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編集者に喜ばれる5つの忖度

編集者とライターの関係は恋愛のように、じんわりと長く続くこともあれば、どんな熱くなってもあっという間に終わってしまうこともあります。

ライターはもちろん文章が上手で読者に人気が高い原稿を書くことが理想です。しかし、それが簡単にできれば誰も苦労はしません。超売れっ子の作家やコラムニストであれば多少わがままで身勝手でも許されます。多少締切に遅れても耐えてくれます。あなたが売れっ子なら、編集者はそれ以上の価値を見出し、あの手この手であなたにアプローチして抱え込もうとします。

でも、そうでなければ、まずは信頼されるために地道に忖度するしかありません。それは、文章を上手に書く以前の、誰でもできる最低限のスキルです。

今回は編集者とライターが末永くつき合って、いい仕事をするために覚えておきたい5つの忖度について紹介します。

1. 赤字を確認する

2. 誤字脱字をなくす

3. 一文を短く

4. 小見出しを想定する

5. 推敲する

1. 赤字を確認する

書いた原稿を編集者に渡し、確認してもらって問題がなければそのまま校了となります。しかし、赤入れがまったく入らないことはほとんどありません。雑誌や書籍では、編集者が何度も何度もライターに書き直しの指示をすることが普通です。しかし、最近のWebメディアは毎日数十本の記事を掲載することが多いので、細かい修正は編集者が勝手にやってしまうことがあります。ライターに確認しないで掲載してしまうことも少なくありません。その場合は、入稿した原稿が最終的にどのように修正されかを確認するようにしましょう。

できれば掲載前に必ず確認させてもらうようお願いしてください。そういう意味でも締切は必ず守るべきです。締切に遅れると「お前が遅れたからいちいち確認している時間がなかったんだよ!」と逆ギレされてしまうだけですから。 

Wordなどで事前に修正履歴を入れた原稿を戻してもらう場合は、必ずどこに赤が入っているか確認してください。それは「次回からはここは気をつけてね」というメッセージだからです。たとえば、編集者が表記統一をしている場合、編集者にとって毎回同じ直しを入れるのはストレスになります。

たとえば「無い→ない」「アイディア→アイデア」「更に→さらに」と赤字が入っていたら、最初から表記統一に合わせて書くようにしましょう。あるいは数字や英単語は半角なのか全角なのか。編集者も表記統一について、いちいち細かい修正指示をすることはありません。だからこそ、編集部の意向を忖度して、表記統一に沿うように心がけるべきなのです。そうすれば、編集者は「気がきくなあ」「細かいところまで見ているなあ」と好感を抱き信頼を寄せるようになります。

2. 誤字脱字をなくす

誤字脱字が多いのはプロとして失格です。誤字脱字を見つけることを生き甲斐にする編集者も中にはいますが、誤字脱字が多いと、普通はライターとしての資質や姿勢を疑われます。

ライターは「文章のプロ」なのだから当たり前です。ペンで文章を書いていた時代は、書き直すことすら面倒だったため誤字脱字は少なかったものです。昔ある有名な作家とお仕事をしたとき、その作家はワープロで文章を書いていると、ときどきワープロが「その文で本当にいいですか」といったアラーム表示が出て、「お前は誰に向かって言ってるんだ!」とワープロにイライラしたそうです。いまはパソコンやスマホで原稿を書くので、逆にタイプミスが非常に増えています。きっと手書きでは漢字も書けなくなっている人が増えていることでしょう。それゆえに誤字脱字をなくして、編集者や校正者に「俺の仕事がない」と思わせるよう心がけてください。 

3. 一文を短く

原稿を書いていると、調子がいいときほど、つい一文が長くなりがちです。乗っているときは、たいてい自分の頭の中が整理されているので、まくし立てるように文章が書けるものです。だからこそ、一文がダラダラと長くなってしまうのです。インタビューをしたことがある人ならわかると思いますが、インタビューで話された言葉はそのまま文字に起こしても読めるレベルにはありません。それと同じです。

いい気分で書けたと思ったときこそ、冷静になって何度も読み返してみてください。あなたの原稿の最初の読者は編集者です。初めて読む原稿ですから、一文が長くて読みにくいと当然うんざりします。

4. 小見出しを想定する

記事のタイトルやリード、小見出しなどを書くのは、本来編集者の仕事です。なぜならメディアは編集者が枠(企画)を設計して、ライターはその中身を埋めるという共同作業だからです。

タイトルやリード、小見出しは枠(企画)の骨子です。しかし、Webメディアでは毎日さばく原稿が多いためか、タイトルやリード、小見出しをライターに任せるケースが多くあります。私は基本的にタイトルやリードは自分で考えますが、小見出しはケースバイケースです。

小見出しは作る上で、ときどき苦労することがあります。小見出しは基本的に読者が飽きないように挟む休憩だったり、要点を抑えたり、メリハリをつけたりする意図があります。たとえば3000字の原稿であれば、750字☓4章に分けます。ところが、小見出しの意識のないライターの原稿は、小見出しがとても作りづらいのです。

3000字の原稿だったら4つの小見出しに分けて、4つの要点がほしいのに、要点が3つしかない。そして、要点が含まれている各章の長さが1000字+300字+1700字=3000字だったりすると、バランスがとても悪くなってしまいます。

小見出しまでライターに書いてもらわなくてもいいのですが、ライターにはバランスよく要点をちりばめるという意識はしてもらいたいのです。「小見出しを考える」ということは、文章の構成案を考えることでもあります。だから、ライターとしては常に小見出しを意識して原稿を書くことを望みます。

5. 推敲する

推敲とはライターが自分で書いた原稿を何度も自分で読み返してチェックすることです。ここでは主に上記で説明した4つの忖度ができているかを確認していきます。

1. 赤字を確認する

2. 誤字脱字をなくす

3. 一文を短く

4. 小見出しを想定する

推敲は一度書いて少し時間を空けてからすることをオススメします。一度時間を空けると、冷静になって客観的に俯瞰して見ることができるからです。「夜中に書いたラブレターは朝改めて読んでから出せ」というのと同じです。

文豪ヘミングウェイはキーウエストの自宅で、原稿を書くといつも冷蔵庫に一晩寝かせたという神話が残っています。嘘か真かはわかりませんが、とても説得力のあるお話だと思います。


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