見出し画像

東京国立博物館(東京都台東区・上野駅 国宝 東京国立博物館のすべて)3/5

・東京国立博物館 東洋館
東京国立博物館に建てられた建築物のうち重要文化財として登録されている本館と表慶館。それらに決して引けを取らないメインストリートに位置する印象的な建物がこの東洋館である。モダニズム建築として知られる東洋館は、慶應義塾大学や東宮御所、帝国劇場に国立近代美術館などを多くの建築を手がけた谷口吉郎の設計によるもので、愛知県にある建築物の野外博物館である明治村を発案した人物としても知られている。清らかな意匠をテーマに、正倉院をイメージして造られたもので、左右に広がる形の外観で高さは本館と同じようなのに対して実際は2階建ての本館と異なり地上5階・地下1階という意外な構造をしている。これは半階ずつ上がって行くいわゆるスキップフロア構造というものによるもので、入り口から5階までが吹き抜けになっているその景観はまるで神殿に入り込んだかのような感覚になる。  

めちゃくちゃ重厚で良い雰囲気

東洋館はその名の通り東洋の文化、主に中国やインドなどを中心としたアジアの文化財を多く収蔵した展示を行なっており、1階からすでにオリエンタル文化の洗礼を受ける。本館や表慶館で体験したような国内の文化財とは打って変わってアジアを旅しているような感覚で巡る博物館で、これまでにオリエンタル文化の博物館として都内や近郊でいくつか回ってきた自負があるけれど、収蔵品の数や質において国立の名にふさわしい桁違いの貫禄を見せつけている。インドや中国ということで当然ながら仏教にまつわるものが多いが、各地の石窟院から発掘された像は日本人が認識する仏教の建築物とはまた少し変わった造形が見られるのも印象に残る。

石から掘り出す石窟のクオリティが半端ない

2階に上がると舞台は少しずつ西進し、パキスタンやイランなど中東地域にさしかかるエリアの発掘品も展示されるようになる。仏像だけではなく食器をはじめとしたいわゆる陶器の比率が多くなり、中東のアラビア文化において彩色の技術が発達していたことが窺える。面白いのが、こうしたアジア、特に西アジアの発掘調査において浄土真宗本願寺派の大谷光瑞が調査団を結成したということ。日本におけるガチガチの仏教である浄土真宗の僧侶がそのルーツを求めて中国の西側へ調査団を派遣するという、信仰と知的探求の間にある心情が興味深いところ。展示室にはミイラなどエジプトの文化も入り込んでくる。

ストゥーバが変じて卒塔婆になったんだっけ

3階では古代中国をメインにした展示で、中国関連の博物館によく見られる饕餮文の器や寺院・宮殿に使われていた装飾品などが目立つようになる。陶器に写し込んだ紋様だけでなくその造形も特徴的な形をしていることに注目。この辺りになると埋葬品として使われた土器なども登場し、これがのちの日本における埴輪などにつながったのだということがわかってくる。鮮やかな色彩で彩られた三彩もこのあたりから徐々に見られるようになる。中国だけでなくイスラームの陶器も特集が組まれて多く展示されている。

ゆ、ゆるい…かわいい…

4階の一部では占いコーナーがある。といっても占いの館みたいな占い師が控えていて来訪者の運命を占う、といった形式のものではなくて、昔からアジアの各地域で信じられてきた占いを紹介するというもの。見学者も体験することができるということで、せっかくなら参加してみることに。特にモンゴルで語り継がれてきたシャガイという占いは、動物の骨でできた犀を振り、そこで出てきた目で運勢を占うというもの。試してみたところ最高の組み合わせになってラッキー、と思ったのも束の間、当日のみ有効ということで少し残念でもある。他には中国の書画を中心とした展示室も控えている。

シャガイ 幸運が長く続くという結果だったけど当日のみだって なんてこと

5階は手始めに引き続き中国の特に仏教に関する美術品を紹介しているところから更に東進して朝鮮半島の文化を紹介。陶器に仏具、食器などありとあらゆる工芸品がここに収められており、これもまた見応えが充分。ちょうど学生らしき人たちと巡るツアーのようなものが開催されており、個人で展示物を見ながらそのスタッフの説明に耳を傾けてみたりする。

だんだん近代っぽくなって行く

地下1階はクメールを中心として、東南アジアなどに伝播した仏教文化をメインとした展示を展開。こちらでも仏像をはじめとして陶器の美術が採り上げられている。また地下階には映像シアターも備えられていて、別料金ながら迫力の大画面で美術品の解説を聞くことも可能。肉眼でも楽しみ、高精度の映像で至近距離の美術品を知ることもできる幅広い展示内容である。トイレはウォシュレット式。さすが国立、歴史ある建物でもこの辺りはしっかりと改修している。外国人にも優しい建物かもしれない。

地下に至るまで展示内容に容赦がない


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?