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カナダ大使館(東京都港区・青山一丁目駅)

都内にある各国の大使館の中で、特にカナダ大使館は個人的に注目すべき場所である。なぜかというと、こちらには大使館内に高円宮記念ギャラリーというアート作品を展示するためのギャラリーがあるからで、ちょうどこのタイミングで企画展示をおこなっているという情報を得て、赤坂離宮のそばにあるカナダ大使館を訪問することに。カナダの建築家であるレイモンド・モリヤマの設計で建てられた大使館は巨大な砦のような風貌をして青山通り沿いに佇んでいる。

なぜカナダ大使館の中に高円宮記念ギャラリーという名前のギャラリーがあるのかというと、皇室の高円宮憲仁親王が生前にカナダと親しくしており(結婚相手もカナダ大使館のレセプションパーティで知り合った)交流があったのと、スポーツの振興・発展に尽力していた高円宮親王がこの大使館内でスカッシュの練習をしていた最中に心筋梗塞となって亡くなったことから、生前の高円宮を偲んで名づけられたのだそう。

外観は巨大な砦のよう

さすがは大使館、入館の際には金属探知機で荷物チェックがされる。国内でありながら外国。それが大使館なのである。高円宮記念ギャラリーへ向かうには、外にあるエスカレータをしばらく上って4階のカナダ・ガーデンがある通用口から館内へ入り、エレベータで地下3階へ降りるという行程を踏む。地下へ降りるとホワイエが広がっており、正面奥にはカナダを代表するジャズピアニストの名を冠した劇場であるオスカー・ピーターソンシアター、左手には日本生まれのカナダ外交官だったE.H.ノーマン図書館があり、残った右手のスペースが高円宮記念ギャラリーとなっている。

高円宮記念ギャラリー

高円宮記念ギャラリーでは「視界の先に」と銘打たれたカナダ作家ジェフリー・ポワリエの作品が展示されている。ダクトテープを何色も切り貼りして重ね、モザイク模様のように彩ったインスタレーションと、ギャラリーの壁一面に青空を背景にした木々の写真を配置してまるで窓があるかのような錯覚を起こさせる作品という、たった二つの作品ながらギャラリーを目一杯まで活用した贅沢な展示である。

ホワイエには高円宮同妃両殿下のコレクションとして、カナダ政府へ寄贈されたイヌイット彫刻が多く展示されており、セイウチやジャコウウシ、ベルーガ鯨、シロクマといったカナダで見られる動物や神々・人間などを模した彫刻が賑わいを見せている。ここにも高円宮家とカナダ政府との深い関わりが見てとれる。ちなみに4階の通用口にも同じようにイヌイット彫刻が多く紹介されている。

イヌイット彫刻が立ち並ぶ

トイレは洋式。意外にもカナダ・ガーデンも見学することができるのでせっかくなら散策してみる。テッド・ビーラーの青銅作品『砕ける波』、カナンギナク・ポートーゴークの彫刻『イヌクシュク(※人間の機能を代行するもの)』、マリオン・カンタロフの青銅作品『波』がそれぞれ点在して展示されている。中でもカナンギナク・ポートーゴークはイヌイットの作家で、『イヌクシュク』は極北の石を使用しているというのが印象的である。隣接する高橋是清公園を眼下にカナダ・ガーデンのベンチで一息つくのも良いかもしれない。

とにかくこのガーデンが良いのよ


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