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8|3周年の記録と「遠くの親戚より近くの他人」

2021年2月から開店した喫茶おおねこが、
3周年を迎え、4年目に突入しました。
お祝いしてくださったみなさん、ありがとうございました💐

あっという間のようで、思い出すほどに濃ゆい3年間。

いい機会なので、いくつかの側面から振り返ってみようと思う。
まずは、以下の三点から。

1)開店時間は、おおきく変更

2)客層も、おおきく変化

3)売上は、いかに

4年目を迎えた、個人経営の喫茶店の
これまでと今を残すつもりで書いていく。

1)開店時間は、おおきく変化

開店当初は「週1日4時間だけ」オープンする喫茶店としてはじまった喫茶おおねこ。毎週水曜日の朝8時から昼12時までの4時間だけの営業だった。

↑高校の同級生が取材編集し、記事にしてくれた。ありがとう!

理由はおおきく3つ。
・週1回の4時間だけという特別感が出るのではないかという期待
・4時間だけにすることでお客さん同士の交流が濃密になるだろうという期待
・ひとりで店に立つのも飲食物提供もはじめてなので短時間にした

毎週水曜日の朝8時から昼12時までの4時間だけの営業をしばらく続けたのち、

「朝9時から昼12時までの3時間限定営業」にしてみたり、

「11時から15時までの4時間営業」にずらしてみたり、

祝日には「朝9時から18時までぶっとおし営業」をしてみたり、

「12時から18時までは通常営業、そのあとイベント貸切にして21時まで営業」をしてみたり。

・時間を長くしたら/短くしたらどうか
・時間帯自体をまるっと変えてみたらどうか
・イベントをしてコンテンツに変化をつけてみたらどうか

などの視点をもとに、2ヶ月ごとくらいに少しづつ新しい営業形態を試して、最適な形を模索した。

結果的に「昼12時から18時までの営業。たまにイベントをして夜21時まで営業する」が今のところ体力的にもお客さんの層的にも落ち着いている。

2)客層も、おおきく変化

一番変わったのは、お客さんの層かもしれない。

今のところ、

①初期からのお客さん:新規のお客さん= 3:7

②ご近所から:遠方から= 5:5

③飲食目的:コンテンツ目的= 3:7

くらいなのかなあという体感。

①については、ただただありがたく嬉しい。初期(つまり3年前)から来店してくださっている常連の方々が、今でも毎週や毎月顔を見せてくれて、すごく励まされる。メニューは初期から変わらない(自家製あんこバターホットサンド)のだが、これを食べてくださるだけでなく新規メニューもたのしんでくださる(オーガニックワインなどは最近始めた)。幼稚園生だった子が小学校に入学したときは泣けてきたし、小学校2年生になる前の春休みに来てくれたときのちょっと恥ずかしげな大人びた所作にまた泣けてしまった。健やかに育ってね。変わらない安心感のある定番メニューと、飽きない新メニューとで、ずっとたのしんでいただけるようなお店づくりを目指したい。

②については、これまた嬉しい。ご近所にもっとビラまきなどしたほうがいいのだろうとずっと思っているが一度もできておらず、それなのに口コミで聞いたとご来店くださるご近所の、特にご高齢の方々がコンスタントに来店してくださっている。「市が提供する体操クラブとかに行くのは気が向かないが、外出先が欲しい」というまだまだお元気な高齢の方々の居場所にもなりつつあるようだが、これについては別途分析したい。(自家製あんこという、甘さ控えめの素朴なメニューが当たっているのだろうか?)

遠方だと海外からインスタグラムを見ていて日本訪問ついでに来ましたというかたが年に二人くらいいて、たまげる。あんこで有名な名古屋から夜行バスで着いてそのままご来店というパターンも年に一度ほどあり、背筋が伸びる。

③が、一番おおきな変化であろう。私が選挙に立候補したことがきっかけとなり、店主(私)の思想が、つまり店自体の思想が、良くも悪くも、あっぴろげになった。それまでは「政治とは距離を置きます〜だれでもどうぞな喫茶店です」という無難なていで営業してきたが(特に理由はないが、いろんなひとをお客さんとする飲食店はだいたいそうだろうと思う)、そうもいかなくなったのである。正直お客さん減るだろうなあ仕方なかろうと思ったが、逆にお客さんが増える結果となった。驚いている。

