。
その一瞬を大切にしたいよね。


短いけどこの辺で。
全√の感想を書くと決めているわけではないので、そこはごめんなさい。


2021/7/30追記

一応置いておきます。


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