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整う。色を塗る。

京都の三十三間堂に行ってきた。
そこに行けば自分の心がいつでも整う大切な場所。
今日も二十八部衆の像と、その後ろにズラッと並んで輝く千手観音像たちを眺めながらゆっくりと歩みを進めた。

真ん中に鎮座する大きな千手観音の前まで至った時、ジッとしばし見つめた後にお線香をあげ、静かに頭を下げ、手を合わせた。
心の中で、千手観音の御真言である「オン バサラ ダルマ キリ ソワカ」を唱えながら。

三十三間堂の庭園にはツツジが咲き誇っていて、池の周りにはアヤメも咲いていた。

水辺に咲いているし、ショウブかな?とも思ったのだけど、これはたぶんアヤメ。
仏花には白や紫の花が好まれると聞いたことがあるけどそれと関係があるのか、紫蘭(シラン)も近くにたくさん咲いていた。

どうでもいいことだけど、シランを見るといつも「紫蘭?そんな花、シランわぁ」という凍りつきそうな台詞が脳内再生される。
で、心の中で一人笑ってる。(笑うんかい)


あとはヤマブキも。

まさに山吹色のヤマブキ。
これも仏花なのかなと気になり少し調べたら、厳しい剪定をしても花を咲かせる習性から、再生と回復力を意味する縁起の良い花であるらしい。
それを知った瞬間、ヤマブキをちょっと好きになっちゃう自分を発見。
再生と回復力。素敵やなぁって。

今、noteを綺麗なものでいっぱいにするキャンペーンを絶賛開催中。笑(どういうことかは一個前の記事を参照)
というわけで。
以下、過去記事からの引用、貼り付け。

「日記。手紙。」(2021年11月の記事)

今日、みよこさんが家族への手紙をやっと書き切った。
みよこさんの病気の特性として、字を書きだすとどんどん文字が小さくなってしまうというのがある。
結果、読めるのは数文字だけ、あとはミミズのようなグニャグニャの線。
声はほとんど出ず、文字盤を押すのも能力的に難しい。
なのでみよこさんの思いを汲み取るには、口の動きを読み取るか、グニャグニャの文字をなんとか解読するしかない。

みよこさんは11月の上旬に誕生日を迎えた。
そのとき、お祝いとして娘さん家族が小さな造花のブーケと家族写真をプレゼントしてくれたのだけど、その日からずっと、みよこさんはブーケを傍らに置き、毎日のように写真を何度も何度も見ている。
その様子を見ながら、家族に手紙を書いてみませんかと提案してみたら、強くうなずく姿があった。
そこから私とみよこさんの悪戦苦闘が始まった。

手紙を書くにあたり、みよこさんができるだけ大きい字を意識して書けるように、一行の幅を大きく広くとった便箋をWordで手作りした。
途中で何か絵柄があった方がいいかもと思いつき、Web上のフリー素材の中からモミジの塗り絵用画像を見つけて余白に挿入してみたらなかなか素敵になって、みよこさんも喜んでくれた。
絵が趣味だったみよこさんがそのモミジの線画に色鉛筆で色を塗ると、さらに一段と素敵で、私は思わず小さく歓声を上げた。
力の入らない震える手でこんなにも素敵に色を塗れることを本当にすごいなと、ただただ感心してしまう。

みよこさんの塗るモミジは赤一色じゃない。
緑色が絶妙な塩梅で混ぜ込まれている。
それを見て、そうか、モミジは色づいて赤になるわけで、その前は緑色をしているのだという至極当たり前のことに気がつく。
私の頭の中のモミジはいつだって赤色でしかなくて、そんな自分の見ている世界はなんと狭いことか。
私はそんな瞬間にも自分の無知を思い知るような気がする。

みよこさんは緑豊かな農村部で暮らしてきた人で草花のことにとても詳しい。
私も花が好きだからいろんな花の写真を一緒に見てみてはたくさん教えてもらってもいる。
みよこさんの小さな口の動きを読み取るのは簡単ではないけれど、そんなときこそここぞとばかりに直感を働かせてみて、伝えようとしてくれる思いが削がれないように気をつける。
誰でも自分の思いを伝えるのにあまりにも時間がかかると、伝えたい気持ちが途中で萎えてしまうと思うから。
そこにある思いを逃したくない。いつも。

手紙の文面もあれこれ工夫しながら一文字また一文字と書きあげて、なんとか全部書けたのが今日のこと。
子どもたち三人に向けて三通の手紙が完成するのに一週間。
時間は少しかかったものの無事完成した。

せっかくなので写真も撮って同封することを思いつき、みよこさんにカメラを向けた。
家族の写真を手に持ってもらい、笑ってくださいとは言ってみたのだけれど、写真の中のみよこさんは家族の写真を抱え、なんともいえないはにかんだ表情をしている。
人生の大先輩に対してこんなこと言うのは失礼かもしれないのだけれど、それはなんとも可愛らしい表情で。
家族でなくても見た人の顔を少しほころばせずにはいられないような、そんな顔。




こんなふうに仕事をしながら、時々、こんなにも自分が癒された気持ちになって、お給料までもらっていいのかなという思いに駆られることがある。
今日もまたそんな日だった。
もちろん命に関わるシビアな局面に直面することもたくさんあるし、しんどいことも多いのだけれど。
でもそれもこれも学びに満ちていて。
おもしろい、楽しいなと思える今この瞬間の幸せを想う。

とりあえずやれることはこれからも頑張ってやっていこうと改めて思ったりした。
改めてっていうか、まぁ毎日そう思いながら働いてはいるのだけど。

でも、改めて。



追記的な。

みよこさんが遺した塗り絵の一部。
何十枚とあって、亡くなったときにそのうちの一枚をいただいたもの。
この絵を見ると今でも、震える手を休まず動かせては色を塗っていたあの姿が目に浮かんでくる。

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