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東京家政大学博物館(東京都板橋区・十条駅)

大学博物館の中でも充実したコレクションを誇る東京家政大学博物館。こちらは服装を中心に裁縫の教育を根ざした大学であることから、重要文化財として指定されている裁縫雛形コレクションをはじめとした服装を数多く所蔵している博物館である。

東京家政大学は学校法人渡邉学園が運営する大学で、まず展示室では創立者である渡邉辰五郎についてが紹介されている。「自主自律」を学校の精神として掲げた渡邉辰五郎は仕立屋で奉公し、衣服に関する知識や裁縫技術を会得した後、地元で仕立屋をしながら裁縫を教える仕事をしていた経験から、私塾として和洋裁縫伝習所を創設し、女性が職業を持つ社会の実現に尽力した。

渡邉辰五郎

「雛形尺(実寸法の1/3)」や「袖形」「褸形」「雛形」などの裁縫技術を考案し、『裁縫教科書』をはじめとした著書も多かった渡辺は、近代になり和装と洋装が入り混じる世間で和装を元にして動きやすい格好のいわゆる「改良服」を考案した人物でもある。授業でも自身の『婦人科医療服裁縫指南』を元に、教員や学生がこれを身に付けたという。続く辰五郎の息子である渡邉滋も二代目として『洋服裁縫教科書』『日本縫針考』などの書籍を著しながら教育に専念した。

展示室内にある裁縫雛形コレクションはバラエティに富んでいて特にこちらは必見。イトンジャケット、十布遣馬乗袴、ホワイトシャツ、小直衣などの初めて見るようなデザインの服や和装・洋装・生活用品・有識類といったジャンルに分けてそれぞれの雛形を紹介しており、実際に裁縫をする人であれば興味深い資料が満載である。

廊下にあるコレクション写真の膨大さに目が奪われる

中興の祖として青木誠四郎という人物の紹介もある。渡邉学園は渡邉辰五郎によるものだが、東京家政大学が大学として開学された時の学長で、「愛情・勤勉・聡明」を信条にした教育を行った。こちらでは『現代實業修身』『研究叢書』『新しい家庭のしつけ』といった
著書でもって生徒への接し方を考えた人物でもある。

企画展では「谷中リボン」についての紹介をしている。谷中にあったノコギリ屋根の愛称で知られたリボン工場が劣化のため取り壊しとなった際に工場から見つかったのがリボンのコレクションで、渋沢栄一も出資をした岩橋リボン製織所から東京リボン製織株式会社、そして千代田リボン製織株式会社から千代田リボン製織所という波瀾万丈の歴史を持つ工場において、千代田リボンの社長だった渡邉四郎によって収集されたものである。トイレはウォシュレット式。

ミシンみたいな形をしていると勝手に感じている


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