戦争には反対です、人権は守られるべきです、気候危機に対策を、そしてなによりジェンダー平等、差別はゆるしません。そういったことを選挙でもくどくど言い、喫茶店にも反映させたら、同じ気持ちを持っている人たちがどんどん集う場となってきた。(そうだ、店内でのグラウンドルール、つまりお約束ごとをつくったら、お客さんの満足度が上がった話も、別途したい)

コーヒー好きの方々やカフェ好きの方々がいらしていたのが初期には目立ったが(カメラを持っていらして、インスタグラムに載せてくださり、メンションされて見にいくととても著名なカフェ紹介アカウントだったりしてびっくりすること多々で、いまでもとても感謝です)、最近はもっぱらなんらかの社会課題に関心を持って学んでいたり、デモやイベントなどで活動していたりと、運動の側面でゆるやかに連帯する場にもなりつつある。

「女性版の、コーヒーハウスみたいね」とこの間いらしたお客さんが言っていて、すこぶる嬉しかった。(コーヒーハウス:17~18世紀、イギリスで流行したコーヒー店。ロンドンの市民たちが集まってきて、世界中の植民地から集まる情報の交換、そして情報の発信地となり、新聞もそこに置かれて人々に回覧された。さらにコーヒーハウスを利用して手紙を交換する郵便の役割や、株式取引、保険などの役割も果たした)

3)売上は、いかに


開店当時は初期費用にいろいろと取られたため赤字続きだったが、このごろはトントンに抑えられている。要因は2つ。

①メニューをさらに絞った
②価格を上げた

①については、開店当初は「自家製あんこバターホットサンド、キーマカレーのホットサンド、たまごとハムのホットサンド・・・」などたくさんあったフードメニューを「自家製あんこバターホットサンド」のみにした。ドリンクメニューもあれこれ揃えていたが、特に需要の多かったコーヒーや紅茶のみ残し、他ワインなどはその時々の気分で揃えるようにし、相当すっきりした。こども用のドリンクは持ち込み可にして、こども向けになにか用意してこどもが来ない日が続いたら廃棄になるということをなくした。

②については、ドリンクを600円から800円に引き上げた。
自家製あんこバターホットサンドはもともと単品で800円だったが、ドリンクとセットでしか頼めないことにして、ドリンクとセットで1500円に。
これは物価上昇と、自家製あんこバターホットサンドをヴィーガン仕様に変更したことに起因する。ヴィーガンパンはふつうのパンのなんと3倍もの仕入れ値となる。じゃあふつうのパンでええやんと思うかもしれないけれど、少なくとも今この瞬間も、同じ地球上で女性やこどもを中心とした虐殺が200日以上も続いていることを考えたら、できるだけ搾取から遠いものを提供したいと思う。(経営がとても無理になったらまた変えるかもしれない)
「他では200円でコーヒーを飲めるよ」とおっしゃった、生活のしんどいお客さんがいて、そうだよなあと思う。うまくこのあたりを回せる仕組みをつくれないだろうか、と思って、胡桃堂喫茶店の「お手紙コーヒー」などを学んでいるところ。一刻もはやく、だれでも負担なくサービスを受けられる店にしていかなくてはいけない。

おわりに



地域にひらいた喫茶店をひらいて、3年が過ぎ、4年目。「はじめまして」が毎週無数に生まれる喫茶店経営は、似通った背景を持った友人知人に囲まれて生きてきた私にとって、おおきな風穴が開けられるような体験の連続。仕事も、住む家も、肌の色も、主義も、信条も、時には言葉も、そしてこれまで来た道も、ここから向かう場所も、ぜんぜんちがうもの同士がとなりでコーヒーをいっしょに飲むほんの一瞬がここにはある。文字通り、この世界には、いろんな人がいるんだと思い知らされ、学ばせてもらっている。完璧な人などおらず、各々の、でこぼこ具合が愛おしい。

そして『遠くの親戚より近くの他人』ってのは本当で、なんてことないときに「助けて〜」「教えて〜」って言い合えるような関係性が、人を生かしていくと、心底実感している。私は喫茶店の店主だけれど、お客さんのやっている会社のスタッフとして働く機会があったり、高熱を出した時に飲み物などを届けてくれたのもまた、お客さんだった。事実、生かし合っているなあ…と思う。そしてこの感覚は、日々の暮らしの背中をがっしり頼もしく支えてくれている。いろいろあるが、明日も生きていけそうだと思える。

けっこう長く書いてしまったけれど、一旦ここで締めたいと思う。
読んでくださって、ありがとうございます。

サムネイル画像は、青木智子撮影。いつもありがとう!

https://aotomoko.jimdosite.com/

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