HERO 第一話 コメント レジュメ



http://news.walkerplus.com/article/48568/

こちらで答えた『HERO』第一話に対するコメントのために用意したメモを公開します。

コメントで使われてないものもあります。

第一話を見た率直な感想は、良くも悪くも変わっていない。前回と同じ水準のクオリティを保っている。

何人かサブキャラクターが入れ替わっていたけど、前作の主要メンバーのその後も台詞に出てくるので、そういうファンに対する目配せはできている。あえて不満をいうとエンディングテーマが宇多田ヒカルの主題歌がかからないことくらいか? でも、それも今後次第。 

新キャラでは北川景子がよかった。

例えば以下のやりとり。

「盗めばいいだけじゃん」
「じゃん? お前いま普通にいっただろ」


彼女の口調が時々タメ口になって久利生がテメェって怒る場面は松たか子が演じる雨宮と差別化ができている。

 良くも悪くもシリーズの積み重ねがあるため、他の検事が久利生の行動を許容してる中で彼女だけが久利生の対立軸として機能している。 あとは、あまり出番がなかったが濱田岳が演じた宇野もよかった。その意味では若手俳優がどれだけ木村拓哉に対して萎縮することなくやれるかが今後の鍵かとおもう。

 ここ数年の木村拓哉のドラマは新境地を目指そうとしつつも、ブランドイメージが邪魔して、冒険しきれないもどかしさがあった。その中で比較的がんばったのは『安堂ロイド』だった。それに対して『HERO』は原点回帰であえて前作とほとんど変えないことに意味があるのだと思う。キャッチフレーズが「時代は変わった。この男はどうだ。」だが、久利生だけが変わってないことに意味がある。

 
 特定機密保護法案や集団的自衛権の問題などが、議会の手続きが不十分なまま、勢いだけで決まっていくし、マスコミも大きな事件にばかり夢中になって、細部はどうでもいいって感じで盛り上がっていく中で、久利生の検事としての行動原理は、ちゃんと手続きを踏んで一つ一つの事件を調査して起訴するかどうか考えようというもの。

久利生公平の正義とは。

実はタイトルに反して情緒的に盛り上がっていく英雄神話のようなものを拒絶している。鈴木雅之の演出によるシンメトリックな画面構成は、本作の中にある生真面目さが明確に現れている。 みんなが起訴しろ起訴しろっていう中で淡々と証拠をしっかり固めていく。木村拓哉の持つ自然体の脱力性が時代に追い抜かれたからこそ(もしも、対立軸に奥とすれば、堺雅人の半沢直樹と『リーガルハイ』の弁護士・古御門だろう。もっともリーガルハイの場合は「毒を持って毒を制す」という側面がある)逆に意味が出てきた。 
 

 検事に「とりあえず」はない。というやりとりの後、冤罪事件の話になるあたり、自覚的だと思う。ただ、それだけに久利生の調査が宝石強盗事件と一致してしまうのは、ご都合主義に見える。ただ、『HERO』は良くも悪くも、そういう話なんだと思う、構造としては「大岡越前」や「遠山の金さん」

 今後の展開としては、北川景子や濱田岳がいいので、久利生と若い世代の衝突みたいのをちゃんと描いてほしい。 新しいことをする作品ではないので、このままの水準を維持していれば問題ないと思う。



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